NHK札幌放送局

まちの未来を

ローカルフレンズ制作班

2022年3月10日(木)午後4時59分 更新

ローカルフレンズ滞在記 豊浦編。早いもので滞在から半月が経過しました。 根暗な性格なのですぐマイナス思考になってしまうのですが、田中さんの明るさとまちの人たちの優しさに助けてもらいここまで楽しく滞在できています。ありがとうございます。 

さてローカルフレンズの田中さんは地域おこし協力隊として豊浦町にやってきました。卒業した今でも現役の地域おこし協力隊と繋がりがあります。
そんな豊浦町の地域おこし協力隊の中には少し変わった条件で採用される人たちがいるとのこと。
果たしてどんな人たちなのか、会いに行くことにしました。

条件は夫婦であること

取材の舞台は豊浦町大岸地区。
ここには閉校となった学校を改修して作られた新規就農者向けの研修拠点施設「いちご分校」があります。

実は、豊浦町では“夫婦”を条件に新規就農を目指す人たちを地域おこし協力隊・農業支援員として受け入れています。全国的にも珍しい取り組みなんだそうです。
4年前から始まったこの制度。現在1期生から3期生まで、4組の夫婦がイチゴ農家となるべくいちご分校を拠点にイチゴ農家の親方の下で実践的な研修を受けながら、協力隊の任期3年間をかけて独立に向けての準備を進めています。

夢を職業に ゼロからの挑戦

雪が降りしきる朝、いちご分校にあるハウスを訪ねると2組のご夫婦にお会いできました。
迎えてくれたのは齊藤竜彦(さいとう・たつひこ)さん・理惠(りえ)さん夫婦と北浦洋平(きたうら・ようへい)さん・佳(けい)さん夫婦。いちご分校2期生です。

齊藤さん夫婦は“とちおとめ”で有名なイチゴ大国栃木県のお隣、茨城県からやってきました。
前職は農業とは全く違う仕事をしていたお二人。豊浦町に来たのはイチゴ農家になりたいと思っていた竜彦さんの思いがきっかけでした。

理惠さん「前の仕事が(夫が)すごく大変そうで。好きでやっているのかなぁ?と思っていて(見ていて)辛そうにしてたから聞いたら『好きじゃない』と。じゃあ本当はなにやりたいのって聞いたらイチゴ農家やりたいって。びっくりしたけどイチゴいいねって。転職するなら最後のチャンスだしダメでもやってみようと」

ゼロからのイチゴ栽培に加え、除雪など北海道ならではの生活に慣れるのは大変だったそうですが、イチゴ農家の親方やまちの人たちのあたたかい支えに助けられここまで楽しくやれているそうです。

そしてもう一組、札幌からやってきた北浦さん夫婦は大学の先輩・後輩として出会い結婚。前職は2人ともSEとして働いていました。5年前に洋平さんの地元である札幌に転勤したことがきっかけで、北海道で暮らすことを考えるようになったといいます。

洋平さん「2人ともモノづくりが好きで、せっかく北海道に帰ってきたしここでずっとモノづくり続けていけるような二人でできる仕事ないかなって。その中で農業が候補にあがって豊浦町にたどり着いた。イチゴづくりも興味持っていたので。」

北浦さんたちも齊藤さんたち同様、親方やまちの人たちの支えに本当に助けられているそうで、みなさんの期待に応えるために頑張っていきたいと語ってくれました。

齊藤さん・北浦さんは今年、自分たちだけで初めてイチゴを栽培しています。
親方の元で1年間修業を積み、そこで学んだことを自分たちだけで実践できるのか試行錯誤しながらイチゴ栽培の一歩を踏み出しています。
4月末以降の初出荷にむけて葉かきと呼ばれる重要な作業にも熱が入っていました。

齊藤さんも北浦さんもとても物腰が柔らかく、常に“感謝”を口に出す方たちで、こんなに心優しい人たちが作るイチゴはさぞ甘くて幸せになれる味がするんだろうなと思いました。
収穫時期にまたお邪魔させていただきたいです。

イチゴ農家に休みなし

実はイチゴ農家さんたちはイチゴ以外にも様々な作物を作っています。
ということで豊浦のベテランイチゴ農家さんを訪ねました。
迎えてくれたのは佐藤義一(さとう・よしいち)さん。いちご分校の親方の代表を務める豊浦を代表する農家さんです。

「滑るから足元きをつけろー」と優しく声をかけてくれた義一さん。やっぱり豊浦の人たちは優しいなーと油断していると、
「先週の放送みたぞー。それにしてもえらい短かったなやる意味ないべ」と一言。
(先週の放送をご覧になりたい方はこちら
広島カープOB外木場投手のナックルカーブばりの落差のある発言になにも言葉がでてこず。社会人になって4年、社会は甘い場所ではないといやほど経験してきたはずなのに滞在記でちやほやされて調子乗ってたかな・・・と、さっそく根暗モード全開になりかけました。(義一さんは冗談半分で言ってくれただけです。と信じています。)

そんな義一さんが作業されていたのがアサツキの収穫。
アサツキはネギの仲間で、道内では豊浦町を中心に生産されています。

ネギに似た独特の香りと辛さが特徴のアサツキ。味噌汁に入れたり、胡麻和えにして食べるとおいしいそうです。義一さんから肉と炒めて食べるのが簡単で美味しいと教えてもらったのでいただいたアサツキを使って自分で作ってみました。

