NHK札幌放送局

Do! | #09 Koyanagi Reika

札幌局広報スタッフ

2022年1月31日(月)午後4時50分 更新

なぜその番組を作ったのか?コンテンツに込めたメッセージとは?NHK北海道の職員、作り手たちの情熱や想いに迫るインタビューシリーズ「Do!」。 第9回に登場するのは函館局の小柳記者。日々の取材で大切にしていることを聞きました。

〔Photo By あらい あん〕 
〔聞き手 富浦 麻穂(NHK札幌拠点放送局 広報)〕

小柳 玲華 -Koyanagi Reika-
2020年入局。函館局放送部記者。主に事件・事故や災害などの取材を担当。趣味は北海道のスイーツを食べること。


<目次>
1.学生時代の経験がきっかけで記者を志す
2. “主観”と“客観”の狭間で感じる、同じ目線に立つことの難しさ
3. 一つでも多くの声を届けたい


1.学生時代の経験がきっかけで記者を志す


――初めに、今どんな仕事を担当しているか教えてください。

私は記者として日々取材にあたっています。警察や災害などを担当しているので、事件や交通事故の取材のほか新型コロナウイルスや福祉関連の取材にも取り組んでいます。

――すごく幅広いですね。地域局の記者は多岐にわたる分野を担当することが多いんですか?

地域局に限らず、1年目、2年目は警察や司法などの取材を担当することが多いと思います。私の場合は入局した当初から新型コロナウイルスの感染が拡大していた状況だったので、新型コロナウイルス関連の取材もずっと担当してきました。2年目になって、福祉や災害など更に色々な取材を任せてもらえるようになりました。

――自分でテーマを決めて取材することもあるんですか?

そうですね。事件や事故の取材だけでなく、自分で関心のあるテーマの取材も行います。福祉にはもともと関心があったので、福祉という観点で函館を見た時にどんな課題があるんだろうと気になって、現在取材を進めているところです。

――福祉にもともと関心があったというのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

学生時代、マスコミュニケーション論やジャーナリズムを勉強していたので日々ニュースに触れる機会が多くて、そうした中で子どもの貧困などの問題に関心をもつようになりました。その時から「自分が記者になったらこういう伝え方をしたいな」とか「この分野の取材をしたい」という気持ちがずっとありました。


――学生時代から記者になろうと思っていたんですね。記者と言っても新聞社とテレビ局で違うと思いますが、進路を決めるときに迷いませんでしたか?

私の場合は、はじめは新聞やテレビに限らず「記者」志望でした。長崎県の五島列島出身なんですけど、毎年夏になると台風が直撃して、海がしけて船が出せなくなって新聞が届かないことがあるんです。だからいつもテレビで台風のニュースを見ていて、マイクを持って情報を伝えるリポーターの姿に憧れを抱いたのが、テレビ局の記者に関心を持った最初のきっかけです。
その当時はまだ漠然としていたんですけど、高校生の頃に「ハゲワシと少女」という一枚の写真を見る機会があって。スーダンで撮影された写真で、小さな女の子がうつむいている後ろでハゲワシがその少女を狙っているんです。すごく印象的な写真で衝撃を受けました。自分の知らない遠い場所で実際に戦争や飢餓の問題が起きているんだと驚いた一方で、その写真が後に報道と倫理という問題で議論になったことを知りました。それから「報道の力って何だろう」とか「報道の意義って何だろう」と考える中で、やっぱり私は記者になりたいなと思って今があります。

――学生時代の体験が今に繋がっているんですね。

就職活動では記者職しか受けませんでした。

――記者一本だったんですか。じゃあ夢が叶ったわけですね。

そうなんです。念願叶って記者になれました。

――出身は長崎で、大学も地元ですか?

大学は東京です。長崎、東京、北海道と北上してきました(笑)。希望して北海道に来たんですけど。

――なぜ北海道配属を希望したんですか?

