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WEBニュース特集 知床の森復活へ~空から見る100平方メートル運動の軌跡

北海道WEBニュース特集

2020年8月27日(木)午後2時50分 更新

世界自然遺産・知床の半島の大部分は、トドマツやミズナラなど針葉樹と広葉樹が混ざる原生林です。 この豊かな自然が広がる地域を上空から見ると、木々や草地が“緑のパッチワーク”を描いているところがあります。 「しれとこ100平方メートル運動」の運動地です。 
900ヘクタールもの広大な開拓跡地で植樹を続けてきた43年の運動の軌跡を空からたどります。

こちらは昭和49年(1974年)に撮影された知床・斜里町岩尾別地区の航空写真です。白っぽく見えているところが畑などの開拓跡地です。
岩尾別地区では大正から昭和にかけて農業や畜産のために開拓が行われましたが、厳しい自然に阻まれて断念しました。この広大な跡地に本来の自然を取り戻そうと、昭和52年(1977年)に始まったのが「しれとこ100平方メートル運動」です。

ゼロから始まった森づくり

100平方メートル運動は広大な開拓跡地に1本1本、木を植える前例のない取り組みです。その運動の初期、昭和55年(1980年)ごろに植樹されたのが針葉樹のアカエゾマツでした。荒れた土地でも育ちやすく、手に入りやすいため選ばれました。

林業で行う植樹をまねてまっすぐに植えられたアカエゾマツは、今では10メートルもの高さになりました。運動地で整然と並ぶ姿はゼロから始めた運動の“成長の証し”でもあります。
森づくりの中心的な役割を担っている「知床財団」の職員は、当時の思いをこう代弁しています。

「知床財団」自然復元係 松林良太係長
「人の手が入った土地をなんとか自然の形に戻したいと。まずは木をたくさん植えて、少しでも森の第一歩を作ろうとしたのだと思います」

厳しい自然との苦闘

ただ、運動はすべてが順調に進んだわけではありません。多様性のある森を目指して植えたシラカバなどの広葉樹は育ちませんでした。間近にそびえる山々から吹きおろす強く冷たい風が成長を妨げたのです。
そして、広葉樹がある森づくりの最大の障害になったのがエゾシカでした。1980年代中頃から増えすぎたシカが苗木や木の皮を食べてしまったのです。その結果、広葉樹が育たなかったところではササが一面に広がってしまいました。

運動地のところどころに広がるササ地は、厳しい自然と戦い苦悩した運動の姿を記憶にとどめています。

「知床財団」自然復元係 松林良太係長
「シカとの戦いがこの20年くらい知床では続いた。1万本、2万本の単位で最終的には食べられて無くなった。それも自然の力ではあるが、当時の皆さんは大変だったと思う」

未来につなぐ新たな挑戦

そして今、運動地では新しい動きが始まっています。
植樹されたアカエゾマツの間に1本の“道”が切り開かれています。日当たりをよくするために、木々を2列分、伐採したのです。

ことし5月、この場所にミズナラやハルニレなどの広葉樹の苗木が植えられました。大きく育った針葉樹を利用して、広葉樹の苗木を風から守ります。

運動が築き上げた成果を、次の世代の木が育つ糧にする取り組みです。

「知床財団」自然復元係 松林良太係長
「運動はまだ始まったばかり。本当のゴールは100年、200年先になる。今できることを1つずつ積み重ねて、それを世代を超えて引き継いでいくことが一番の仕事と思っている」

「しれとこ100平方メートル運動」の運動地では、これまでに46万本もの苗木が植えられてきました。時代に応じて模索を続けてきた運動地で木々は着実に成長し、未来へとつながっています。

(北見放送局・住田達 2020年8月26日放送)

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