NHK札幌放送局

コロナ禍で急増!? 国際ロマンス詐欺

ほっとニュースweb

2021年12月23日(木)午後6時24分 更新

インターネットで恋の相手を気軽に探せるようになった現代。でも、メッセージのやり取りだけで関係を深めた相手が、そもそも実在しない人物だったとしたら・・・。 若者を中心に普及が進んでいる「マッチングアプリ」が悪用され、外国人を名乗る相手から現金をだまし取られる詐欺被害がいま相次いでいます。“国際ロマンス詐欺”とも呼ばれるその手口とはいったいどのようなものなのでしょうか。    

忍び寄る魔の手

北海道内の金融機関で働く40代のヒトミさん(仮名)は去年、マッチングアプリで知り合った人物に暗号資産(仮想通貨)のビットコイン、およそ400万円分をだまし取られました。

「当時はアプリを始めてから1週間くらいたった頃でしたが、同世代の人からは『イイね』の返事がありませんでした。アプリを使うのをやめようとした時、その人物から『イイね』が来たので連絡をとってみようと思ったんです」(ヒトミさん)

アプローチしてきた相手は、台湾で輸出業を営んでいること、それにヒトミさんと同じ40代だと自己紹介しました。プロフィール画像にはさわやかな笑顔をみせるアジア系の男性が写っていました。また、タワーマンションから撮影したとみられる夜景を投稿するなど、経済的に余裕のある暮らしぶりをアピールしていました。

ヒトミさんは同じ年代ということに親近感を抱き、マッチングアプリとは別のSNSの連絡先を交換しました。その後はネットの翻訳機能を使って、メッセージのやり取りを続けました。初めは互いの近況報告が中心でしたが、しだいに、仕事に追われるヒトミさんへの気遣いや愛情表現の言葉が増えていったといいます。

ここにあるのは、実際にやり取りされたメッセージの抜粋です。

「相手の男性からは何度も『結婚したい』というメッセージをもらいました。ほかにも『あなたは私の人生を共にしてくれる女性です』とか、『君と出会えてよかった』と言われたら、それはうれしいですよね」(ヒトミさん)

もともと結婚願望があったヒトミさんは、少しずつ、この台湾の男性と暮らす未来像を思い浮かべるようになっていました。

卑劣! 結婚を“えさ”に

そんなやさき、相手から「結婚後の2人の生活資金を貯めよう」というメッセージが届きました。暗号資産を使った投資をしないかという誘いでした。台湾の男性はみずからもその投資によって利益を上げているかのような説明をしました。

当初、ヒトミさんは何度もその誘いを断りました。しかし相手は「超低金利の日本では貯金をしても利益が出ない」とか「暗号資産は正しく投資すれば、安定的にお金を稼ぐことができる」などと執ように誘います。むげに断ると2人の交際にも悪影響が出ると考え、5万円分のビットコインを購入したということです。

紹介された投資サイトで取引をしたところ、すぐに利益が出たと知らされました。それですっかり信用してしまい、その後も15万円分、100万円分と立て続けに追加購入に応じました。

ところが、このあと事態が急転します。

投資サイトから「あなたの口座がマネーロンダリングに使われた疑いがもたれ、金融庁の調査に協力するため口座を凍結した」と一方的に通告を受けたのです。あわせて送りつけられた金融庁をかたる通知文書には「凍結を解除するには、口座にある暗号資産の残高と同額分を保証金として支払う必要がある」と書かれていました。

突然のことに驚いたヒトミさんは、台湾の男性に相談しました。すると相手からは「自分も同じ目に遭ったが、保証金を振り込んだら口座は元に戻った」などと支払うよう勧められ、そのことばに従ってしまいました。

「実際に金融庁に電話で確認したところ『詐欺の可能性がある』と言われました。ただ、投資サイトのことは怪しいと思っていても台湾の男性のことは信じていたので、結局、言われるままに残高と同じ金額を送ってしまいました」(ヒトミさん)

ヒトミさんはその後、家族や警察から説得を受けてようやく詐欺被害に気づくことができましたが、それまでに振り込んだ暗号資産はすでに合わせて400万円分を超えていました。

