NHK札幌放送局

月のうんちくが“ツキない”50分!

北海道まるごとラジオ

2021年12月24日(金)午後4時53分 更新

2021年11月4日放送の北海道まるごとラジオは、神田山陽の『うんちく問答』をお送りしました。 オホーツク海側 大空町出身の講談師 神田山陽さんが、毎回テーマを決めて50分間しゃべくり倒し、私たちを素敵な世界に連れて行ってくれます。 

神田山陽さん!

MCは鈴木遥アナウンサー佐藤千佳キャスターです。

さて、今回のテーマは、

\「月」です!/

「月を愛でるような人が、いま、世の中にどのぐらいですかね。気が付いたらもう1年ぐらい月なんか見てないよっていう人が多いんじゃない?」と、山陽さん。が、月にまつわるお便りたくさん届いていましたよ!まずは群馬県のリスナーの投稿から。

・「✉️けさ5時30分に起床し、東の空を見ると、うっすらと月が見えてとても神秘的でした。あすが新月なのでとても小さかったですが、北海道でも見えましたか?」

山陽さん:曇ってましたからね~。
鈴木:現在も曇っておりまして、もう真っ暗。夕日も全然見えなくて…、そのかわり街の明かりがすごくきれいです。お天気カメラの映像を見ますと。
佐藤:札幌のきょうの日没の時間が4時23分でなので…。
鈴木:夕焼けも何も消えちゃってるぐらいですね。

・「✉️先日、車で走っていると、「かか、おつきさまがついてくるよ」と娘。私も同じこと車の中で母親に言ったなぁと、懐かしく思い出しました。月が移動するように見える現象、子供心に不思議でおもしろかったです。」

山陽さん:不思議ですよね、あれね。
鈴木:子どもって、やっぱり月を見ているのかもしれませんね。 大人になると見なくなるのかもしれませんけど(笑)

・「✉️月といえば、幼いころ、銭湯の帰り道、月がずっとついてくるのが不思議でした」

鈴木:「ついてくる」っていう話が多いですよね。
山陽さん:たぬきに化かされてるんじゃないかと思うぐらい、月がついてくることはありますね。
理由は知らないでしょうね。どなたか、知っている方、うんちくを教えていただきたい!

では、うんちく問答、スタートです!

まずは、「俳句に、月がこんなふうに読み込まれている」という話。「“雪月花”ですから、雪とか桜もそうですけれども、“月”は随分昔から、俳句にも短歌にも出てくるんです。」と山陽さん。徳川時代、江戸三大俳人と言われた松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶。月をどう詠んでいたのでしょうか。

山陽さん:松尾芭蕉が、月に関して詠んだ句、古い順番から行きますね。

「猫の恋 やむとき閨の 朧月」

もう一句!

「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」

で、私が好きなのは、芭蕉の句としては有名な、

「蛸壺や はかなき夢を 夏の月」

いろんなところで旅をしながら、月を見たんですね。月に何かをなぞらえて、たった17文字の中にうたい込んだ。
続いて、与謝蕪村。これはもう有名中の有名な句、

「菜の花や 月は東に 日は西に」

このときの「月」というのは、満月だったんだそうですよ。 お日様が沈むのと同時に、だから一番早くのぼりたつのが、満月。これはもう決まってるんだそうですよ。
これも有名中の有名です。先ほどの投稿にも「車に乗っているとき、月がついて来るよ」っていう女の子の話がありましたね。これはもう、一茶の娘が言ったことをそのまま俳句にした。

「名月を 取ってくれろと 泣く子かな」

ただ、「月を取ってよ、お父さん」と言っていた娘さんは、は、幼いうちに亡くなってしまうんですがね。そんな事を言われた時に書いたのか、思い出しながらつくったものなのかは、ちょっとわかりません。

