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前回は、物忘れが目立たない認知症、いわば「隠れ認知症」の存在をお伝えしました。
この「隠れ認知症」実は少し生活習慣を変えるだけで改善する可能性があることが、研究でわかってきました。
(帯広放送局記者 辻脇匡郎)
アルツハイマー病と認知症は違う!
今回も話を聞いたのは、埼玉県の熊谷総合病院と、帯広市の北斗病院に所属する鴫原良仁医師。
認知症の研究をしています。
鴫原医師は、認知症の症状が悪化するのは、ふだんの生活習慣が大きく関わっていると言います。
鴫原良仁医師
「生活環境は頭の働きにすごく影響するんです。筋肉と一緒ですよ。運動しないと筋肉が弱っちゃうでしょ。頭も使わなければ弱っちゃうんですよ。ですから家に閉じこもって何となく日々過ごしていると、どうしても弱ってしまいますよね。アルツハイマー病みたいな脳の病気があって認知症が起きるっていうのはたしかに事実なんですけど、その間に大事な“生活”っていうのが入ってるんですよ。アルツハイマー病は残念ながら今すぐにはすごくよくすることはできないけど、アルツハイマー病に“生活”が加わって認知症になるので、生活を変えてやれば脳の症状は結構よくなります」

約4割が認知症改善!
認知症は改善するー。
このことは、データからも裏付けされてきています。
こちらは、鴫原医師が勤務する、熊谷総合病院のものわすれ外来に来た患者、26人のデータです。
初診から2回目の受診までの半年ほどの間、薬を使わずに生活習慣を変えた人の認知機能がどうなったかを表しています。
変わらなかった人や悪化した人もいますが、4割ほどの人は認知機能が改善しています。

鴫原良仁医師
「薬を使わないで生活を変えた方で、半分まではいかないんですけども、半分弱の方は少し認知機能がよくなっています。残念ながら、認知症が治る、とまでいうのはちょっと大げさ過ぎると思います。そこまでではないですけれども、生活習慣を変えることで少し認知機能がよくなるっていうこともごくごくよくある話です」
改善につながる生活習慣とは?
では、生活習慣をどう変えればいいのでしょうか。
鴫原医師が教えてくれたのは、こちらの8つのことです。

外出をすること、人と交流すること、趣味を楽しむことなど、ごくごく当たり前の内容に見えます。
こうした当たり前のことを続けることで、認知症が改善する可能性が上がると鴫原医師は言います。
鴫原良仁医師
「家に閉じこもって刺激がない生活って、どうしても頭の働きを弱らせてしまうんですね。体を動かさないと筋肉が落ちちゃうじゃないですか。それと同じで、1人で家にこもっているとどうしても頭の働きが弱くなってしまいます。もちろん3密回避は大事なことです。3密は回避しなければいけないけど、きっかけを見て、できるだけ外出するのが大事です。何か特別な運動しなきゃいけないわけじゃないんですよ。例えばお散歩なんかすごくいい運動だと思います。ゲートボールとかされている方もいらっしゃいます。そういうものでもいいです。草むしりだっていいって言われてますし、結構言われているのが、孫と遊ぶっていうのがね、いい運動になるということも言われます。そんなささいなことでもいいんですよ。そういうことで体を動かすことですね」

そして、外出することや運動することに加えて、持病をしっかり治療することも重要だと指摘します。
鴫原良仁医師
「重要な要素の1つに“血管が健康である”っていうのがあるんですね。なぜかっていうと、頭に血が行かないと頭が働かないでしょう?だから血管が元気だって大事なことなんですよ。高血圧も糖尿病も、頭も痛くなるわけじゃないし、せきが出るわけでもないんですけど、血管が傷むんですよ。血管が健康でないと脳が弱っちゃうので、やっぱり持病を治療するって大事なんですね。やっぱり治療する目的っていうのは幸せに生きることだと思います。そのためには心躍らなきゃいけない。そのためにはふだんから心躍る生活をしていただくということが一番大切なんじゃないかなと思います」
この隠れ認知症、まだまだ研究途中で、これから新たにわかることもありそうです。
ふだんの生活で「何かおかしいな」と感じたら身近な医師に相談すること、そして今回紹介した8つの生活習慣を意識すること。
こうしたことを心がけて、心躍る生活をいつまでも続けられるようにしていきましょう!
私たちは介護現場の課題やその解決策について、道東の皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
介護についてあなたが感じている身近な悩みや困りごとなど、皆さんの声もぜひお寄せください。

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