日本最北のワイン用ブドウの産地を目指して試験栽培を続けている宗谷地方の中頓別町で10月2日、ブドウの収穫会が行われました。ブドウは去年に続いてワイン用の目安とされる糖度に達し、町は来年度から本格的に栽培を始める方針です。(取材 稚内支局 山川信彰)
ブドウ試験栽培“上々の出来” 本格的な栽培へ
中頓別町では地域おこしを目的に5年前からワイン用のブドウの試験栽培を始め、2年前に初めて成功し、ことしは2か所の農場で3つの品種のブドウを栽培しました。
栽培されたのは「山幸」「清舞」「清見」の3つの品種で、2日の収穫会では地元の町民およそ20人がひとつひとつ丁寧に収穫しました。

収穫されたのは3つの品種あわせて21キロで、このうち寒さに強いという「山幸」と「清舞」はワイン用の目安とされる糖度18%を超え、上々の出来でした。
町は来年度、農園を新たに整備し、4年後までに「山幸」と「清舞」を中心にあわせて1980本の苗木を植え、本格的なブドウの栽培を始めることにしています。
そして6年後には外部の業者に委託し、2000リットル、フルボトルで2600本分余りのワインの生産を目指すことにしています。

道によりますと、ワイン用のブドウは今のところ、名寄市が日本で最北の生産地ですが、90キロ北に位置する中頓別町で本格的に生産が始まれば日本最北の生産地になるということです。
2日は収穫したブドウを使った調理会も開催され、家族連れなどがブドウから果汁のみを抽出したデザート用のソース作りを楽しんでいました。
小学5年生の女子児童
「いろいろな味のブドウがあって驚きました。10年後に20歳になるので、将来、おいしいワインが飲めるかなって想像すると楽しみです」

ブドウ3品種の特徴・糖度は
中頓別町によりますと、ことし収穫されたワイン用のブドウは、十勝地方の池田町のワイナリーから3つの品種の苗木を購入して育てたものだということです。
3つの品種のうち「山幸」と「清舞」はいずれも寒さに強く、糖度が高く甘みがあり、「山幸」は病害にも強いのが特徴です。
「清見」は上品な甘さと少ない酸味が特徴だということです。
ことし収穫されたブドウの平均糖度は、「山幸」が19.9%、「清舞」が19.2%、「清見」が17.8%で、ワイン製造の目安とされる18%を3つの品種のうち2つが上回る結果となりました。
道内でのワイン用ブドウの栽培は5月から6月にかけて発生する遅霜への対策が課題ですが、中頓別町では木の根元を不織布で巻いて、近くでまきをたいて火を起こし空気を循環させることで霜を減らし、栽培に成功したということです。
中頓別町産業課 平中敏志課長
「無謀なチャレンジと見られたこともありましたが、少しずつ町民の方に興味を持っていただけるようになってきたと思います。失敗や成功、思考錯誤の繰り返しが続きますが、長い期間をかけてやっていくことで、新たな町づくりにつながればいいなと思います」

一方、池田町ブドウ・ブドウ酒研究所は、中頓別町にワイン用ブドウの苗木を提供し、栽培方法の相談にも応じてきました。
池田町ブドウ・ブドウ酒研究所 佐野寛所長
「最初はかなり寒い地域での栽培になるので驚きましたが、地域おこしにつなげたい、産業として発展させたいという強い思いが伝わってきたので協力してきました。同じ品種のブドウを育ててもワイナリーによってワインの味は変わります。ブドウの育て方や収穫量など栽培の要素もワインの味に大きく関わってきます。これからは地域に根ざした活動で北海道のワインツーリズムの一角を最北端で担っていただきたい」

課題乗り越え道内ワインの人気拡大を
道の食産業振興課によりますと、道内には、後志や上川地方を中心にあわせて53か所のワイナリーがあります。
このうち道北・オホーツク地方には8か所のワイナリーがあり、北海道で最も北にあるのは名寄市だということです。

道内では令和元年度にワイン用ブドウが1537トン栽培されていて、ワインの生産量は全国で5番目に多い3455キロリットルです。
道の食産業振興課は「寒い地域になればなるほどブドウの収穫量が少なくなってしまうという課題があるが、この課題を乗り越えて地域の魅力あふれるワインの開発に成功すれば、さらに道内ワインの人気が広がっていくのではないか」と話しています。


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