山陽さんの大好きな作家の作品にも「月」が入っているそうです。

山陽さん:月といえば、タイトルがまさに『月』という小説!これは表紙を見たときに、「買わなきゃ!」って思いましたね。 カバーが大変に迫力のある、墨痕あざやかな筆で描かれていて。辺見庸さんという芥川賞作家の小説『月』です。

『月』~山陽さんによるあらすじ~
近年起こった殺人事件を、「犯罪を起こした者を自分の側に立たせて物語が進んでいく」。犯罪者を、自分の中のものとして、犯罪行為を自分の中のものとして進んでいく話なんですよね。非常に居心地が悪いというか。読んでいるうちに、常日ごろ、私の中の居心地の悪さというか、居心地の悪いことを確認していくという、非常に読後感の…“爽快”とは全く逆のものなんですが。辺見庸さんの本の中にはよくそういうところが出てくる。「おためごかしを許さない」というか、 建前の世の中の、よく“善魔”という、善面をして、悪の形をとっている者がいかに世の中に多いことか。善面をした悪というのは自分のことなんじゃないかと思ってしまうぐらい、『月』を読んだときにガーンとしたという。翻ってなんていうんですかね…「弱者を踏みにじることが、効率のいい世の中になっているんじゃないか」、というふうに、自分もどこかで思ってしまっているんではないかということが、私はこの本を読んで感じ取ったことなんですが。「月」という爽やかなタイトルのわりには。非常に厳しい。

鈴木:そこからなんで月だったんですかね?
山陽さん:お読みください。
鈴木:なるほど…。
佐藤:タイトルは読まないと分からない。

現在のカレンダーは、太陽暦ですよね。「昔は、”月”というのは、暦(カレンダー)が30日ごとになってたんですよ。」と、山陽さん。明治5年まで太陰暦で、暦が進んでいたというお話。

山陽さん:わたし、この間、清里小学校っていうところでお話をさせてもらったときに、「昔は、月は30日で変わってた」って、受け売りの話をして日数を測ったら足りなかったことがあって、自分で調べ直したんです。月は29.5日周期ってね。昔は「大の月」が30日。「小の月」が29日で進行していた。だから、これを繰り返していくと29.5日。そこに12をかけると(29.5×12)、354日しかない。

佐藤:あれ、ちょっと足りない!

山陽さん:そう、11日ぐらい足りないんですよ!で、これを3年ぐらい集めておいて、ためておいて、「うるう月」っていうのがあったんです。最後のうるう月はいつか、今回調べたんですが、明治3年の10月。今でも、旧暦のカレンダーになると「うるう月」っていうのが、3年に1回か、2年に1回出てきますね。 だから、1年を13カ月にして「うるう月の何日」って日に生まれると、2~3年に1回しか誕生日が来ないんじゃないか!っていう(笑)。そういうときは、どうやっているのかわからないんですが(笑)。私の小学校の同級生に2月29日に生まれた者がおりまして、「8歳の時に、俺は2歳だった!」みたいな。うるう月になると、そういうことが起こるんじゃないかしらと思ったりしたんです。今の「うるう年」を設ける代わりに、「うるう月」というのを設けて、月を基準にカレンダー・暦が回っていたんですね。

さて、今回のテーマは、「月」。いまさらですが、なぜ月になったのでしょう??

山陽さん:今回なんで「月」にしたかというと、『好色万金丹』っていう、浮世草子を読んでいたんですよ。その中に、月見の話が出てくるの。元禄7年に「夜食時分」っていうペンネームの人が書いたんですよ。夜遅くまで起きているときに、「うまいもの一つ食ってやれ!」っていう。何か、非常に好奇心そそられるペンネームですよね。

佐藤:江戸時代ですよね!?

