NHK札幌放送局

赤潮被害の海はいま 漁場再生の道は

道南web

2022年11月2日(水)午後0時55分 更新

去年、道東沖で発生した大規模な赤潮では、大量のウニや定置網のサケが死ぬなど、漁業に大きな被害が出ました。 道南では大きな被害は報告されていませんが、専門家によると高水温が続いたりすると発生する可能性があるといいます。 そんな中、特産のエゾバフンウニが大きな被害を受けた道東の厚岸町では漁場再生に向けた取り組みが始まりました。(NHK函館 館岡篤志) 

去年の赤潮は「カレニア・セリフォルミス」という植物プランクトンが大増殖したもので、日本では初めて確認されました。
去年10月、北海道大学水産学部付属の練習船「うしお丸」は赤潮を横断して観測しました。
調査にあたった飯田高大航海士は「5キロほどで赤潮が断続的に発生していた。とても広範囲で、いままでそんな赤潮は見たことがない」と話します。
当時撮影された人工衛星からの画像を解析すると、赤潮は道東沿岸に沿って襟裳岬の周辺まで広範囲に広がっていることがわかりました。
専門家によると、この時は津軽海峡から流れてくる津軽暖流が強かったため、道南方向に広がらなかったということですが、気象や海洋条件によっては道南で起こる可能性もあるといいます。

特産のエゾバフンウニの8割が死に、およそ10億円の漁業被害が出た厚岸町では、漁場再生に向けた取り組みが始まっています。ウニの潜水漁を行っている毛利哲也さんは、去年の水揚げはほとんどなく、今年もまだウニ漁は再開できていません。今、漁の再開に向けて、漁場の整備に取り組んでいます。
被害のあった海域に到着すると、鉄板の入った靴やヘルメットなど、重さ約60キロの潜水具をつけて海に入ります。

作業を行うのは水深およそ7メートルの場所で、この日の海中は濁っていて、2~3メートル先しか見えません。海底には死んだ貝の殻が散乱していました。
目を引くのは大きなヒトデ。赤潮のあとに急に増えたといいます。ヒトデはウニの天敵のため、毛利さんは小さなウニが食べられないように駆除していきます。

岩陰には生き残ったエゾバフンウニが集まっていました。
なかには去年の赤潮の後に放流して2センチほどに成長した稚ウニもいました。毛利さんは大きめのウニを回収していきます。海況がよければ、1日に3~4時間ほど漁場整備を行っているということです。

駆除したヒトデは畑の肥料などに使われます。回収したウニはエサになる海藻が多く、ヒトデが少ない場所に再び放流します。
ウニが順調に育てば、12月にウニ漁を再開する予定です。
毛利さんは「ウニにいっぱい身が入るといいね。厚岸の海を赤潮の前のようにおいしいものがいっぱいとれる海にしていきたい」と話します。

赤潮の被害を防ぐための研究も行われています。
水産研究・教育機構水産資源研究所の黒田寛研究員は、赤潮の発生を予測するシミュレーションを行っています。
気象や海洋状況から、赤潮がどのように広がるかを計算し、およそ1か月先まで予測することが可能だと言います。
黒田研究員は「事前に赤潮発生の予測ができれば、水揚げを早めるなど、事前に研究者と漁業者が協力して対策を行うことができるようになります」と話していました。

道東沖の赤潮は日本で初めて確認されたもので、まだわからないことが多く、全国の大学や研究機関で発生条件や生態の解明にむけて研究が行われています。
漁業への被害をどう防いでいくか、今後にむけた大きな課題です。

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