小さい時に見たドラマ「北の国から」の印象が強くて、雪国に対する憧れがあったんです。それと北海道は広いので地域ごとにそれぞれ課題があることから、幅広いテーマの取材に取り組めるのではと思い、北海道を希望しました。


――実際に函館に住んでみてどうですか?

函館には初めて来たのですが、ある調査で“魅力度ナンバーワンの町”に選ばれていたので、そうしたイメージもあって以前から訪れてみたい場所の一つでした。実際に住んでみると市電や夜景、海に囲まれた異国情緒あふれる町というところが長崎とすごく似ているなぁと感じました。あと住んでみて初めて冬の厳しさを思い知りました(笑)。

――長崎出身だと北海道の冬って衝撃的ですよね。

1年目は本当に大変で。寒いし滑るし雪かきも大変だし……こんなに冬が長く厳しいとは思いませんでした。だからこそ北海道に来てからは春が待ち遠しいと感じるようになりました。春先にカラフルな花が咲いているのを見るとすごく心が癒されて、四季がはっきりしているのは北海道ならではの自然の豊かさだなと思います。

――いつか地元・長崎の取材をしてみたいという思いはありますか?

NHK入局前はどちらかというと地元から離れた知らない土地を取材したいと思っていたんですけど、函館に来てからは地元を取材してみたいなという思いも少し芽生えてきました。
こちらに来てから知ったのですが、函館で有名なレストランがあって、その店名が実は長崎の地名に由来しているそうなんです。遠く離れていてもそういう不思議な繋がりってあるんだなと驚きました。今後も何か長崎とのつながりを感じられるような取材をする機会があれば良いなと思います。


2. “主観”と“客観”の狭間で感じる、同じ目線に立つことの難しさ


――今までで印象に残っている取材はありますか?

色々ありすぎて一つに絞れないんですけど、1年目の時に担当した刑事一課長の取材や障害者施設の虐待事件、あとは交通事故の被害者の方への取材は特に印象に残っています。

――刑事一課長の取材は、具体的にはどういうところが印象に残っていますか?

函館市の警察署で、殺人や放火などの凶悪事件を担当する刑事一課の課長を務める女性を取材しました。男性社会の中で努力して今のポジションについている方で、お話を聞いていて自分と少し重ね合わせてしまうことがあって。私も普段男性に囲まれて仕事をすることが多いので、同じような状況で頑張っていらっしゃる姿を見て、取材を通して自分自身が励まされました。
その方はお子さんもいてすごく家庭も大事にされていますし、私もこういう女性になりたいと思える印象深い取材でした。

■「0.2%の世界に挑む」

――この記事は私もとても記憶に残っています。警察は男性社会というイメージが強かったのですが、こういう方もいるんだと初めて知りました。

北海道警察の警察官全体で女性の管理職が占める割合はわずか0.2%(2020年10月時点)とかなり少ないんです。その方は初めは男性と同じようにネクタイをして仕事をしていたのですが、次第に見た目ではなく中身が大事なのだと考え方が変わっていったとおっしゃっていました。男性に負けないぞという意思表示というか、心を強く持ってらっしゃる姿が素晴らしいなと思いました。

――小柳さんもそうした状況で仕事をする中で、自分なりの強みを持ちたいといった気持ちはありますか?

そうですね。もちろん記者の仕事も性別で分けられるものではないですが、女性特有の内容、特に出産などに関する取材の時には、女性ならではの視点を生かせないかなといつも考えています。


――障害者施設の虐待事件では、取材後記で「想像しながら取材する」と書かれていましたね。これは具体的にはどういうことでしょう?

この事件を取材した時、障害のあるお子さんを持つ保護者の方に話を聞いたんですけど、「あなたも障害のある子どもがいたらわかる」と言われたことがあって、同じ状況で物事を見ることができない難しさを感じました。
当時はできるだけ多くの人に話を聞いて、具体的に想像することを意識しながら取材にあたったことを覚えています。同じ立場にはなれないからこそ、たくさん材料を集めることで相手の発言を理解できるように想像力を働かせました。

■「繰り返された暴行 障害者施設で何が」

――辛い思いをしている人に話を聞いても、なかなか答えてもらえないこともあるのではないですか?