調べてみると、投資サイトは詐欺のために精巧につくられたニセモノで、台湾の男性も他人の顔写真を無断で使った正体不明の人物とわかりました。

「それまで貯めてきたお金が全部消えてしまい、すごく悲しかったです。でも、それ以上に、毎日メッセージをやりとりしていた台湾の男性が詐欺師で、最初から私をだますつもりで近づいてきていたこと、私にかけてくれた優しい言葉も結局はお金を引き出すためのうそだったということの方がショックでした」(ヒトミさん)

コロナ禍での被害急増 なぜ?

ネットを悪用した「国際ロマンス詐欺」、実はそんなに新しい手口ではありません。過去の報道などによりますと、2011年ごろにはすでに確認されていました。しかし、その被害件数はここにきて急増しているようです。

国民生活センターなどのまとめでは、マッチングアプリや婚活サイトを入り口にした国をまたぐ投資詐欺の相談件数は、新型コロナの感染拡大と時を同じくするように昨年度、84件に急増しました。さらに今年度は11月末の時点ですでに166件と、ここ2年の間に30倍以上に増えています。

だます側が実際に海外にいるかどうかは分かりません。ただ、国際恋愛を装えば、今はコロナ禍で渡航制限を理由に直接面会することを避けられる上、“言葉の壁”があるのをいいことに詐欺を見破られにくいという側面はあるのかもしれません。

マッチングアプリの利用者は恋愛を目的としていますから、国際ロマンス詐欺を仕掛ける側からすれば格好の標的となっているといえます。被害に遭うのは女性だけでなく、男性も同じです。

また、海外の交換業者を通じて暗号資産を送金した場合、詐欺だとわかっても被害回復が図られる可能性はまずありません。国内で登録された交換業者でなければ送金先を特定することが極めて難しいためです。

対策に乗り出す動きも

こうした中、マッチングアプリの運営会社の中には被害防止の対策に乗り出すところも出始めています。ヒトミさんが実際に利用していたアプリの運営会社もその1つです。

都内にオフィスを構えるこの会社では、ことしに入って詐欺被害が急増したことを受けて、海外からアプリへアクセスできないよう運用を改めました。

さらに、利用者のなりすましを防ぐため、登録に必要な免許証などの本人証明書に偽造の痕跡がないか入念にチェックしています。

ほかにも、AIを活用して、出会った相手をすぐに外部のSNSに誘導していないかなどを監視していますが、被害を完全に防ぐことは難しいといいます。

「詐欺グループとの攻防はイタチごっこのようです。対策を講じてもすぐに次の手口で攻めてきます。マッチングアプリを利用する方には、もうけ話を持ちかけられてもすぐには信じ込まず、現金の支払いを要求されたら詐欺を疑ってほしい」(運営会社の担当者)

アプリ利用者にできることは?

アプリの利用者側にも被害を避けるために出来ることはあるはず。ネット犯罪に詳しい成蹊大学の高橋暁子客員教授に話を伺ったところ、すぐにでも出来るチェック項目を2つ教えてくれました。

1つは、アプリで知り合った相手のプロフィール画像のチェックです。ヒトミさんの例のように、相手が他人の画像を使い回している可能性もあります。偽りがないかどうかはネットの画像検索で確認できるということです。例えば、グーグルやヤフーなどの検索エンジンではそういった機能を提供しています。

2つ目は、ネットで知り合った相手とじかに話す機会を持つことです。「海外にいる」と言われてもテレビ電話機能などを使って相手の声を聞くだけで、うそをついていないか、実在する人物なのかどうか何らかの感触を得ることが出来るはずです。

新型コロナへの懸念が払拭されない中、マッチングアプリは、人と人をつなぐコミュニケーションツールとしてさらに普及が進むとみられています。

そうなれば、運営会社にはいっそうの対策が求められることになりそうですが、アプリの利用者自身もリスクをはらんでいることを十分認識した上で活用していくことが必要だとあらためて感じました。

(札幌放送局 記者 小栗高太)

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