NHK札幌放送局

マイバッグ増えた?レジ袋の辞退率96%のお店も! シラベルカ #55

シラベルカ

2021年6月18日(金)午後5時39分 更新

お買い物で「レジ袋」をもらうこと、ずいぶん減ったのではないでしょうか? ある調査でレジ袋を辞退する人は31%から72%に急上昇したことがわかりました。さらにレジ袋の辞退率が96%というお店も。どうしてこんなに劇的に変わったのでしょうか。身近な変化の謎をひもとくと、「私たちの行動が変わるヒント」が見えてきました。 

「レジ袋をもらうのが恥ずかしい」

取材のきっかけは、こんな投稿からでした。

「買い物をしていて、マイバッグの人がとても多くなりました。その効果がわかるようなデータってありますか?」(札幌市・60代)

たしかに。

私たち取材チームのメンバーも、以前は常にレジ袋をもらっていました。けれど今はマイバッグを使うことが普通になりましたよね。

投稿者の中畑満理子さんにお会いしに行くと、行動だけでなく心境も変わったといいます。

「もともとエコ意識が高かったわけではないけれど、いまでは有料のレジ袋をもらうのが恥ずかしく感じるほどです」

今は主に3つのマイバッグの中から、その時々にあわせたものをもって楽しくお買い物をしているそうです。


さらばレジ袋! 「辞退派」が急増

「最近1週間以内に買物をした店舗でレジ袋をもらいましたか?」

そんな質問で環境省が全国2,100人に調査しています。

すると「もらっていない」と答えた人の割合は、
▼2020年3月は「31%」だったのに対し、
▼2020年11月には「72%」になっています。
(令和2年11月レジ袋使用状況に関するWEB調査)

この期間にあった大きな変化。それは「レジ袋の有料化」です。

日本は世界有数のプラスチックごみの排出国。その対策の一環で2020年7月からレジ袋が有料化しました。

その前後でここまで鮮明に人の行動は変わったのです。


「この店でレジ袋を見たことがないですね」

取材を進めていると、ちょっと目を引く数字に出会いました。

「レジ袋の辞退率96%を記録」。

そこに私たちの行動が変化したヒントが見つかるかもしれません。

やってきたのは北海道大学にある生活協同組合です。大学生が講義の合間に、飲み物や軽食などを買っていきます。見たところ、誰もがレジ袋をもらいません。

案内してくれた北大生協の担当者・加藤優弥さんから「目標としては2022年に99%です」と言われ、驚きました。

レジを観察していると・・・いくつか気になることがありました。

まずレジ袋が見えないレイアウトになっていること。

そして、お客さんが商品を渡しても、レジ袋についてまったく聞かれないことです。

お店の人に聞いてみました。

Q レジ袋ってどういう時に渡しているんですか?
 お客様が下さいと言われた時だけお渡ししています。
 要りますかっていうのも聞かないんですか?
 こちらからあえてお聞きしていません。

もう「もらわないのが普通」という設定なんですね。

利用している学生に聞いても、「もらわないのが当たり前」「このお店でレジ袋を見たことがない」という答え。


ちょっとしたことで人の行動は変わる

さて、興味深い実験があります。

・レジ袋が必要な方はカードを提示してください
・レジ袋が不要な方はカードを提示してください

このどちらが、レジ袋の削減に効果があると思いますか?

もちろん前者ですよね。
経済産業省がコンビニの協力を得て実験したところ、レジ袋の辞退率に大きく違いが出ました。

レジ袋が必要な方はカードを提示してください → 辞退率44%
レジ袋が不要な方はカードを提示してください → 辞退率24%
(経済産業省 ナッジを活用した庁舎内店舗におけるレジ袋削減の試行実験の結果)

つまり、お店がどのようにレジ袋のもらい方をデザインするか。それによって人の行動は大きく変わるのです。

北海道大学の生協でも、「レジ袋が見えるところにない」、「言わないともらえない」などのちょっとした仕組みが、利用者の行動を変えた可能性があります。

(北大生協の加藤優弥さん。マイバッグを新入生に配る取り組みも!)