限られた時間の中でいかに本音を引き出すかという難しさは常に感じています。質問を投げかけてすぐに本音が出てくるわけではなくて、取材が終わってからぽろっと本音がでてきたり、カメラの電源を切った後で「実は……」という話が出てきたりすることが多くて。そういう本音をいかに引き出すかが課題だなと感じています。

――本音を引き出すために意識していることはありますか?

私の場合は、直接会いに行くことを意識しています。今は新型コロナウイルスの影響で電話取材やリモートインタビューをする機会が多いのですが、そういう状況下だからこそ直接会って話を聞くことの大切さを感じています。相手が何を伝えたいのか、表情だったり声のトーンだったり、直接見たり聞いたりする中で相手の想いを感じ取るということを意識して取材にあたっています。
他にも、長くお付き合いする中で話してくれることもあるので、一度話を聞いて終わりではなく継続して取材することも大切にしています。


――記者の仕事って感情の切り替えが難しそうですよね。相手の話に入り込みすぎて引きずってしまいそうというか……。

「どういう思いで今の発言をされたのかな」と考えながら話を聞いていると感情移入してしまうことが多くて、そのあたりのバランスはなかなか難しいなと感じます。問題の本質を伝えるために客観的な視点を忘れないよう意識しているのですが、正直それが上手くできずに引きずってしまう時もあって……。そういう時は、記者になる前にある人から頂いた”Warm Heart, Cool Brain”という言葉を思い出すようにしています。

――”Warm Heart, Cool Brain”. 印象的な言葉ですね。

学生時代に現役の記者から聞いた言葉です。日本語に訳すと「心は寄り添っていても、頭の中は冷静に」という意味です。その記者の方に「取材していて感情移入することはないんですか」と聞いたことがあるのですが、その方はこの言葉を意識して取材にあたっているとおっしゃっていました。当時は抽象的にしか理解できなかった言葉が、今こうして実際に現場を取材してみてわかるようになりました。


3. 一つでも多くの声を届けたい


――同じニュースを出すのでも、映像とWEBで伝え方が異なる部分はあるのでしょうか?

映像の場合は放送時間が限られているため、一から十まで詰め込んでしまうと何を伝えたいのかぼやけてしまうのでポイントを絞って伝えなければなりませんが、WEBの場合はそれが全部盛り込めるという違いがあります。あとリポートだとなかなか自分の思いは表現しづらいですが、WEB記事だと主観も交えて多角的に伝えられるのが魅力だと感じます。

――では今後はWEBにも力を入れて発信していこうと?

そうですね。実は2022年1月に出した「一緒に生まれて、一緒に亡くなった2人」という記事は、あえてWEBをメインに発信したんです。

■「一緒に生まれて、一緒に亡くなった2人」

――えっ。そうなんですか?

WEBをメインに発信するというのは私も初めてだったんですが、実際にやってみるとこういう伝え方もあるのかと新たな気づきがありました。WEBだと撮影も執筆も全て自分一人で完結できるので自由度が高くて、色々な原稿が書けるんじゃないかなと思っています。

――そういうパターンもあるんですね。最初からWEBをメインに出そうと決めていたんですか?

 きっかけとなるニュースは最初はテレビで放送したんですが、取材を進める中で、伝えたい要素がありすぎてニュースだけで出すのはもったいないと思って上司に相談したんです。すると「だったらWEBでやってみたら良いんじゃない?」と言われて。「WEBだったら思う存分書きたい要素が書けるよ」とアドバイスをもらって今回のような形になりました。


――なるほど。確かにWEBで時間をかけて読むからこそ、事故当時の状況やご遺族の想いが伝わってきて非常に考えさせられました。小柳さんはこれまで様々な記事を書かれていますが、記者になる前から文章を書く機会は多かったのですか?

