NHK札幌放送局

Do! | #30  Tanaka So

デジタル戦略チーム

2023年10月18日(水)午後4時32分 更新

第30回に登場するのは、札幌局で主にデジタル分野でのシステム開発を担当する田中職員。NHKプラスで実施中の生字幕同期サービスの開発にも携わっています。サービス開発のきっかけや苦労、そしてシステム開発によって成し遂げたいこととは。学生時代の話とともにたっぷりと聞きました。
[Photo By 須田 健太郎 ]
[聞き手 加藤 洋也(NHK札幌放送局 デジタル・戦略G)] 

田中 壮 - Tanaka So -
電気電子工学専攻。大学時代にはDJサークルやサッカー部に所属していた。音楽、自転車、旅行、ビール、ラーメンなどの多彩な趣味を持つ。特技は寝つきの早さと手首・手指の柔らかさ。手首の柔らかさを活かし、左右両手から繰り出される片手拍手が得意技。

<目次>
1.新しい価値観を提供する
2.アンテナを張り続ける
3.視野を広げ、見極める

1.新しい価値観を提供する

――普段の業務内容について教えてください。

業務改善に繋がるシステム・ツールの開発です。新しいサービスを企画段階や、リニューアルしたい時に必要となるシステムの開発を行っています。最近だとサケカメラですね。サケの遡上の様子を撮影し、番組等に使用することを目的に、川に設置した定点カメラでサケを撮影する取り組みです。これまでに運用しているシステムでは、設置期間中常に映像収録するものであったため、撮影した映像内にサケが映っているかどうかの確認作業は、全て人の目で映像確認を行なっていました。そのため、確認作業に多くの時間を費やしていたことが課題でした。そこで、作業時間の短縮を目的に、定点カメラにサケが映り込んだ時だけ、サケを自動認識して映像収録するシステムを開発しました。
サケカメラ・・・サケの遡上を観察するために豊平川の支流・真駒内川にカメラを設置し、その様子を番組やHPで公開しています。


――実際、川に行ってカメラの設営をしているのですよね?

そうです。具体的には、カメラ設置場所の風の強さや水のざわめきなどを把握するために行きました。サケカメラに限らず、現場の環境条件を把握せずにシステム開発を行っても、期待した動作にならないことも考えられるので、実際に現場に行って状況を把握することは大事だと思います。

――NHKプラスの生字幕同期サービス(※)も開発を担当したと聞きました。

生放送番組の字幕(以下、生字幕)は、放送番組の進行に合わせて人が手作業で文字起こしをして、字幕を制作しています。そのため、文字起こし作業の分、実際に送出される字幕が完成するのには多少の時間が必要となります。そのため、映像内容に対応する生字幕が表示されるのは若干遅れることとなり、字幕がすごく読みにくい状態になっています。ちなみに食堂でお昼ごはんを食べながら、ぼんやり眺めていたNHK総合のニュースの生字幕がずれているのを見て、生放送では難しくても、NHKプラスではデジタル技術を活用して改善できるのではないか、と思ったのが開発のきっかけです。
※NHKプラス生字幕同期サービス・・・生字幕の表示タイミングを映像内容にピタリと自動的に同期させるサービス。2020年8月から、NHKプラス見逃し配信の一部番組でサービス提供中。

――普段から改善の視点をもっているのですね?

いつも考えていますね。放送の技術って、20年ぐらい前から大きくは変わってないと思うのですが、例えば生字幕の遅れのように改善できるところはまだまだあると考えています。現状の放送でなにか課題はないかなと一視聴者としてテレビを見るように心がけています。

――開発中、苦労したことはありますか?

周囲では、生字幕の遅れを「仕方ないのではないか?」とそこまで大きな問題と捉えない人もいました。ですので、このシステムができた時にどれだけ喜ばれるかという必要性について、周りに理解してもらうのが大変でしたね。口だけで説明しても、納得してくれない人もいましたが、試作したものを見せることによって、有益だということを理解してもらえました。今後も新しいシステムを作りたい時はプロトタイプを作り、まずその機能の効果を周りの人に見せ、実感してもらうことで仲間や理解者を増やしていきたいと思っています。

――開発はどのように進めたのですか?

NHKからは私が開発担当者として参加し、開発請負業者さんの担当者2、3人と一緒に開発しました。最初に私がどのようなシステムを作りたいのかを明記した仕様書を作り、開発請負業者さんへ発注して開発を進めました。こちらが想定した仕様通りのシステムとなるよう、こまめに進捗管理を行いました。システム開発の過程では、映像内容と字幕表示を同期させるという最終形を目指して、字幕内容を抽出する、音声を認識させる、といったシステム全体を構成する一つ一つの機能を細かく分けて進捗管理を行いました。これによって、動作検証時にエラーが生じた際、どこに問題があるのかといった確認が容易になりました。ですので、一つ一つの行程をしっかりと確認することは大事です。

――今後、このサービスの展開はありますか?

