webと放送を同時展開する0755DDチャンネル。今回のテーマは、「7つの窓」です。サケのふるさと千歳水族館(千歳市)にある水中観察窓から見える千歳川の世界に迫りました。
※放送版は総合テレビで10月5日にお送りしました。
「7つの窓」とは?
千歳市を流れる清流、千歳川はサケの遡上シーズンを迎えました。橋の上から川面をのぞくと、海から帰ってきたサケたちの群れが見えます。
今回のテーマ「7つの窓」は、千歳川の左岸、サケの群れを横から見る位置にあります。

「窓」があるのは、サケのふるさと千歳水族館です。建物の地下フロアーは、千歳川の底と同じ高さになります。階段を降りて行くと、その先に、7つの窓からこぼれる光が見えてきます。
窓の先は千歳川の川底。水中の世界が広がります。

水族館の朝は「窓」からの観察で始まる
午前7時半の千歳水族館。水族館の朝いちばんの仕事が始まります。「窓」の前にやってきた菊池基弘館長が広げたのは、「観察魚の記録簿」でした。7つの窓をひとつひとつのぞき込んでは、何が見えたのか記録していきます。

鼻先が曲がり産卵期を迎えたオスのサケ、ほんのりピンク色のメスのサクラマス、その周りを舞うように泳ぐのがウグイやヤマメです。メスザケを後ろからうかがうブラウントラウトと底石のすきまにいたフクドジョウも記録しました。

千歳水族館ならではの「自然」展示
窓から見える生き物たちとその行動は季節によって変化します。春のサケ稚魚の降下、夏のウグイの産卵、夏から秋に帰ってくるサクラマス・サケたち、冬のホオジロガモの潜水。窓は、千歳川のありのままの姿を「展示」してくれています。

千歳水族館・菊池基弘館長
「25年間見続けていてもいまだに飽きない、びっくり箱のような窓です」。
これまでに観察された魚は40種類、環境の変化とともに観察されるようになった魚もあれば、見かけることがなくなった魚もあります。
例えばコイは、2000年前後、夏の水温が当たり前のように20度を超えるようになってから毎年のように現れるように。アユは1995年に「再発見」され、2011年を最後にみかけなくなりました。

菊池基弘館長
「40種目の魚はゲンゴロウブナですが、登場したのは去年なんです。いまだに新しい種が出たり、新しい発見ができたり、新しい謎が生まれたり、目まぐるしく変わる自然を観察できる楽しい窓なんです」。
観察し続けた結果、大きな発見に!
自然の川の水中を観察は、窓ができた翌年の1995年5月から始まりました。これまでに記録したデータは、分厚い書類ファイルで8冊になりました。
このデータを解析したことでわかった発見もあります。それがこちらの論文です。窓から観察されたサケ稚魚の記録を解析しました。

千歳川では、千歳水族館の10キロ上流にあるふ化場から毎年一定量のサケ稚魚が放流されています。稚魚たちは、川の中でしばらくユスリカなどを食べながら成長、やがて海に降っていきます。水族館の窓では、その途中の姿が記録されてきました。

研究の結果、窓から見えたサケ稚魚の数が多ければ、数年後に海から帰ってくる親サケの数は多くなり、見えた稚魚が少なければ帰ってくるサケも少なくなることがわかりました。
つまり、ふ化場から窓の前にくるまでの10キロの間に、稚魚がどれだけ減ったかが、サケの回帰率に影響を与えていたことがデータからわかったのです。
データを解析 水産研究・教育機構 森田健太郎主任研究員
「自然の川の魚を、同じ場所で、同じ時間に、同じ方法で観察している。そういうデータは世界的になかなか無い。すごいデータだと思います」。

サケのふるさと千歳水族館の「窓」は、訪れる人たちに、ありのままの自然の姿を見せてくれるのと同時に、その窓からの視線は、科学的な発見につながっていました。
2019年10月7日