去年10月の水際対策の大幅緩和以降、北海道を訪れる外国人観光客の数は回復傾向にあります。
その一方で、懸念されるのが外国人ドライバーの交通事故です。1月10日、上富良野町では外国人家族4人が乗ったレンタカーがダンプカーと衝突し、母親と赤ちゃんが死亡しました。
今後、外国人観光客はますます増えていくと見込まれることから、警察は日本と海外の道路標識の違いなどを伝え、安全運転を呼びかけています。
(旭川放送局 海野律人)
再び北海道に外国人観光客が
観光地として人気が高い北海道。出入国在留管理庁によりますと、2022年12月、新千歳空港から入国した外国人はおよそ10万5000人と、新型コロナの感染拡大前、2019年の同じ月と比べて6割ほどに回復しています。

広大で景色が美しい北海道で観光客の“足”として人気なのがレンタカーです。

道北地方に15店舗を構えるレンタカー会社の「トヨタレンタリース旭川」によりますと、1月1日から27日までの外国人のレンタカー利用件数は369件。新型コロナの感染拡大前の2020年1月の154件をすでに上回っています。会社の担当者は「需要の急増を実感している。インバウンドが戻ってきているのは間違いないと思う」と話しています。
楽しい家族旅行が一転… 母娘2人死亡
こうしたなか、外国人観光客による交通事故も起きています。1月10日、上富良野町で外国人家族4人が乗ったレンタカーとダンプカーが衝突し、母親と生後4か月の女の子が亡くなりました。

事故の詳しい原因は分かっていませんが、現場は道道と町道が交わる信号機のない交差点。ダンプカーが走っていた道道が優先道路で、レンタカー側の町道には一時停止の標識がありました。
そもそも北海道は外国人観光客の交通事故が多い場所です。交通事故総合分析センターによりますと、新型コロナの感染拡大前、2018年までの5年間に外国人観光客が運転するレンタカーの事故は全国で330件。そのうち2割以上が北海道で起きています。
訪日外国人のレンタカー事故件数
(2014年~2018年)
沖縄県 189件(57.3%)
北海道 72件(21.8%)
全国 330件
(交通事故総合分析センター調べ)
交通事故総合分析センターの西田泰特別研究員は「事故の背景には交通ルールの違いがある」と指摘しています。
交通事故総合分析センター 西田泰特別研究員
「外国人ドライバーの場合、信号機のない交差点で優先道路がどちらか分からず進入して事故を起こすケースが多い。また、交通標識に書かれている『とまれ』など文字の意味が分からないので、一時停止をせずに事故につながる割合も高い」

悲惨な事故を防げ 警察が観光地で交通ルール啓発
悲惨な事故を防ごうと、警察は旭川市の観光名所・旭山動物園をレンタカーで訪れた外国人観光客に安全運転を呼びかけました。

啓発のチラシには、日本と海外の道路標識の違いや、道路が凍結しやすい場所などが英語で説明されています。
台湾から訪れた観光客
「雪道の運転は初めてで不安もあります。北海道で外国人ドライバーの事故が起きたので、ゆっくり走るように心がけたいです」
旭川東警察署によりますと、外国人が関係する交通事故はここ2年、感染拡大の影響でほとんどありませんでしたが、この冬のシーズンは1月下旬までに旭川市の一部や美瑛町などでおよそ30件発生しているということです。
旭川東警察署 三⻆卓司 交通1課長
「警察として警戒を強めている。日本の交通ルールに慣れていない人がいるので、このような啓発を通して理解してもらうことが重要だと考えている」

有効な対策は
警察のほかにレンタカー会社でも、車を貸し出す際に運転の注意点を英語や中国語など多言語で説明していますが、専門家は「さらに一歩踏み込んだ対策が必要だ」としています。
交通事故総合分析センター 西田泰特別研究員
「外国人ドライバーの事故を分析すると、脇見運転や漫然運転といった不注意が原因のケースは少ない。しっかりと周囲に注意をして運転している。原因を交通標識の意味が分からないなどルールの理解不足と考えた場合、たとえば、外国人ドライバーの事故が多い地点に近づいた際に、カーナビで注意喚起できるようにすれば有効な対策のひとつになるのではないか」
2023年2月7日

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