山陽さん:そうです。放送作家の喰始(たべ・はじめ)さんと、コンセプトとしては一緒ですよね。始めは何でもおいしいじゃないですか。ほら、これからちょっとウキウキする夜、っていう楽しいペンネームだと思うんだけど、この方の本に、「月宵の会」という、月見の会の話が出てくるんです。それで、一番大切なのは「霜降り月の26日」。つまり、「11月26日は、1年のなかで一番大切な、月見の会がある日だ」って、集まってきた人たちが、わいわいガヤガヤ、あーでもない、こーでもないということを話しているという一節があって。「そういうのやってみたいなぁ。そろそろ人が集まってもいいようなご時世になって来たんじゃないかしら。私も何か理由がほしいんだけど、飲む理由ってなかなかないので、今日は月見をしようぜ!」…って、何か、ちょっとすてきなんじゃないかな?と思ってですね。それから、「月、月…」って考えているうちに、鈴木アナウンサーから、「今回のテーマはなんでしょう?」って来たのでですね(笑)。「月じゃないかしら」って。いろいろ、自分の思い当たる月の話をしていたんですけどね。

山陽さん小林秀雄さんという作家が、「お月見」という短い文章を書いているんですけれども、これは、普段月見をしないような若い人たちも交えて、十数人か数十人かな?一緒に歓談しながらお酒を飲んでいるうちに、月がフッとのぼったんですって。非常に印象的な話なんですけれども、月が上った途端に、月の話しかしなくなった。月に魅せられてしまった。…ここまではよくあることなんですが、その集まりの中に、スイスから来た客人がいたんですって。で、みんなが月に夢中になっているのを見て、「今夜の月は何か異変があるのか?」と。月の話ばっかりしているので、いぶかった。スイスでも月見の風習がないわけではないだろうし、自然についての感じ方というものが、スイスの人はスイスの人なりにあるんだろうけれども、それは質が違うもんだという。小林秀雄の文章では、「意識できぬものの感じ方は容易に変わらない」と。「意識して変わることができるんだけど、無意識的には変えられない」と思うようなことを、「お月見」という短い文章の中でおっしゃっているんですよ。だから、これは小林秀雄の言葉じゃないかもしれないですけれど、「日本人が味噌汁をうまいと思うように、外国の人がうまいと思っていることについて、分かり合えるんじゃないか」と。味噌汁の味がわからなくても、梅干しの味がわからなくても…例えばブルーチーズの味が、私はイタリアに行った時にわからなかった。おいしかったけど…わからないけれども、「われわれは、彼らがおいしいと思っているように、ひょっとしたら、おいしいと思えないんじゃないかしら」と思うことで、お互いに理解できるというような話だったんですよね。

山陽さん:さて、その小林秀雄!文学の教祖とか神様とか言われたんですけれど、この教祖を天才と言わしめた人がいる。詩人の中原中也。中原中也と小林秀雄は、大変に因縁の関係でございまして。ご存知ですか?中原中也の彼女を小林秀雄が奪い取ったんですよ。

鈴木:秋刀魚の回に…どっかで聞いたことある話ですね。

山陽さん:そんなことばっかりですね。昔の文学会はね。2人は絶縁のような状態になるんですけど、久しぶりに再会するんです。その時は鎌倉の海辺で黙って2人で座っていたって、小林の文章に書いてあるんだけれども。その時の海辺には、月が出ているような気がして。「そういえば、中也の作った詩の中に、月をうたった詩があったな」と。それを、私の中で、“札幌のミラクルボイス”と呼んでいる堀伸浩アナウンサーに協力していただこうと。堀さん、お手数でございますが、スタジオへお越しいただけますでしょうか。

鈴木:以前も、あれですね、このような話で…佐藤春夫の話で。堀さんの朗読、秋刀魚の回でしたよね(笑)

スタジオ:爆笑

では、中原中也「月夜の浜辺」、堀伸浩アナウンサーのミラクルボイスで、どうぞ。(期間限定公開です!)

山陽さん:…すっかりお客さんになってしまいました。番組が始まるちょっと前に、むちゃぶりをしたんでございますけれど。(MC陣は、山陽さんが何をお願いしていたのか知りませんでした!)

