北海道安平町で、道の駅あびらD51ステーションの支配人をしている西嶋基さん。
今年5月、来場者200万人を達成した賑わいの場所で、町内外の交流・つながりを生み出すことに取り組んでいます。
「この町のために…」という言葉の背景には、ある縁が関係していました。
―生い立ちから教えてください
札幌生まれ、札幌育ち。最初は調理師学校で調理師を目指していたけど、早々に挫折というか、心の灯火が大きくならなかった。それから、建築関係で働いたり、数字が好きで簿記の勉強をして、経理事務として働いたこともあった。24、5歳の時に郵便局の試験を受けて、札幌市内の特定郵便局の窓口業務に10年間従事した。そこで初めて、お客さんと触れ合う楽しさを知った。
きっかけは郵便局時代の出会い
郵便局の接客では、簡易保険や四季折々のものを窓口でお勧めしていた。4、5名の職場だったので、お客さんにも可愛がってもらい、営業スキルを身につけていった。成果が数字に表れるので、やりがいがあって楽しかった。知識を増やすことで、お客さんに喜んでもらって、自分の満足にも繋がった。
ある時、近隣の郵便局に勤めていた妻と研修で知り合った。その妻の実家が、安平町早来でチーズを製造・販売する会社(以下、チーズ会社)を経営していた。子育てをしながら、共働きで頑張っていたが、義理の父親から「チーズ会社の経営に携わってほしい」と話があった。義理の姉兄もいるが、その当時は継手がいないということで、声をかけてもらった。
チーズのおかげで、まちをPRできた
タイミングですよね。35歳の時に、安平町の特産品であるチーズの継手がいないのは残念だと思ったし、自分の色々やってきた経験をつなぎ合わせれば、「できるかな、頑張りたいな」って思って、2008年に移住してきた。
チーズ会社では、10年弱ぐらい経営に携わりながら、チーズ作りから営業まで一通りをやらせてもらった。東京の百貨店(物産展)に行かせてもらったときには、役場の方々とも一緒にまちのPRをした。そういう縁もいただいて、行政の人と仲良くさせてもらった。
その後、義理の姉兄が戻ってきてくれたので、会社からは円満で離れたが、当時、あびら観光協会の理事をやっていて、道の駅オープンにあわせてメニューを考えたり、準備にも取り組んできた。

あるとき、道の駅の運営事務局を法人化することになって、事務局職員を募集することを知った。安平町の特産品や観光の魅力を高めることに実動で携われたら、今までの人生の流れが繋がっていくのかなと思って、僕も応募して、それで晴れて合格をいただいた。最初の1年目は事務局職員として、今年から2年目となり、支配人をしている。せっかく安平町に来たので、「町のためになれば…」という気持ちがあって、やりがいを持っている。

―支配人としてどんなことを
道の駅の運営や特産品、販促イベント、畑体験(農業)のイベント等を担当している。畑体験では、農家さんの協力のもと推進員さんに手伝ってもらい、とうきび、じゃがいも掘り、えだまめ、メロンの収穫体験をしている。参加者に試食してもらうと、みんな笑顔になって「美味しい」と言ってくれる。そういう体験型イベントをやっていることが、安平町の魅力の1つだと思う。道の駅に来て、安平町のことを知っていくと、「実は、こういうこともできるんだ」と新たな発見があると思う。

道の駅あびらD51ステーションに来たら、なんか面白い体験ができるし、美味しいものもあって、鉄道イベントなどもよくやっているということが、少しずつ浸透してきたと感じている。これから、イベントの回数を増やしたり、外国人旅行客にも来てもらったり、新しいことに取り組みながら、安平町の観光や情報発信の拠点としてより浸透していけばいいなと考えている。そして、私たち運営は、いい商品、いいスタッフでお客さんを迎え入れる、という感じですね。
大切にしていることを聞いてみた
関わる人ですね。お客さん、観光協会、道の駅、物産館のスタッフも、もちろんそうですよね。楽しく、やりがいを持って取り組む。出入りする業者さんにも、「安平町に道の駅があって良かったね」って思ってほしい。近江商人でよく言いますよね、三方よし。どれが優先というのではなく、やっぱり業者さん、地元の農家さんは、売れてなんぼだから、それには来場されるお客さんが何を求めているのかを、現場で吸い取って、業者さんにも求めていけるようにアンテナを張っていきたい。
業者さんとはよく話をするんですけど、「お客さんに渡るものだから、安全なもの、安心できるもので満足してもらいたいね」って。お客さんに喜んでほしくて、みんな頑張っている。「暇だったら、ちょっと行ってみよう。ここに来たら何か楽しいことがある」と思っていただけたら嬉しいです。

ご縁を大切にしながら
僕は、やってきたことを繋げて、肯定化したいんですよ(笑)そうすれば、結果良しになるじゃないですか。でも、きっとタイミングと縁っていうのがあると思う。観光協会に今こうしているのも縁というか…。チーズ会社を離れても、まちと関わってきたから、こうやって、繋がったんだなっていう想いもある。これから、事務局をやりながら、チーズ体験を開催してみたい。ニーズがあるのは間違いないので、楽しみながらやってみたいですね。また、気軽に寄ってください。(語り手:西嶋さん 聞き手:廣田)

