NHK札幌放送局

「ウッドショック」 道内にも及ぶ波紋

ほっとニュースweb

2021年8月18日(水)午後5時06分 更新

「50年近く仕事をしているが、こんなことは初めてだ」
道内で工務店を経営する社長が、「ウッドショック」を評した言葉です。  

世界中で木材が品薄となり、価格が高騰する「ウッドショック」。木材を使う立場の人たちは、急激な値上がりに困惑しています。その一方で、木材を生産する人たちが多い道内では、「値上がりはチャンスだ」という声も出ています。その背景と道内にも及んでいる影響を探りました。

木材価格高騰 いったいどうして?

ことし7月、岩見沢市の住宅建設の現場を訪ねました。

建築材料として使われていたのは、「ベイマツ」。あまり聞き慣れない名前ですが、長さがあり、柱のほか、横向きに使われて建物を支える「はり」のような用途で重宝されています。その産地を聞くとカナダ産でした。

こうした海外産の木材、今、世界中で品薄となり、価格が高騰しています。その背景には、アメリカの動向があります。

農林中金総合研究所のレポートは、低金利が続くアメリカでは、もともと住宅着工件数が増加傾向にあったうえ、新型コロナウイルスの感染拡大で、郊外への住み替え需要が盛り上がり、住宅建設がブームに。それに木材の供給が追いつかず、急激な値上がりにつながったと指摘しています。


では、いったいどの程度、値上がりしているのでしょうか。

農林水産省の調べによりますと、先ほど紹介した「ベイマツ」の製材品価格、去年7月は、1㎥あたり、6万2200円でしたが、ことし7月には9万9000円。わずか1年でおよそ60%、値上がりしています。とりわけ、ことしに入ってからの値上がりは急激です。

高騰に現場からは悲鳴が

住宅を建設していた美唄市の工務店の佐藤勇治社長は、ことし初め、木材の価格がまだ安かったころに仕入れた材料を取り崩しながら、建設作業にあたっています。それでも、このままではコストの増加は避けられないと頭を抱えています。

佐藤勇治 社長
「この仕事を始めてから46年になりますが、こんなに高値になることは初めてです。お客さんへの負担が大きくなることについては、会社として努力してなんとかなれば良いのですが、輸入価格しだいなので、どうしようもありません。早く価格が落ち着いて、元どおり、資材が供給されるようになればいいなと思います」

美唄市の工務店 佐藤勇治 社長

林業にとっては好機到来

一方、林業が盛んな道内の生産者にとっては追い風です。実際、海外産の代わりに北海道産の木材を積極的に使おうという動きがすでに出ています。

道内で多く生産される木材のうち、建築用の木材としてもっとも需要が高いのが「トドマツ」。

道が道内の木材加工会社を対象に行った調査では、ことし6月の時点で、トドマツの道外への出荷量が、去年の同じ月に比べて、36%あまり増えています。

「このチャンスを逃すまい」。林業が基幹産業の芦別市では、関係者が木材の出荷に向けた準備を加速させています。

取材に訪れた7月、森の中には、木々の調査を急ピッチで進める森林組合や市の職員の姿がありました。

それぞれの木の高さや幹の周りを測って、生育状況を記録する作業です。木の状態を詳しく把握しておくことで、ニーズが生じた時に、いつでも出荷ができるようにするためです。

なかそらち森林組合 藤田悠介 管理部長
「多くの木々が、植えてから40年、50年がたって、今、やっと出荷の時期を迎えています。そうした中で、このように『ウッドショック』が起き、道産の木材に注目が集まっている状況というのは、木の持ち主の皆さんにとって、とても喜ばしいことです。今後も、引き続き調査を続け、出荷に備えたい」

課題も山積 チャンスどう生かすか

しかし、道内産の木材には課題もあります。

道によりますと、伐採した後の木材は、割れたり、狂いが生じたりするのを防ぐため、乾燥させる必要がありますが、その設備が不足しているということです。

さらに、人手の不足も深刻です。木を伐採する人だけでなく、工場で木材加工にあたる人も足りません。

こうした課題もあるものの、林業を振興する立場の道は、道内産木材の安定的な需要を開拓していきたいとしています。

道 水産林務部 林業木材課 加納剛 課長
「これまで海外産の木材を使ってきた工務店ともやりとりをして、道産木材を使ってもらえるように促していきたい。一過性で終わるのではなく、継続的な需要につながるよう、工務店にどういうニーズがあるのかを把握しながら、取り組みを進めたい」

道 水産林務部 林業木材課 加納剛 課長

「ウッドショック」がどれほど続くかは、アメリカ国内の景気の動向などに左右されるため、不透明です。

木材を使う人たちにとっては、大変な状況が続きますが、道内の生産者にとってはまたとない機会とも言えるだけに、これをきっかけに道内の林業関係者が活性化の手がかりをつかんでほしい、そう思います。

(岩見沢支局記者 竹村知真)
2021年8月18日

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