NHK札幌放送局

母の愛が作った避難所 “みんなの家”

ほっとニュースweb

2021年9月3日(金)午後3時56分 更新

”自閉症”のわが子を助けたい。そんな母親の思いが、安平町に障害者でも気軽に避難できる場所をつくりました。きっかけは3年前の胆振東部地震。“みんなの家”と名付けられたその施設はどんな場所なのでしょうか。

避難所なのに避難できない

安平町に住む青木明子さんです。息子の功士さんは重度の知的障害を伴う自閉症と診断されています。

地震のあと、すぐに避難を考えましたが、功士さんの異変に気がつきました。

地震当日 動揺し動けなくなった功士さん
青木明子さん
「音がザワザワだったり、いろんな人が出たり入ったリという環境がすごく苦手で、ちょっとパニックになりそうな感じでした」

環境の変化が苦手な功士さんを連れて避難所へ行くのは諦めました。

障害者が安心して避難できる場所とは

青木明子さん
「地震の時に地元の人たちとのつながりがあまりなくて。地震のあの状況を思ったときにこれはやっぱり地域につながりを持つことが必要だと思いました」

青木さんは、障害のある人と地域の人たちがふだんから交流する場所をみずから作ることを思い立ちます。

そこに防災用品を準備すれば、災害時は避難所として避難することができます。

普段から慣れ親しんだ人たちがいる慣れ親しんだ場所の防災力を高めれば、災害時の安心につながると気づいたのです。

みんなの関わりあいで安心の拠点へ

青木さんは、クラウドファンディングや補助金などで資金を集め、安平町遠浅駅前の空き家を改装し、去年6月、施設をオープンしました。

カフェとしてもオープンしている“みんなの家”
青木明子さん
「みんなが使える場所、使う人たちが作っていく場所になって欲しいという願いを込めて“みんなの家”と名付けました」

発電機やテント、寝袋、非常食や水など避難の際に不可欠な防災用品を準備しました。ふだんは週1日、月曜日にカフェとしてオープンしています。ハーブティーやワッフルが自慢です。功士さんも店員として働き、地域の人と交流しています。

また地域の住民に呼びかけて、“みんなの家”を知ってもらうと共に地域の防災力を高めようと防災ワークショップを行いました。

地域住民と発電機の使い方を学ぶ

専門家を招いて防災の心得を一緒に学び、発電機を実際に動かしたり、水がなくても調理できる野菜ジュースのリゾットの作り方を教わりました。

“みんな”で防災食を試食
参加した住民
「みんなで発電機の使い方を教わって初めて動かしました。近くにこういう場所があって心強いです」

ワークショップに参加した防災の専門家も“みんなの家”の活動を高く評価しています。

東北大学災害科学国際研究所 定池祐季助教
「日常的に地域の方が交流できる場所が増えて、そこが災害時に必要のある人を受け入れられる場所にもなるということは、セーフティネットとしてとてもいいと思います。災害時にサポートが必要な方はいろいろな方がいて、それぞれ必要なサポートの種類に応じて受け入れ体制があるということが大切なので、それを当事者みずからが作るということは大きな意味があると思います」

今後、青木さんは、月曜日だけオープンしている“みんなの家”を毎日オープンできれば、地域の住民にとっても、より安心につながると考えています。

さらにコロナ禍のいま、避難できる場所が増えることも大きな意義があるといいます。

青木明子さん
「これからは密にならないように、こういう場所があちこちにできれば。みんなに知ってもらって広がってほしいと思っています」


取材で印象に残ったのは、青木さんの実行力と、障害のある人にとってよい避難所の環境は誰にとってもよい環境なのだということです。“みんなの家”のような、障害のある人にやさしい環境を考える事は、災害時だけではなく、みんなにやさしい社会につながるのではないかと強く感じました。

取材・NHK札幌放送局 前田宗秀カメラマン

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