さらに。

こうした行動の変化を「継続」するヒントも取材で明らかになりました。


リバウンドを防げ 継続のカギは「内発的動機付け」

「2、3年たってくると効果が弱まってきたり、リバウンドが起こったりすることが知られています・・・」

と切り出したのは、環境問題と社会心理の関係を研究する大沼進教授(北海道大学大学院)です

大沼教授は「1枚3円」や「カードを提示しないともらえない」といったやり方だけでは、早晩、効果が薄まり、リバウンドが起きる可能性があると考えています。

こうした賞罰や強制的な動機づけは「外発的動機づけ」と呼ばれています。 それに対して、人の内面から湧きおこるものが「内発的動機づけ」と呼ばれます。
この「内発的動機づけ」があれば、人の行動はリバウンドせず、継続すると指摘します。

しかも、外発的動機づけだけでは、特定の行動だけに効果が限定されてしまうそうです。

大沼進教授
「(外発的動機づけである)経済的なインセンティブは、ピンポイントに効果はあるけれど、ほかには効き目がないってことが知られているんですね。今回ならレジ袋ならレジ袋の削減だけに効き目があるというわけです。」
「小さな一歩として大事なんだけれども、レジ袋をやっつけて撲滅することが目的ではないので、社会全体のプラスチック削減にどうつなげるか。まだこれからです」

日本は、プラスチックごみの大国です。

一人当たりの排出量で、日本はアメリカに次いで世界2位(2014年)(国連環境計画報告書)。

年間にして850万トンもごみを生み出しています(2019年)(プラスチック循環利用協会)。

そのうち、レジ袋が占めるのは、全体の2.4%。およそ20万トンにすぎません。

大沼教授が「レジ袋をやっつけることが目的ではない」というのは、その意味です。

海洋生物への深刻な影響。マイクロプラスチックという人体への影響が未解明な存在。それらを考えると、レジ袋でとどまっているわけにはいきません。


量り売り店がはじめた「1%の動機づけ」

こうした中で、面白い仕組みを作った人に出会いました。
世界的なスキー場として有名なニセコにほど近い、倶知安町の「量り売り店」です。

このお店では、ドライフルーツから、シリアル。お米に調味料、洗剤まで、たくさんの商品を量り売りしています。
店主の小長井真樹さんは、オーストラリアのメルボルンで、環境に配慮した量り売り店を目にしたそう。こうしたお店が日本にもほしい、と2019年にオープンしました。

Pyram Organics & Plants 小長井真樹さん 
「プラスチックのパッケージに入っているお菓子が、さらに個別にプラスチックで包まれている。それが日本の当たり前ですよね」「空っぽになったビンとか容器をもってきてもらえれば、リフィル(詰め替え)できます」

今、「量り売り」は、商品の包装に使われているプラスチックを削減する点で、全国的に注目されています。大手コンビニチェーンやアウトドアショップも導入しています。

そして小長井さんは、「外発的動機づけ」だけでなく「内発的動機づけ」をも高める、ある仕掛けを導入しているのです。

私たちが商品を買ってお会計をお願いすると、

「1%値引きして・・・」

という嬉しい言葉。

自分で容器を持ってきた人には1%ぶん、安くなるのです。
この金銭的なインセンティブは、「外発的動機づけ」にあたります。

さらに。

小長井さんはその1%と同額を環境保全に取り組む団体に寄付しているのです。「あなたの行動が環境に貢献しています」ということを意識してもらうためです。

Pyram Organics & Plants 小長井真樹さん 
「ただ安くするだけじゃなくて環境にも貢献してるんですよっていう気持ちを生むことが大事かなって。そのために1%の割引と1%の寄付というかたちをとっています」

このお店の取り組みについて大沼進教授は、消費者や環境団体にとってはもちろん、事業者にとっても良い循環を作り出しているとみています。

大沼進教授
「量り売りのお店に来るお客さんは環境意識が高く、無駄なものを減らそうっていう人が多いですよね。彼らに対して、お店の売り上げを削ってでも環境団体に寄付していることがシンパシー、好意的な評価をもたらします。そしてあのお店いいね、とリピーターになる。これが大事なところです」

お財布に優しい取り組みを通じて、お店の利用者はだんだんと環境意識を高めていく。

そして「地球にも優しくなろう」と内発的動機づけにまで達した人は、レジ袋や容器を削減するだけでなく、さまざまな環境に配慮した行動をとるようになる。

彼らの心をガッチリつかんだお店は、事業を継続できるようになっていく、というわけです。

確かに私たちはマイバッグを持つようになり、レジ袋を削減しました。

でも、それはゴールではありません。

地球環境を守る行動をどうデザインし、それを内面化していくのか。とっても重要なところに立っているのだと、知りました。


(取材チーム)
千歳支局 記者 岡﨑琢真
「最近マイボトルを使い始めて、ペットボトルの飲み物をほとんど買わなくなりました。節約にもなって一石二鳥です!」

札幌局 ディレクター 大隅亮
「休日、量り売り店に子どもを連れて行ったら大喜びでした。節約にはなりませんが、子どものうちにエコを体験しておくと良いかも!?」

みなさんの周りでもプラスチックゴミを減らす工夫を実践している取り組みがありましたら、シラベルカの投稿ページにぜひご投稿ください。番組サイトなどでご紹介したいと思います。
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