NHK札幌放送局

人口約16万 誰もがチャレンジできる街

ローカルフレンズ制作班

2022年12月1日(木)午後2時51分 更新

釧路市のみなさま、このたびは「ローカルフレンズ滞在記」で1か月お世話になります、 ディレクターの平原和真、40代の九州男児です!

思い起こせば2年前、福岡から北海道へ転勤して、右も左もわからないまま弟子屈町へ。
弟子屈町での一か月間は、ローカルフレンズの川上さんや高橋さん、そして多くのみなさまに支えられ、 北海道の雄大な自然やそこで暮らす温かい人たちと出会いがありました。 
屈斜路湖で人生初のSUPを紹介するはずが、水の冷たさを紹介する事などありましたが・・・(‘ω’)ノ。

2021年6月 弟子屈町の大自然を感じるSUP体験/左から平原・ローカルフレンズの川上さん・高橋さん

さて、2度目となる「ローカルフレンズ滞在記」。
場所は16万人余りの人口を有する大都会・釧路市です。
今回もどんな出会いとお宝が見つかるでしょうか!

初めて来た釧路の街。
煙がモクモクと上がる工場群、大きな船が係留する港、ヨーロッパの都市を連想させるような大きな川と、美しく立派だけど読み方がわからない橋(幣舞橋)。
潮の香りが漂い、カモメの声が響きわたる、とても晴れやかな町、それが私の釧路の第一印象です。

米町公園の展望台から

ローカルフレンズを訪ねる前に、ちょっと寄り道して理容店へ。
なぜ理容店? だって初めて来る町ですから、 身だしなみも整えておかないと・・・
それに、地域の人たちと密接に関わりを持っている場所と言えば、理容店ですよね!

イケメンにしてもらいながら、釧路の人ってどんな人たちなのか聞いてみました。

半世紀にわたって理容店を営む、横山征子さんと娘の山形恵里さん。

「釧路の人ってどんな雰囲気ですか?」の問いに、「最初はつっけんどんな人が多いけど、どんどん仲良くなっていきますよ」とのこと。確かにこの理容店でも、最初は「一体何者か?」「NHK、ホントに?」と言う雰囲気でしたが、わずか5分でお互い大笑いする仲へ。
釧路の人は気さくだなぁ・・・と感じるほどでした。

左が山形恵里さん、右が横山征子さん

すっきりとイケメンにしてもらったところで、今回のローカルフレンズのもとへ。
訪ねたのは釧路市の中心街にある、釧路市ビジネスサポートセンター『K-Biz』の事務所。

今回のローカルフレンズは、こちらに勤務している田辺貴久(たなべ たかひさ)さん。千葉県出身の40歳。
私の第一印象は、「すごくできる!業界人!?」 釧路にもこういう方がいらっしゃるのか・・・と思いました。

ローカルフレンズ 田辺貴久さん

2018年、地域の活性化のために釧路市が主体となって設立された釧路市ビジネスサポートセンター K-Biz。
田辺さんは、K-Bizの副センター長を務めています。
ここでは、中小企業や個人事業主などから、商品開発や販路拡大などの相談を、1回1時間、無料で受けています。
これまで農林水産業や小売店、飲食店など、さまざまな業界のコンサルティングを行い、5000件以上の相談を受けてきました。

田辺さんが相談を受けた企業のひとつ、地元の水産加工会社を訪ねてみました。

専務の宮下友美さんは夫と二人三脚で14年間、この水産会社で「たらこ」や「明太子」等を製造してきました。
しかし、主力商品のたらこの売り上げが伸びないことに悩み、どうしたら売り上げを伸ばせるのか、思い切って田辺さんに相談してみたのです。

この会社では、主に冷凍のたらこを製造して全国に展開していましたが、田辺さんは冷凍する前の新鮮なたらこに注目しました。工場に直売店を設けて、これを地元の人たちに売ってみては? とアドバイスしたのです。
そこで、宮下さんは月に2回、工場の直売店で生のたらこの販売を始めたところ、これが大人気に!
売り上げを上げることができたばかりか、食べた人からの「おいしい!」の声が仕事へのやる気につながったと話します。
私も宮下さんの明太子をいただいてみましたが、味付け抜群! 九州・福岡出身の私も大満足でした。