鈴木:堀アナウンサー、いま、そそくさとスタジオを出ていかれました。

山陽さん:いかがでございましたでしょうか。…感無量ですね。

鈴木:月にボタンまでくると、、、なんか、ぐっとくるものがありますね。

佐藤:国語のテストでありそうじゃないですか?「このときのボタンは何を意味しているのでしょうか」。みたいな。テストの記述問題でありそうじゃないですか(笑)。

鈴木:私、そういうの得意じゃなかったなぁ!

佐藤:「作者の心情を読み解きなさい」みたいな。

山陽さん:これ、「拾った」って言いながら、人から引きちぎったんじゃないかなと思ってるの。2番目あたりのボタン、女の子のやつを。そんな気持ちで聞いていました。人はさまざまですね~。感じ方が全く違いますね。

鈴木:純粋に言われたまま想像していました(笑)。詩人の方は、そういう、何かに置き換えて比喩しますからね。

山陽さん:なんのことだったんだろう、と思うばかりですが。堀さんの声もあり、胸に染みるような。

『月夜の浜辺』に、投稿がいろいろ寄せられています!

・「✉️『月夜の浜辺』国語の教科書に載っていて、授業ではやらなかったんだけど、ひたすら繰り返し繰り返し読んだよ。」

佐藤:やっぱり何か授業で、やりそうな感じで。中学校?高校ですかね??

鈴木:私はね、今回のこの詩を初めて聞いたんですよ、堀アナウンサーのミラクルボイスで。で、先ほどの朗読で、堀アナウンサーは「ボタン(“ボ”にアクセント)」と言っていたんですね。 私は花の「牡丹(ぼたん)」のことを言っているんだと。波打ち際に、牡丹が落ちていて、「近くに咲いている花の“ボタン”を引きちぎって」と…思っていたんですよ。でも、いま…スタジオの外から…

山陽さん:そうそうそう、シャツのボタン(釦)なんですよ、これ。私いま意識して「ボタン」と言いましたけど。北海道アクセントだと、「ボタン」なんですよ。「ボタン外れてるよ!」って、「チャックあいてるよ!」みたいに言われるんですけど(笑)。 全員北海道出身だったから・・・(笑)

鈴木:私以外、全員北海道の方で…(笑)

山陽さん:はい、なんの違和感もなかったんですが…「“ボタン”のアクセントが違った」って、スタジオの外の堀アナのほうから、連絡がありました。

鈴木:堀アナウンサー、室蘭市出身です。 これは地域性でますね。北海道からお送りしてると。

佐藤:全国では、鈴木さんみたいに、このボタンって花かな?って思って聴いてた人もいたかもしれないですよね(笑)

さて、「北海道で“月”のつく地名がないかしら?」と、考えたという山陽さん。皆さん、思いつく地名はありますか?

山陽さん:札幌市豊平区に、「月寒」(つきさむ)という名前の地名がありますよね。この「月」は、空に浮かぶ月と何か関係があるのかなぁと思ったら、ないんですよ。アイヌ語の「チ・キサ・プ」から、「ツキサム」になった。アイヌ語の意味としては、「我々のこするもの」って言う意味なんだそうですよ。月寒の方ご存知でしたかね。ハルニレの木がたくさんあるところだったんだそうです。ハルニレは、火を起こすために、大変有効な木だったんですって。だから、ハルニレのある所っていう意味で、月が寒いこととは関係がない。『カムイユカラ』というアイヌの神話の中に、「雷の神様がハルニレの木に恋をしたので、ハルニレが燃えやすくなった」と言うような神話があったと言う気がするんですけれども、、、私調べなので、ご存知の方、詳しい方がいたら教えていただきたいですが。
もう一つ!「月形」というところがありますよね。これも、月と何か関係があるのかしら?もしくはハルニレと関係あるのかしら?と思ったら、これは大変に珍しい名前の付け方だと思うんですけれども。樺戸監獄というのが、いま月形刑務所と言う名前になって残ってございますけれども、その初代所長が月形潔(つきがた・きよし)という方だったんだそうです。明治14年から18年まで勤められたんですけれども、所長の「月形」という名前が、そのまま土地の名前になった。だからこれも、空のMoonとは関係ないんですけれどもね。北海道の「月」がつく地名は、この2つしか私は思いつかなかったですよ。ご存知の方がいたら、「うちの街も月ですよ!」もしくは、全国的に、「月にまつわる名前がついていますよ!」という方がいたら、教えていただきたいです。

