NHK札幌放送局

~挑戦者たち~

ローカルフレンズ制作班

2022年1月27日(木)午後5時22分 更新

今週のテーマはラジオ。フレンズの山崎啓太郎さんが、お友達の龍田昌樹さん(水道工事会社の社長)・三ツ井瑞恵さん(主婦)とともに毎週江別の色んな場所へ赴いて“BRICK RADIO”というラジオを収録しています。3人の人脈をフルに使って江別に暮らす面白い人たちを訪ね歩き、これまで94回の放送を行ってきました。

BRICK RADIOは、「Apple Podcast」や「Spotify」などの配信サービスや、インターネットサイト「note」にアーカイブスがあり、お聴きいただくことができます。

ラジオが始まったきっかけは、新型コロナウイルスの拡大。もともとはパーティ好きな山崎さんたちは、定期的にBRICK PARTYというイベントを開いていました。普段は関わることがない警察官や学校の先生、農家、バーのマスターなど地元の人たちの交流をはかり、毎回盛況だったのですが、この状況下では人を集めることも出来なくなってしまいました。そんなとき、家にいても楽しめるラジオで地元の面白い人を紹介していこうということで、このBRICK RADIOがスタートしました。

未経験から始めたパーソナリティ

パーソナリティのひとりを務める三ツ井瑞恵さん。江別出身で普段は書店に勤める主婦の方です。人前で喋る仕事などは全くしてこなかったという三ツ井さん、なぜラジオに挑戦しようと思ったのか聞いてみました。

子育て中心の生活

三ツ井さんは2人の息子さんがいらっしゃいます。実は私・古元も兄がおりまして、男兄弟というものが母親にどんなひどい仕打ちをするのかはよく知っております。食事を出されても感謝しない、話しかけられても適当にあしらう、都合が悪いことはとりあえず母親のせいにし、分が悪くなると「うるせいばばあ」と言ってうやむやにする。

三ツ井さんに私の過去の悪行を伝えると「ウチもそんな感じ」と大きくうなずき、大変な苦労をされてきたのだなと実感しました。それでも「やっぱり自分の子どもはほっとけないのよね~」と語る三ツ井さん、全然関係ない私まで、思わず感謝の気持ちでいっぱいになりました。

そんな三ツ井さん、3~4年前、下の子がもう高校生になったとき、さすがに子どもから少し距離を置かなきゃなと考え、なにか自分で打ち込めるものを探し始めます。お友達と蔦屋書店でトークする企画を考えたり、お料理教室に通ってみたり。ところが、ちょうどそこでコロナが広がってしまいました。企画も実現出来ず、お料理教室も中止になり、やりたいことも出来ない、言いたいことも言えない、そんな世の中になってしまったのです。

子育てに注いでいたエネルギーをどう使っていこうかと思っていたタイミングで誘われたのが、このラジオでした。ラジオ好きの水道会社社長・龍田昌樹さんの「声がいいからやってよ」という誘いに「やってみようかな~」となんとなく思って、参加することになりました。
今では毎週色々な人とお話しするのが本当に楽しいらしく、早いものでもうすぐ100回というところまで続けてきました。
回を重ねるごとに反響も大きくなっていってるようで「ラジオに出たおかげでお客さんが来てくれた」「自分が出た回は何回も繰りかえし聴いている」と、すごく喜ばれているのだとか。ためになったねぇ~。

人気の珈琲店の2代目は実は…

滞在24日目、この日は豆工房・小林珈琲店さんでの収録でした。

珈琲好きの三ツ井さん、身を乗り出してコーヒー豆を見つめています。

お店へ向かう途中、私の車が雪道に埋まり、動けなくなるというトラブルが起きましたが、小林珈琲店のご家族の皆さま、ラジオ出演者の皆さま総出で救助していただき、何とか抜け出すことが出来ました。お友達の車を呼んで頂いたり、牽引ロープで引っ張って頂いたり、最後はマスター自ら、車の下の雪を全て掻き出してくれて、何とか抜け出すことができました。頭が上がりません。本当にありがとうございました。
雪道の怖さを改めて知りましたし、なにより、自分の車が4駆ではなく2駆だったという事実もこのとき初めて知りました。

それはさておき、ゲストだった小林珈琲店2代目、小林裕司さん。詳しくは放送でお伝えしますが、実は小林さんは珈琲を入れる以外にも、すごい才能を持っていらっしゃいます。こんな人が江別にいたのか、江別の懐の深さを実感しました。

ラジオ以外にも飛躍を続ける三ツ井さん

ラジオに毎週出演したり、その記事をSNSで発信したりしているうちに、なんとなく地域で知られるようになっていった三ツ井さん。ラジオがきっかけのひとつとなり、仕事の幅も広がっているようで、昨年にはタウン誌のweb記事を依頼され、建設会社で働く若者たちを取材したといいます。

