NHK札幌放送局

北海道にはなぜ梅雨がない?蝦夷梅雨との違いは? シラベルカ#52

シラベルカ

2021年6月1日(火)午後6時19分 更新

みなさんから寄せられた疑問を徹底調査する、NHK北海道の「シラベルカ」。 今回の投稿は「北海道の梅雨」についてです。
(※お時間のない方は後半の短尺動画をどうぞ)

「北海道には梅雨がないとされていますが、6月頃に北海道の雨が続く時期を梅雨と呼ばないのは何故ですか。また、梅雨には定義があるのでしょうか」
(札幌市在住 20代学生)

担当するのは、関西出身で梅雨を散々経験してきた高カメラマンと、生粋の道産子で梅雨はあまり経験がない吉田ディレクターです。

北海道に梅雨はあるの!?ないの!?

まず取材班が向かったのは、札幌管区気象台です。雨にも関わらず、予報官の今井達也さんが対応してくれました。さっそく「北海道でも6月ごろは雨が降っているし、北海道にも梅雨があるのではないのか!?」と疑問を投げかけると・・・

今井予報官
「北海道に梅雨というのは、ありません。梅雨をもたらす梅雨前線が北上して北海道に来る頃には、弱まってしまっているからです」

高C「梅雨はないと。梅雨前線ってよく聞きますが、そもそもどんなものでしたっけ・・・?」

今井予報官「梅雨とは、春の終わりから夏にかけて曇りや雨の日が多く現れる現象、またはその期間のことを言います。北にオホーツク海高気圧というものがあるのですが、それは冷たく湿った空気を持っています。南のほうには太平洋高気圧があって、それは暖かく湿った空気を持っています。その気団がちょうどぶつかるところに、梅雨前線というのができます。梅雨前線のかかったところは大雨が降ったりするのが特徴です」

吉田D「北海道には梅雨前線はこないのですか?」

今井予報官「7月中旬くらいに東北の北部に梅雨前線が上がってきますので、道南の方では曇りや雨の日が続いて梅雨に似た天気になったりすることもあります。ただ、梅雨前線というのは北上すると北海道付近では弱まったり足早に抜けてしまったりするので、梅雨ではないという風に考えています」

高C「どうして北海道では梅雨前線が弱まってしまうのでしょう?」

今井予報官「8月にかけて太平洋高気圧が北の方まで張り出してくると、それに伴ってオホーツク海高気圧は弱まってしまうからです。前線というのは2つの気団ぶつかったところにできるものですが、オホーツク高気圧が弱まってしまうと、ぶつかる気団がなくなってしまう。それで、北海道に来る頃には前線構造が維持できなくなってしまうのです」

いわゆる“蝦夷梅雨(えぞつゆ)”の定義は?

吉田D「北海道には梅雨がないとはいえ、6月ごろに雨が多いと感じる道民は多いと思います」

今井予報官「はい、確かに北海道でライラックの花が咲く頃になると、雨が多くなります。この時期、オホーツク海高気圧が張り出してくることによって、流氷が融解したばかりのオホーツク海から冷たく湿った空気が北海道に流れ込んできます。そのため、オホーツク海側と太平洋側を中心に曇りや霧雨、小雨の日が多くなります。その期間がいわゆる“蝦夷梅雨”と呼ばれています」

高C「“蝦夷梅雨”って聞いたことがあります!」

今井予報官「気象庁では、正式な気象用語として使っているわけではありません。本州の梅雨と似ている天気だと感じた人が使い始めたのだと思います」

似て非なる「梅雨」と「“蝦夷梅雨”」

吉田D「梅雨と“蝦夷梅雨”、似ているなら同じ梅雨でいいじゃないかと思ってしまうのですが・・・」

今井予報官「やはり、異なる要因で起こっていますし、期間や雨の強さも全然違いますので。“蝦夷梅雨”だと感じる期間はせいぜい2週間くらいですが、本州の梅雨は40日くらい断続的に曇りや雨の日が続きます。また、本州はざーっという大雨が降りますが、北海道はシトシト降るような感じですね。そういうことを含めると、全然違う現象だということが分かります」

高C「確かに、私は関西出身なのですが、北海道の“蝦夷梅雨”とは全然スケールが違うと思います」

いつか北海道にも梅雨がくるかもしれない!?

高C「結論、北海道に梅雨はない!これで調査終了ですね!」

今井予報官「いいえ、お待ちください。実は最近、北海道では梅雨の影響が全くないとは言い切れなくなってきたのです」

今井予報官「一例を上げると、2018年7月3日に、梅雨前線が勢力を保ったまま北海道まで北上して大雨を降らせ、空知地方の雨竜川などが氾濫して大きな被害が出ました。梅雨はないといっても、本州の梅雨の末期のような降り方をする年が増えてきています

吉田D「もしかして地球温暖化のせいでしょうか?」

今井予報官「地球温暖化が原因かはまだわかりません。ただ、みなさんご存じの通り、近年は気温が上がってきています。気温が上がるという事は、それだけ水蒸気量も多くなってきますので、雨が多くなります。確実に言えることは、雨の降り方はもう変わってきているという事です。もしかすると、これからは梅雨前線の影響を受けやすくなるかもしれません

北海道で雨が降る日が増えている

北海道の気象に変化が起きているかもしれない。取材班は今井予報官から聞いた事実を裏付けるデータを探し、気候科学を研究している北海道大学の見延庄士郎教授にお話を聞くことにしました。

見延教授「1950年から2021年にかけて降水関係のデータを調査したところ、弱い降水が降っている日が増えていることがわかりました」

見延教授は、5月から7月の3ヶ月で雨の降る日がどう変化したかを調べました。すると、函館、室蘭、苫小牧ではこの50年間で、およそ52日だった降水日数が62日と、10日ほど増えていることがわかったのです。

吉田D「10日も増えているなんて驚きです。何が原因なのでしょうか?」

見延教授「北海道西部の太平洋沿岸で顕著な増加が生じているので、おそらくは南からの水蒸気量がより多く来るようになったためでしょう。ただ、これが梅雨の変化なのか、地球温暖化の影響なのかはまだわかりません。今後、こういう事を研究していかなくてはいけませんね」


取材後記

梅雨のない天国だと思っていた北海道に、徐々に変化が起きているのは衝撃でした。本州のような大雨は降らないという油断は捨て、日頃から浸水や土砂崩れなどの災害に備える必要がありそうです。今後の調査や研究を、引き続き追っていきたいです。(高カメラマン)

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取材チーム

投稿者 三浦網子さん(真ん中)
NHK札幌局 高伽耶カメラマン(左)/吉田美和ディレクター(右)

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2021年6月1日

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