鈴木:高知県に西の端っこに、大月町って言うところがありますけれどもね。(鈴木アナの初任地は高知局!)

山陽さん:そこは、月が大きく見えるんでしょうか?

鈴木:そこまでは、当時意識していなかったんですけれども(笑)

これは、近年読んだ本の中で、ワクワクしながら読んだんですけれども『千四百年の封印 聖徳太子の謎』という、哲学者のやすいゆたかさんが書いた本があるんですけど、これはもう梅原猛以来の、聖徳太子の謎を解いていくという、もう、ゾクゾクするような、私の好きだった本。古代史漫才といって、『漫才で迫る日本建国の謎』とか、哲学者の書いたものとしては、大変にアカデミックなんですけれども、読みやすい。この方の、「聖徳太子が、大変なことをした」という。何かというと…私が読んだものですから、違うっていうご指摘があったら言ってくださいよ。

山陽さんによるあらすじ~『千四百年の封印 聖徳太子の謎』(やすいゆたか著)~
「もともと、日本の神様と言うのは、天照大神(あまてらすおおみかみ)ではなかった。アマテラスが太陽神だとしたら、月読命(つくよみのみこと)というのと、天御中主神(あまのみなかぬしのかみ)という北極星(の神)がいたんです。月読命というのは、月の神様。「夜の国」だったものを、「日出づる国」にしたのは聖徳太子なんですよ。神様を変えてしまったんです。なぜかという説も、このやすいさんの本に出てくるんですが、もともと海洋民族だったので、月も星も目印にしていたんです。それが、大和の頃になってくると…6~7世紀ぐらいかな。「農耕民になってきたので、太陽神にしよう」と。太陽神にするため、だから、神様を取り替えたんですよ。太陽神にするため、その罪を全て被ったのが、聖徳太子。聖徳太子が、全部その罪を被りますよと言ったので、謎の多い人物になったんですよ。この方が、実はいたのかどうか、死についても、まして皇族でありながら、なぜこれだけの才能のある方が跡をつがなかったかということも、いろいろ謎の多い方ですけれども。さらに誰も知らないような謎を、この本は解き明かしているんです。

山陽さん:…詳しくは、お読みいただいて。仏教の力で神の力を和らげながら、「日出づる国」に変えていったのが、聖徳太子だったのではないか。その罪をすべてかぶることによって…だから…神を変えるという罪を被ったので、あまり幸福ではない人生を送ることになったのではないか、という。ぜひ、読んでいただきたい本の1つですね。

“月読命”をまつっている神社、北海道にも!

山陽さん:その、月読命が祀られている神社。北海道には、福島町の月崎神社と、音更町の東士狩神社の2つあります。月読命は、イザナギとイザナミの子供で、アマテラスとスサノオと3きょうだいなんですけれども、割と不遇の神様なんですよ、もともとが。昼間の力を全部アマテラスのお姉さんにとられてしまったので。「お前は夜の神」と言われて、月を読む神になったというふうに言われているんですが。
この説が正しいかどうかと言うことは別にして、こういう考え方があるということを示していく方法として、非常に面白いと思いました。

佐藤:聖徳太子って、一度に何人もの声を聞き分けて話を聞けたとか、厩戸皇子って名前だったくらいは知られていますけれど…。

山陽さん:伝説ばかりで。時代も古いから。

やっぱり出ました、この話題!中秋の名月や、月が印象的な夜、SNSでも、この言葉を使った投稿を見かけますよね。「もうちょっと柔らかい話いきましょうか!」と、山陽さんもおっしゃるように、ちょっと自分と重ねて、考えてみてください。「月がきれいですね」…あなたなら、どう答えますか…?