「息子と同じぐらいの年の子たちが一生懸命働くのをみて、感動して泣いた」という三ツ井さん。自分のやりたいことをやっていても、結局子どものことを忘れられない様子ですが、思い切って始めたラジオが、聴く人にも、自分自身にもよい影響を与えています。

今回でローカルフレンズ滞在記 江別編は最終回ですが、改めて振り返ると、街作りだったり、ビール造りだったり、お芝居にラジオ、江別ってほんと挑戦者が多いですね。
自分も江別の人を見習って、ずっと先送りにしてきた虫歯の治療に一歩踏み出そうと思います。

そして、私の宿泊している大麻銀座商店街にも、若い挑戦者の姿がありました。
硬派な男たちの挑戦の一部始終です。

~番外編・大麻商店街の挑戦者たち~

…今年の江別は、いつもと違う冬となった。
道路脇に積み上げられた3m近い雪のかたまり。バスは遅れ、鉄道は動くことをやめた。
車も埋もれている。
誰もがこう思った「今年の冬は、雪が多い。」
しかし、そんな逆境のなか、極寒の商店街で物づくりに挑んだ男たちがいた。

1月中旬の江別市・大麻銀座商店街。宿泊している建物の窓からは、外に積もる大量の雪が見えた。年末から続く連日の吹雪で、3m近くまで積もった雪。こんな雪が積もってしまっては、我々人間といえども為す術はない。私は屋内でコタツに入り、横になっていた。外からは、吹きすさぶ風の音だけが聞こえていた。

コタツに入ってしばらくぼーっとしていると、外から奇妙な音が聞こえてきた。風の音に交じった「サクッ、サクッ」というテンポの良い音。時刻は午後8時30分過ぎ。「一体、なんの音なんだ?」不審に思って外に出た私の目に飛び込んできたのは、ニッポンの物づくりにかける、男たちの姿であった。

スコップを手に握り、何かに取り憑かれたかのように、無言で雪を掘り続ける2人の若者。男たちは言った。「雪がすごいので、せっかくなんで、かまくらを作ろうと思って」私の泊まるシェアハウスを管理している、櫛引康平と石塚竣也。共に27歳で大学からの同級生。それぞれ仕事をする傍ら、このシェアハウスの管理人にもなっていた。
普段はデスクでの作業がメインの2人が、一心不乱にスコップを振るっていた。

開始から1時間がたった。目の前に広がっていたのは、かつて「プロジェクトX 黒部ダム」の回で見た光景と同じであった。日本屈指の難工事となった黒部ダム同様、掘っては崩れを繰り返し、人間の侵入を拒む大麻銀座商店街の雪塊。あるとき、石塚くんが上に掛けた雪が、下で穴を掘る櫛引くんの頭上を襲った。
「もうやめた方がいいんじゃないか」。そんな言葉がのど元まで出かかっていた。
しかし、それでも等間隔にスコップを振り下ろし続ける2人。
しばらくすると、櫛引くんの口からこんな言葉が聞こえてきた。「いい感じに掘れてきましたね」。その一言が、状況が好転していることを伝えていた。

そして、そのときだった。目の前に信じられない光景が飛び込んできた。

突然、かまくらの脇でうずくまる石塚くん。システムエンジニアのお仕事の傍ら、プログラミング教室にも通う、勤勉な青年。日々の疲労がここで一気に出たのだろう、そう考えた。さすがにここは止めなければならない。年長者としての義務感が、襲った。しかしこのとき、石塚くんには、ある秘策があった。

彼の足下にあったのは、七輪。戸惑う私に、石塚くんは普段と変わらない落ち着いた口調でこう言った。「これで焼き肉をしましょう」。

櫛引くんが穴を掘り、石塚くんが焼き肉の準備をする。もう後に引くことは出来ない。

そして作業はいよいよ佳境に入る。屋根をしっかり補強し、なかにパイプ椅子を並べる。肉を焼けるスペースを確保するため、櫛引くんは屋根の微調整に入った。

開始から3時間あまり、ついにかまくらが完成した。

過酷な作業に、2人の腕や腰は限界に達していた。「鈍痛がしますね」そんなことを言いながらも、その顔はどこか晴れやかなのであった。深い雪が積もる日本の北の端、厳しい冬と戦うこの場所に、ニッポンの物づくりの姿があった。

再び雪が降り始めた午後11時。ついに肉が焼かれ始めた。カルビ、ジンギスカン、ホルモン。その味は、うまかった。つけダレが凍りそうになると、タレもつけずに次々と肉を口に運んだ。

このとき、2人の顔に初めて、笑顔が浮かんだ。
「雪国のノリですね。降ったらとことんそれを楽しむ」。
今はこの建物の管理人となり、なかなか無茶の出来なくなっていた。しかし、この夜だけは、あの頃の気持ちに戻ることができたという。

語り継ぐ人もなく。旅はまだ、終わらない。

2022年1月27日
(NHK札幌局 ディレクター古元幹也)



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