記者になるのが目標だったので、そのための対策というか、学生時代にジャーナリズムのゼミに入っていました。授業で実際に記者の方から書き方をレクチャーしてもらう機会があって、そういう経験も生きているのかもしれません。

――記者になりたいと思ってNHKに入局して、ギャップはないですか?

今のところギャップは感じていません。想像していた仕事ができているかなと思います。今はやりたいことが多すぎて時間が足りないのが悩みです(笑)。

――やりたいことというのは「こういう取材がしてみたい」ということ?

そうです。本来の担当の取材がおろそかにならないようにしながら、あれもしたいこれもしたいと悩むことが多いです。

――取材したいことがありすぎるってすごいですね。そういう“取材のネタ”ってどうやって発掘してるんですか?

子どもの虐待や貧困など、もともと関心のあるテーマについて関係者に話を聞くこともあれば、日々の取材の中で見つかることもあります。例えば困窮している学生を対象にお弁当を配る活動をしている人に取材をして、なぜそういう活動をしているのか聞いてみると、コロナ禍で学生がバイトがなくて困っているという問題の本質が見えてきたり。一つの取材を掘り下げていくとだんだんそこから広がっていくという感じです。

――具体的に、今取材してみたいテーマはありますか?

うーん……なかなか絞るのが難しいのですが、特に関心があるテーマが二つあって、一つはヤングケアラーの取材です。本人だけじゃなく家族が社会から孤立しているというケースもあったりするので、そうした実態を伝えることで周囲がヤングケアラーの存在に少しでも気づきやすくなったり、セーフティーネットからそうした人たちが漏れないように、報道を通じて支援の輪が広がるように取材していきたいなと思います。
もう一つは地域医療の取材です。長崎は離島が多くて地域医療のネットワークが構築されているんですけど、北海道も面積が広い分交通アクセスが不便な地域があるので、そういう地域ではどんな課題があってどういう取り組みをしているのか興味があります。道南には奥尻島があるので、島の医療がどういう状況なのか取材してみたいと思っています。


――記者になって良かったと思うことは何でしょう?

色々な人に会って話を聞けることですね。毎日が初めての連続で、それが新鮮で刺激的で楽しいです。

――毎日が初めましてというのは、記者ならではかもしれませんね。

取材先で出会った人と一度きりでなく長期的に付き合う中で、その後も声をかけてもらえるようになったりとか、そういうのはすごく嬉しいです。記者の仕事は本当に人とのつながりが大切だなと感じます。

――初めて会う人と話したり関係を築くことは、昔から得意な方ですか?

いやぁ得意じゃなかったです(笑)。この1年、2年くらいで少しずつ慣れてきました。毎日様々な人に会う環境に置かれて、だんだん変わっていったという感じです。

――意外でした。記者って人と話す機会が多いので、もともとそういうのが得意な人が多いのかと。

アクティブな人が多いですよね。でも私は違います(笑)。

――記者とひと口に言っても様々なタイプの人がいるんですね。「こういう記者になりたい」という理想像はありますか?

具体的に思い浮かぶ方は何人かいます。特に女性記者で活躍されている方を見ると、ロールモデルとして「こういう風になりたい」と憧れますね。


――その方たちに共通する部分って何だと思いますか?

一つの問題を深堀りして伝えていたり、一生懸命取材する姿とかももちろんそうですけど……共通しているのは人間性ですかね。相談に乗ってくれたり面倒を見てくれたり、人として温かいものを持っている。「人として魅力的な人」というのが共通している部分だと思います。記者である前に一人の人間なので、そういうところはすごく素敵だなと感じます。

――最後に、今後の目標を教えてください。

自分が担当している取材をできるだけ多く発信していきたいです。取材したいと思って着手したもののまだ形になっていないものがあるので、取材させて頂いた方たちの声を少しでも多く発信できるように頑張っていきたいと思います。


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