山陽さん:夏目漱石が、大学で教えていたときに、学生が、「I Love you」を、「私はあなたが好きです」というような直訳をしたんだそうです。

鈴木:来てますよ、来てますよ、リスナーから!

・「✉️月と言えば、夏目漱石の“月がきれいですね”も有名ですよね。」

佐藤:あぁ、まさに!

山陽さん:漱石が、直接的な、そんなふうには日本ではなかなか言わないと。「月が美しいですね」。「月がきれいですね」。ぐらいに言えば、「私はあなたが好きだ」って伝わるんじゃないか?と。I Love youの最高の意訳ですね。でも、本当に言ったかどうかはわからないのですよ。漱石の本の中には出てこないんだそうです、これが。私も漱石の…例えば、書簡集の中では、発見することができなかった。もし、出典をご存知の方がいたら、「ここでこういう風に言った」とか、もしくは「私のおじいさんが漱石から教わって、漱石がそう言ってました」という方がいるようでしたら、ぜひお便りいただきたいと思います!

鈴木:このメッセージ、続きがありまして、、、

・「✉️(続き)“月がきれいですね”も有名ですよね。こんなふうに告白されたら、皆さんどのようにお答えされますか?」

鈴木:さぁ、どうお答えしますか?

山陽さん:…告白なのかな? 「I Love you」って。プロポーズとは違うでしょ?まぁ、…告白ではあるか。でも、「結婚してください」とは違うから、なんていうんだろう…。

鈴木:まだ相手に思いを伝えていなかったら、告白かもしれないですよね。

佐藤:でも何か、それは読み取りにくいかもしれないです。

山陽さん:月の出ている日に、「月がきれいですね」って言って、そのまんまの意味に捉えられたら、スーッとなくなってしまう(笑)。

鈴木:昔だったら伝わった話が、いま伝わらなかったりしますからね。

山陽さん:昼間に言えばいいんだね。「月がきれい」って。そうすると、「これは月の話じゃない!私に何か言ってるんだ!」ってわかると思うよ。

佐藤:結構頭つかいますね(笑)。

山陽さん:「この人何考えているんだろうか…」と言うことで、嫌われたりするかもしれないですけどね(笑)

佐藤:逆に、告白だとわかっていて、何て答えるんですかね?

山陽さん:「前々から思っていました」かなぁ…「私もそうだと思っています」とか。

鈴木:「そうですか?私はそうは見えません」は、多分NGなんでしょうね。

佐藤:「きょう月出てましたっけ?」とか。

鈴木:「あなたは月が見えるんですか?」とか(笑)

山陽さん:「この間のまるごとラジオ聴いた?」って言って、聴いたって言ったら、「月がきれいですね」って。…もったいぶってますね(笑)。それでわかる!この人「I Love you」って言おうとしているって!(笑)

鈴木:「今日は月が出ていませんねぇ…」とかなんとか言っちゃったりして。

投稿たくさんいただきました。まずは、地名について。

「・✉️廃止された札沼線に、月ヶ岡駅がありました。」
「・✉️洞爺湖町に月浦という地名があります。」

山陽さん:この名前はどっちのほうでしょうかね。所長の方ですかね(人の名前)、それともハルニレのどっちですかね。どっちが由来なんでしょう?

鈴木:所長の名前でいえば、私たちがこの間放送した「うんちく百名山」で、長官山って名前が出てきましたよね。時の長官が利尻山に登って、山頂まで行けなくて、8合目に名前がつきました。皆さん、この話、詳しくお知りになりたければ、ホームページ【第2座・利尻山】放送記録②八合目を目指して!の巻『神田山陽のうんちく百迷山』 | NHK北海道)をご覧ください。全部書いてあります!