触感はニラに近かく、味はネギともニラとも違う独特の風味で初アサツキだったのですが忖度なしにおいしかったです。

豊浦のイチゴ農家さんたちは夏場のイチゴだけでなく冬場に取れる野菜も作ります。アサツキ以外にもサヤインゲンやユリ、ブロッコリーなど様々な野菜が作られています。
イチゴ以外の時期の田畑を有効活用して収入を得るようにするためです。

イチゴ農家さんってイチゴしか作ってないものだと思っていたので年間通して本当に忙しい仕事なんだと実感しました。

親方の全てを受け継いでいく

義一さんの元にも新規就農を目指してやってきた夫婦がいます。いちご分校3期生の佐藤貴規(さとう・たかのり)さん・有希(ゆき)さん夫婦。豊浦町にきておよそ1年です。
苗字が親方の義一さんと同じですが血縁関係はないんだそうです。こんな偶然あるんですね。
千歳市に暮らしていた2人。貴規さんが元自衛隊、有希さんが元ネイリストのお仕事をされていたそうです。

貴規さん夫婦は自分たちでものを作って食べていくことに憧れがあり新規就農を目指して豊浦にやってきました。
貴規さん「人間生きる上で食べることが基本。自衛隊のころは出勤してお金を稼いでスーパーいって食べものを買う。そのサイクルに違和感を感じていて。食べるためにお金を稼ぐんじゃなくて食べ物を作って生きてやろうと。」
有希さん「人間らしい生き方。まちのうるさいところせわしないじゃなく広々としたところで、家族でのんびりと自分のたべるものも作ってみたりとかそういう暮らし・生き方がしたいってところから農業やってみようと。」
1年間義一さんの元で学んだ貴規さんたちは、来月から齊藤さんや北浦さんと同じく自分たちでいちごを育てることになっています。
そしてイチゴ以外の作物作りも義一さんと同じものを栽培していくそうです。
親方の生き方をそのまま受け継いでいくってかっこいいです。

これからの豊浦を託したい

豊浦の農家が直面しているのが高齢化と担い手不足です。
大岸地区の農家さんだけでも平均年齢が約75歳、年々農業を辞めていく人も増えているそうです。
だからこそ自ら進んで学びにきた彼らたちの存在は大きく、義一さんも自ら教えられることはなんでも教えていきたいと考えています。

義一さん「これまでやっていた仕事を辞めてまでこういう業界に入ってくるっていうのは並大抵の決断ではできない。成功してもらいたいからそれなりに考えて支援していかないといけないと思っている。」
「これからの地域の担い手として期待しているし、自立して次の研修生を受け入れてやっていってもらいたい。」

“ライバルではなく仲間”として歩んでいく

最後に地域おこし協力隊を3月で卒業し、4月から豊浦の農家としてやっていく1期生の元を訪ねました。
星雄介(ほし・ゆうすけ)さんと明子(あきこ)さん夫婦。洞爺湖町で長芋やじゃがいもなどを栽培する農家の生まれであった雄介さんが、いずれは農業をやりたいという夢をかなえるため、道庁職員を辞めて札幌から豊浦にやってきました。義一さんの元での修行を経て、昨年11月に新規就農を認められました。

雄介さん「あっという間だった。親方を中心に皆さんの協力を得てようやくここまでたどり着けました。」

自分たちだけで初めて育てたイチゴが出荷を迎えたときは、達成感とうれしい気持ちが大きかったそうで、一番に食べてほしいと親方に持っていったそうです。
親方からおいしいと言ってもらえたそうなんですが、雄介さん個人としてはもっとおいしくできたと感じていて、すぐに来年にむけて栽培方法の見直しを始めたといいます。

すぐに反省と分析ができる星さんのような、ストイックにいちごに向き合える方でなければおいしいイチゴは作れないんでしょうね。
星さんみたいなストイックでできる男にいつかなりたい靍田です。

そんな星さん。自分たちだけでなく齊藤さんや北浦さん、佐藤さんたちいちご分校の皆さんと一緒にこれからの豊浦いちごを盛り上げていきたいと考えています。

雄介さん「安定していた仕事や生活を投げ捨てて、みんなこっちにきて農業をやろうとしている。並外れた気持ちではない。だからこそ助け合って成功したいと考えている。」
「今いる地域の人たちはそれぞれが活躍されているけど、僕らはこういうめぐり合わせできた仲間なので助け合っていけたらいいなと思っています。」
さらに「これからの豊浦いちごの担い手として後輩を引っ張っていけるように存在にもなっていきたい。」とも力強く語ってくれました。

“農業をやりたい”という思いをもったみなさんが豊浦に集まり、個性は違えど、同じ方向をむいて日々頑張っている姿を知ることができた貴重な取材でした。
新規就農を目指すいちご分校の皆さんのチーム感は、学校の同級生や会社の同期との関係と似ているようでまた少し違っていて。
社会人になってからこうした出会いがあることは素直にうらやましいなと感じました。
これからの豊浦の農業の未来は明るい。またひとつ豊浦の宝に出会うことのできた一週間でした。
またひとつ豊浦の宝に出会うことのできた一週間でした。

2022年3月10日


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