現在提供しているNHKプラスのサービスは、一つは現在放送中の番組を見ることができる同時配信です。二つ目は、一定期間、放送済みの番組を見ることができる見逃し配信です。私が開発に携わった生字幕同期サービスは現在、一部番組の見逃し配信(※)に適用されています。同時配信向けの生字幕同期サービスについても、現在サービスインに向けて取り組んでいるところです。サービスが開始されたら、ぜひ放送の字幕表示と見比べてみて欲しいなと思います。
※現在、生字幕同期サービスが適用されている見逃し配信番組・・・おはよう日本(7時台)、正午ニュース、ニュース7、ニュースウォッチ9

――このサービス開発で第47回の放送文化基金賞(※)を受賞されていますが、反響などはありましたか?

特に耳の不自由な方から、このようなサービスは本当にありがたいというお話をいただきました。ある方からは、今までは生字幕が映像内容とずれているので、生字幕番組とわかった時点でその番組視聴をやめる、というお話を伺いました。しかし、本サービスによって映像内容と字幕が同期している様子を見てもらった時に「すごい!これなら番組を積極的に視聴したい!」と言ってくれました。今まで視聴をしなかった方が番組を見てくれるようになったことが嬉しかったです。
※放送文化基金賞・・・視聴者に感銘を与えて、放送文化の発展と向上に寄与した優れた放送番組や配信コンテンツや放送文化、放送技術の分野での顕著な業績をあげた個人・グループを対象に表彰するもの。

――東京や地方での勤務の経験がありますが、システムの開発は東京の方がやりやすいですか?

今はリモートでコミュニケーションができるツールがたくさんあるので、札幌で勤務していても、あまりやりにくさは感じないですね。最終的なシステムを動作検証する段階だと、システムの動作パラメータ調整など細かな作業をする時にはシステムの近くにいた方が都合良いことがありますが、開発や設計の段階ではそこまで苦慮しないです。現在取り組んでいるNHKプラスの同時配信へ生字幕同期サービスを適用するための取り組みでは、札幌局に異動した現在もリモートで東京の開発チームの支援をしています。

――初任地の静岡局では送信技術を主に担当されていましたが、これまでの業務と現在取り組んでいる業務(システム開発)とでは違いはありますか?

もちろん技術的なことは違いますが、仕事の進め方では共通していることはありますね。プロジェクトに関わる方々とのコミュニケーションを疎かにすると問題が起きる可能性があるので、担当のみなさんとしっかり意思疎通をして、同じ方向を向いて仕事するのが大事だということは変わらないと思います。

――チームワークが大切なのですね。システム開発においてそれを実感したことはありますか?

生字幕同期サービスの開発では、様々な技術分野を自分で調査したのに加えて、音声認識や字幕を抽出する技術など各技術を専門とされている方々に相談することで、最終的なシステムの構成を考えることができました。それはやはり一人では難しかったと思います。NHKには様々な分野の専門家や、広い知識を持った人がいます。そういった方々の助けを借りながら出来上がったものだといえます。

――今後の目標をお聞かせください。

新しいものをつくることで、これまでになかった価値を創出することができたらいいなと思っています。今の職場では、新しい映像表現や番組表現を生み出していくような仕事に携わっていきたいです。


2.アンテナを張り続ける

――大学院ではアンテナについて研究されていたのですよね。

大学の研究室が総務省の研究所(情報通信研究機構・NICT)と共同研究していて、その研究所で主に研究をしていました。私が所属した研究グループでは、人が携帯電話を使用した際に人体に影響がある電波の強さを評価し、国内で使用できる電波強度の基準を作るグループでした。私自身の研究テーマは、人が携帯電話を使用した際の状況をラットで再現するため、人より小さなラットに対して超局所的に電波を放出させることを目的としたアンテナの開発をしていました。作ったアンテナと実験システムは、厚生労働省の医学系の研究者による動物実験でも実際に使われました。自分の研究成果については、国内外の学会で複数回発表することができ、良い経験ができました。

――この研究が今の仕事にも活かされていますか?

今の仕事に通じる部分でいうと、課題に対してのアプローチの仕方ですね。どこに課題があるのか?それは自分だけの課題ではないのか?本当に解決すべき課題なのか?ということをきちんと見極めながら、本質的な課題を潰していくようなことを学生の時からずっとやっていました。その考え方や経験が今でも活きていると思います。

――プログラミングの知識は学生時代に学んだのですか?

学生時代は数値計算するためのプログラミングを少し勉強した程度です。今の業務で使用しているアプリケーションを作るためのプログラミングを学んだのは社会人になってからです。学びはじめの頃は、自分の身の回りで困っていることを解決するものを作ることから始めました。やはり何でも興味を持っていないと続かないと思うので、自分の興味あることから始めることで、少しずつできるようになっていけたと思います。

――では、サケカメラのシステムを作ったときもNHKに入ってから学んだ知識を使って作ったのですか?