「・✉️先程の朗読で、自分も花のボタンだと思ってきいていました。地域性でこんな違いがあるんですね~。」
「・✉️中学校の教員をしています。先程の詩は、中学1年生の国語の教科書に載っています。みんなそれぞれに味わっています。作者の心情にまで思いを馳せていました。」
「・✉️神田山陽さんの月を語るその響きに、神秘的な月の輝きが届いているのですが、いま、ここ埼玉深谷はうっすらと雲がかかり、月の姿はありません。」

鈴木:札幌もね、月、見えません。

佐藤:あすは新月なので、曇っていなくても、月はちっちゃいかな…?

山陽さんといえば、やっぱり映画の話!月にまつわる映画…皆さんは何を思い浮かべますか??

山陽さん:1902年に、世界初のSF映画、14分間のモノクロのものが撮られたんです。『月世界旅行』。パリのジョルジュ・メリエスという、SFだとか映画の世界では必ず出てくる方なんですけれども、このメリエスの『月世界旅行』って…ご覧になったことないですよね、きっと。

ジョルジュ・メリエスと月~山陽さんによる解説~
大砲みたいなものに乗って、ドカーンって、月につき刺さるんですよ。月に行って、”月人”と戦うっていうシーンがあるんですけど、つかまったり、脱出するために戦うんですが、戦う武器が、さっきまで持っていた傘で戦うんですよね。非常に可愛らしい(笑)、最後、無事帰ってくるところまでなんですけど、このメリエスっていう人は、波瀾万丈を絵に描いたような人生を送った方で、最初は、子供の頃に手品師を見て、こういうものになりたい!と。成功して、劇場持ちの手品師にまで成り上がるんですよ。そのあとに、映画を撮る機械を見て、それを買って、映画制作を始めるのですが。この『月世界旅行』で、世界にその名を知られるぐらい大出世した方なんです。「映画特撮と言えばメリエス」になったんですが、残念ながら途中で、だんだんあきられてきたんですかね。それと戦争の煽りがあって、ものすごい打撃を受けて、破産するんです。一時は大道で飴を売って食いしのぐようなこともあり、その後、生涯貧乏だったんですが、このときの功績を讃えられて、落ちぶれに落ちぶれたんですけれども、国から勲章をもらうくらい、後の人から称えられるんです。映画人の中では、いろいろなことを始めた"元祖・特撮"のような評価を受けるんですけれども…死ぬまで生活は楽にならなかったという、私の大変好きなパターンの人生を歩んだ方なんですね。この方のことについて、お孫さんが、書いた伝記が、最近本になっています。
もう一つね、『ヒューゴの不思議な発明』っていう、マーティン・スコセッシ監督の映画があるんですが。まさにメリエスのことを描いたもの。この中で、メリエスを演じたのが、ベン・キングズレーっていう方ですね。この方、ガンジーの映画で、ガンジーをやった方ですが、ガンジー役があまりに良すぎて、他の映画に出てきても、みんなガンジーに見えてしまう…(笑)。私だけかもしれないですが。そのベン・キングズレーが、メビウスを演じていました。

山陽さん:「月に行こう」というのは、かぐや姫の例えもありますけれど、昔からみんな考えたんでしょうね。「太陽に行こう」とはなかなか思わない。イカロスじゃないから。月には、何か行けるような気がして…親近感みたいなものを、地球の人々は、みんな感じていたかもしれないなと思いますね。