宮下さんと自慢の明太子

この話を聞いて私が疑問に感じたのは、なぜ企業が自らアイデアを出すことができなかったのか?ということです。
宮下さんは「日常の製造に明け暮れる中で考える余裕がない」ことや「昔からやっている事が当たり前と感じてしまっていた」と、その原因を話してくれました。
田辺さんは、製造者の既存概念を取っ払い、客観的な目線で客の立場にたって人と人をつなげていたのです。

チャリティ―イベントの相談者と田辺さん

他にも、田辺さんに相談を受けた人たちを訪ねてみました。
YouTuberとして活躍し、若者に人気のあるというこちらの人物。
チャリティーイベントを企画し、「どこに寄付したらいいか?」と相談を持ちかけたのだそう。

この時、田辺さんは以前K-Bizに相談に訪れた保育園のことを思い出し、寄付先として紹介してくれたそうです。田辺さんの持つ人脈で人と人をつないだ形です。

阿寒を訪れてコンサルティングをする田辺さん

また、阿寒のアイヌコタンにあるお店の方が、ホームページのリニューアルについて相談をした時には、実際に田辺さんがお店に出向いて、お店の雰囲気も確かめながらアドバイスを考えてくれたそうです。
田辺さんは相談者との話し合いの中で“気づいたこと”を大切にしながら、相談者の求めに沿ったコンサルティングを行っているのです。

田辺さんは釧路に来る前、東京の求人広告などを手がける大手企業で情報誌の編集に携わり、多くの人がその名を知る住宅情報誌の編集長にもなった経歴を持ちます。

住宅情報誌の編集長時代の田辺さん

札幌・仙台・広島・福岡など、地方都市に向けた情報誌を手がけていたこともあり、東京から地方の魅力に触れていくうちに、実際にその知識と経験を地方で活かしたいと思うようになりました。

そして3年前。
その仕事を辞めて釧路市ビジネスサポートセンターK-Bizで働くことを決め、釧路市へと移住してきたのです。

そうして釧路に来た田辺さんに、釧路市の魅力をうかがってみました。

「船乗りが多くいた漁師町から発展した釧路市は、他の地域から多くの人たちが集まり、互いに協力しあってきた町の風土が今も息づいている」と言います。

新しいものや新しい動きに対して、とっても好奇心を持ってウエルカムなスタンスで興味を持ってくれる。
だから、誰もが新しい事に挑戦し、それを市民が大きな器で受け入れてくれる

「誰もがチャレンジができる町」なんだそうです。
田辺さんは、釧路市が今後も発展を続ける事ができる可能性があると考えています。

これまで、さまざまな人たちのビジネスをサポ―トしてきた田辺さん。
この街で自分にも何かできることはないかと考える中、ある取り組みをスタートしました。

訪ねたのは、漁師町の風土が今も残る釧路市の、夜の市民交流のスポット・末広町。
ビルのネオンが輝き、華やかな夜の街並みの中、一軒のお店の明かりが灯りました。

お店のドアを開けると、田辺さんがカウンターの中でお酒をつくり、笑顔で会話をしていました。
田辺さんは1年前に、LGBTの人たちが気軽に集まることができるバーを開いたのです。
実は、田辺さん自身もLGBTの当時者であることを公言しています。
そして釧路に来て、釧路にはLGBTの人たちが一緒に楽しめる空間がないことを知り、仲間たちとともに立ち上げたお店です。
週に2回、自らカウンターに立ち、釧路の人に支えられながら、自らも経営しているのです。

私は田辺貴久さんという人物が“スーパーアイデアマン”に見えました。
単に困っている人を助けると言う存在ではありません。
地域をこよなく愛し、その力をひけらかす事なく影で人々を支える力持ち、
そして時には愛する人たちを夢中で守る。
そんな田辺貴久さんが釧路市の宝なのではないかと感じています。

田辺さんがこれから紹介してくれる「お宝」や「出会い」を、今後もみなさんにご紹介できればと思います。
あらためて1か月間、よろしくお願い致します。


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