NHK札幌放送局

円山動物園運営の札幌市 「動物の福祉」重視の条例 その狙いは

ほっとニュースweb

2021年12月9日(木)午後6時30分 更新

札幌市が制定を目指す「動物園条例」。その素案が市議会に示されました。札幌市が全国でも初めてだとする内容のこの条例。その狙いはどこにあるのでしょうか?

背景には飼育動物の死

「札幌市動物園条例」。市がとりまとめた条例の素案が、12月7日、市議会の総務委員会に示されました。

条例制定のきっかけは、札幌市円山動物園で起きた飼育動物の死にありました。
園内では、6年前、マレーグマがほかのクマに襲われて死ぬなど、近年、誤った飼育方法によって動物が死ぬ事故が相次いできました。
市は、こうしたことへの反省などを踏まえ、動物園に求められる役割や責任を定めようと条例制定を目指すことになったのです。

娯楽としての動物園

動物園には、これまで市民の憩いの場として娯楽的な機能を求められる傾向がありました。
実際、円山動物園でも、開園当初は、動物に芸をさせたり、洋服を着せたりしていた時期がありました。

昭和30年代 人とボクシングをするカンガルー 円山動物園

しかし、いま、さまざまな生態系が存在する「生物の多様性」を守ろうという動きが国際的に広がる中で、動物が苦痛や不安を感じず本来の行動をとれるようにする、いわゆる「動物の福祉」の観点が重要視されるようになっています。

「動物の福祉」と「生物多様性」

条例の素案では、動物園の活動について、「動物の福祉」を確保しながら、野生動物を守り、「生物多様性」の保全に貢献するなどとしています。
このため、それぞれの動物の生態にあわせた飼育環境を整備するほか、動物の尊厳を尊重するため、野生動物への直接の餌やりなどは原則行わず、動物に、人を模したような格好や行動をさせることはしないと定めています。
市によりますと、こうした観点を盛り込んだ条例は全国でも初めてです。
このほか、素案には、専門的な知識や経験を持つ職員の確保や、動物の病気の予防や治療を適切に行える医療体制の整備なども盛り込まれています。

条例の説明資料

ゾウ舎での取り組み

円山動物園では、条例制定を前に、すでに「動物の福祉」の理念に基づいた飼育方法の導入を始めています。
ミャンマーから来たアジアゾウ4頭が飼育されているゾウ舎は、2019年に建設された際、ゾウにストレスをかけないようさまざまな工夫が施されました。

たとえば、ゾウ舎の床。足にかかる負担を減らそうとコンクリート製から砂に変えたところ、立ったまま寝るとされていたゾウがミャンマーにいた時と同じように横になって寝る姿が確認されたということです。

また、ゾウ舎にはいつでも水浴びができる屋内プールを設置。
1日10時間以上、食事するゾウのために、夜中でも自動でエサを与える設備も導入するなど、動物が本来の行動をとれるような「動物の福祉」に配慮した飼育環境を実現しようとしています。

「動物の福祉」向上を目指して

条例の意味について、札幌市円山動物園の佐々木和規・経営管理課長は、次のように話しています。

「動物園条例を定めることで、飼育している動物すべての『動物の福祉』を向上させていくことに、動物園がしっかり取り組んでいかなければならないという宣言になる。市民にも生物多様性を保全するため何ができるかを考えるきっかけにしてほしい」。

札幌市は、2022年1月中旬から市民に意見を募ったうえで、早ければ5月にも、条例案として市議会に提出する方針です。
「動物の福祉」と「生物の多様性」。
動物園の役割について、私たち1人1人が考えるきっかけにもなるかもしれません。

札幌局記者 三藤紫乃
2017年入局。札幌局、帯広局を経て、再び札幌局に。札幌市政担当。

2021年12月9日

関連情報

「タマネギ列車」は運転士の誇りとともに

ほっとニュースweb

2020年11月11日(水)午後0時14分 更新

生乳廃棄を回避せよ 酪農をじわり襲う16年ぶりの“危機”

ほっとニュースweb

2021年12月14日(火)午後3時48分 更新

知里幸恵 100年前に込めた思い

ほっとニュースweb

2022年3月1日(火)午後1時24分 更新

上に戻る