鈴木:なんで行けると思ったんですかね。「月ならいけそうだ」って、みんな目標を立てるわけですよね。

山陽さん:私、1つ思うのは、「月は地球にくっついているもんだ」って、なんとなく思っているんじゃない?引力で、「地球が月を支えているんだ」と。太陽と比べると全然大きさが比べ物にならないくらい、空に並んでいるときはいっしょくらいのものだけれども、地球の持ち物だっていう考えが、そんなことを知らなくても、昔の人からなんとなくあったんじゃないですか?月には、それを支えるだけの色合いがあったんじゃないですかね。太陽に告白する人はいない気がするんだけど、月に向かって独り言を言う人が多い気がするんですよ。

鈴木:たしかに、たしかに!詩でも俳句でも、「太陽を詠む」ってあんまりなさそうですよね。

佐藤:そうですよね…陽の“光”はありますけれどね、太陽そのものは、あんまり聞かないですよね。「月を詠んだもの」は、月そのものも、月の光もありますから。

山陽さん:この曲も、ぜひ聴いていただきたいんですけれども。これは、タイトルに「月」が入っていないんです。なぜか!?曲の後に、そのわけをお話しします。

♪憂歌団/WOO CHILD

鈴木:(曲を聴きながら)「月」って歌詞が、これまで出てきていないんですけれども。

山陽さん:この曲、『月はどっちに出ている』っていう映画の、エンディングの曲なんです。岸谷五朗さんが主演されて。非常に好きな映画で…ひょっとしたら、自分でお金を払って封切りで見に行った最後の邦画かもしれない。ここ随分、邦画を劇場で見ることがないので。エンディングでこの曲がかかった時に、「うわー!」と思いましたね。タクシードライバーの話なんですがね。非常に良い映画でした。20年以上前かな?

佐藤:ちょっと調べてみますね、後で。見て見たい映画が増えますよね。

鈴木:だんだん溜まっていきますね、山陽さんと番組をやるたびに(笑)
さぁ、番組あと1分になりましたけれども。

山陽さん:11月19日は月食だって知ってた?

鈴木・佐藤:そうなんですか!?

山陽さん:知らないよ、私も人から聞いた話だから(笑)。携帯電話があればすぐ調べられるんだろうけど、携帯もパソコンを持っていないから、人から聞いて、「ふーん」て(笑)。19日は天気どうかな?そして月は満月じゃないから…月食だってわかるのかしら。あ!満月なのかな!(?)月を語るのにこんな大事なことを知らなかった!

▼番組で紹介した曲~神田山陽さんセレクション

『Moon』/サカナクション(インストゥルメンタル)
『月が笑う』/井上陽水
『WOO CHILD』/憂歌団
・・・

アフタートーク後のアフタートーク(MC陣の反省会)で、「ギリシャ神話の話、出なかったね」と鈴木アナ。日本の神話は少し出ましたが、山陽さんの話は本当に、何が飛び出すかわかりません!
リスナーの皆さんと一緒につくっていく北海道まるごとラジオ、今回もおたよりから派生していろんな話も出ました。たくさんの投稿、本当にありがとうございました。
さて、エンディングで話題になった、11月19日の部分月食。皆さまご覧になったでしょうか?当日は曇りの地域もあったようですが、札幌からは、ちょうど、月が欠けていくのを見ることができましたよ。それぞれの場所から、「この月を、見ているのかな~」と思いつつ、パシャリ。

…天体の撮影って、難しいですね。
寒い日が続くと、首をすくめて下を向きながら歩いてしまいがちですが…ふと、空を眺めて見るのもいいかもしれません。月を見て、「あ、まるごとラジオに投稿しよう!」と思い出していただけると嬉しいです。(月のように、ずっとついていきますよ…笑)
放送終了後のおたのしみ「アフタートーク」で、ご紹介しきれなかったおたよりとともに、もうひとうんちくご紹介しています!こちらも、ぜひお聴きください。
ビフォアートーク(鈴木アナのギリシャ神話うんちく)、こぼれ話など、WEBのコンテンツもあわせてお楽しみください。
次回の北海道まるごとラジオも、どうぞお楽しみに!

2021年12月00日

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