そうですね。様々な技術を組み合わせてできました。一つ一つの技術やその実装方法はインターネットや本で調べると内容がわかるので、やりたいことを細かく分けていって、この機能はこう作ればできるな。あの機能をこう作れるなとか。様々な技術を組み合わせていくことで、新しい機能を生み出すことができると思います。サケカメラでいえば、システム全体としての機能は調べても当然出てこないですが、必要な機能ごとに細かく分解して、組み合わせていくことで、やりたいことに近づけていけたのではないかと思います。あとは、使える技術にはどんなものがあるのかを把握していないと新しいアイデアも出てこないので、世の中でよく使われている技術や新しい技術については、普段からアンテナを張っています。

――話は変わりますが、学生時代にはDJのサークルに入られていたのですよね?

昔からJ-POPではなく、クラブミュージックが好きでした。好きな音楽はCDだとなかなか売っておらず、レコードでしか買えませんでした。それでレコードを買い始めました。レコードを買っていると近い趣味を持つ友達もでき、レコードをたくさん持っている友達がDJをやっていたのを見て、自分もやってみたいなと思い始めました。

――学生時代には渋谷でイベントを開催されたのですよね?

都内のクラブで何回かDJイベントを開催しました。一番多い時だと、200人くらいお客さんが入るイベントを開催することができました。企画から広報まで全部自分でやって、会場から人があふれるくらいのイベントとなりました。いい経験でした。

――一時期、サッカー部にも加入されていたとか?

小学校の頃からサッカーをやっていて、高校に入るまでの将来の夢はサッカー日本代表でした。しかし、高校ではケガをしてしまい、思うようにプレーができなくなり諦めてしまいました。ただ大学入ってからは、2年~3年の2年間サッカー部に所属して、東京都大学リーグのアシスト王になりました。4部なので、一番下のカテゴリーでしたけど(笑)


3.視野を広げ、見極める

――就職活動は幅広い業種を見ていたのですよね?

そうですね。ただ、様々な業界の就活を手広くやりすぎて失敗したことがあります。ある企業の採用面接で最終面接まで進んだにも関わらず、最終面接での1番最初の質問であった志望動機をど忘れしてしまって答えられず、恥をかきましたね。結果はもちろん落ちました。あと、友人から誘われ、大手航空会社のパイロット職の採用選考を受けました。かなりいいところまで進んだのですが、シミュレーター試験で落とされたのがとてもショックでした。シューティングゲームは得意だったので、受かる気満々だったのですけどね(笑)

――いろんな業界を見ていたのですね。そんな中で就職活動するうえでの軸はありましたか?

自分が楽しみながら、何か世の中のために役に立ちたいという気持ちがありました。きれいごとではなくて、まず自分が面白いと感じて取り組むことが、結果的に世の中に還元できればいいなと。自分自身の興味関心にピンと来た仕事を見つけようとしていました。そういう軸で就活をしていたらかなり幅広くなってしまいました。でも広く就職活動をしたことで様々な業界の事情や社会の仕組みについて、知ることができたので、すごく良い経験だったなと思います。

――最終的にNHKを志望した決め手は?

電機メーカーの社員の方からお話を伺った時、入社してからずっと一つの部品の性能を高めるための仕事をしていて、日々その仕事を極めることを目指している、というお話を聞いたことがありました。一方で、NHKにはカメラマンのような現場の仕事から、放送技術研究所のように様々な分野の研究を行う仕事まで、かなり幅が広い仕事ができます。そのため、様々な業務経験を積んだうえで本当にやりたいことが選べるというのが魅力的だなと思い、NHKへの入局を決めました。一つのことを突き詰めることもできるし、様々なことに挑戦もできる環境が魅力だと思います。

――NHKに入ってみてどうでしたか?

サービスやコンテンツを作ると、直接視聴者の方から反応がもらえるのが、うれしかったですね。NHKの仕事は、人々の視聴スタイルにも影響を与えることができる仕事だと思うので、とてもやりがいを感じています。昔は家に帰ったらテレビを見るっていう人が多かったと思うのですが、今はテレビ離れが進んでいると言われています。技術がもっと進化していけば、今の時代にあった形でテレビがより生活に根ざしたものになれるかなと思います。昔のテレビは放送を一方的に視聴者へ届けるだけのものでしたが、現在は例えばSNSとの連携やWEBでの投稿募集を行うようなことも当たり前になってきているので。人々の視聴スタイルを変えるのは簡単ではないですが、そういう可能性がある仕事をしているのは、ワクワクしますね。

――就活生にアドバイスをお願いします。

ありきたりな話になってしまいますけど、学生時代にしかできないことがたくさんあるので、今取り組んでいることを一生懸命やってほしいと思います。あと就職活動は、人生で何回も機会があるものではないので、あまり固執しすぎないで、いい機会だと思って視野を広くして取り組んで欲しいと思います。また、面白いことや世の中のためになることに触れる機会を作ってほしいです。そのうえで自分自身が何をやりたいのか見極めることができると、将来にわたって楽しく、豊かな人生をおくることができるのではないでしょうか。

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