NHK札幌放送局

シマエナガ絵本に込めた思い

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2022年8月25日(木)午後5時30分 更新

今、大人気のシマエナガを題材にした絵本が釧路市で完成しました。そこには、かわいいだけではないシマエナガの魅力が込められています。制作者の思いを取材しました。 (釧路放送局 生田真尋) 

全国で大人気 雪の妖精

シマエナガは北海道だけに生息する体長約14センチの小鳥です。白くてふわふわ、まん丸なフォルムが愛らしく、”雪の妖精”とも呼ばれています。小さくて見つけるのが難しいですが、実は市街地の森にも生息している身近な鳥なんです。釧路市の街なかにあり、市民の憩いの場として親しまれている「春採湖」周辺も生息地のひとつです。春は子育てで大忙し。ことしも1つがいが、ヒナ11羽を立派に育てあげました。

自然写真家の山本光一さんは、10年前から春採湖に通い、シマエナガの撮影を続けています。もともとは別の野鳥を撮影していたということですが、シマエナガに魅了されたのは「かわいい」という理由だけではありません。シマエナガは、実は強くてたくましい鳥だと言います。巣をカラスに壊されても何度も諦めずに作り直す、ヒナが死んでしまった年には、別のつがいのヒナの面倒を見る、毛並みをボロボロにしながらヒナにエサを与える・・・。山本さんは春採湖でたくさんのドラマを見てきました。そんなシマエナガの魅力を多くの人に伝えたいと「シマエナガの伝道師」として、阿寒の森などを舞台に子どもたちを対象にしたフィールドワークなどの活動も行っています。

山本さんには、長く春採湖で撮影を続ける中で気付いたことがありました。それは、春採湖周辺に子どもたちの姿が少ないということ。せっかく身近に素晴らしい自然があるのにもったいない・・・。「もっと自然に親しんでもらいたい」「命の大切さを伝えたい」と考えた山本さんは、シマエナガを題材にした絵本をつくることにしました。

山本光一さん
「断片的な写真よりもストーリーとして伝わる絵本の方が子どもたちの琴線に触れて、より身近に感じてくれる手法かなと思い、絵本を選びました」

自然写真家×図工教諭

イラストは、以前から子どもたちとのフィールドワークで交流のあった釧路市の義務教育学校の教諭・登藤珠実さんに依頼しました。

登藤さんは図工の先生です。プライベートでも絵の制作を行っていて、個展を開くほどの腕前の持ち主でもあります。登藤さんの作画作業は1年前から始まりました。山本さんが春採湖で撮影したシマエナガの写真を元に、毛並みや模様などの細かな特徴を再現することにこだわりました。用いたのは「色鉛筆」のみ。子どもたちでもまねして描けるようにと、あえて難しい画材は使わず、授業でも使うような道具を使って描き進めました。

登藤珠実さん
「子どもたちにも身近にこんなかわいい鳥たちがいて、一生懸命生きてるんだよっていうことを感じてほしいと思って描きました」

ことし3月。山本さんと登藤さんは刷り上がったゲラをもとに最後の打ち合わせを行いました。こだわりの強い2人は、細かな色合いや文章のニュアンス、文字のデザインなど、納得がいかない部分についてはとことん意見をぶつけ合います。しかし、その雰囲気はどこか楽しげ。「子どもたちのために良い絵本を作り上げたい」という想いで、熱い議論が続きました。山本さんは「あと一歩が遠いんだ」と笑みを浮かべました。

春採湖しまえなが物語

そして6月。ようやく絵本が完成しました。題名は「春採湖しまえなが物語」。シマエナガのつがいが様々な苦難に直面しながらも子育てに奮闘するストーリーです。山本さんが春採湖で実際に見た観察記録をもとにした実話です。

主人公はオス「ラメト」とメス「ピリカ」のつがいです。

最初の苦難は巣づくりでした。地道にようやく完成させた巣がカラスに壊されてしまったのです。それでも2羽は諦めずに何度も巣を作り直します。

作り直した巣に「アカゲラ」が近づいてきた時にも、2羽は必死に追い払います。このシーンも山本さんが実際に目にした光景です。自分より体の大きいアカゲラに立ち向かう勇敢な一面を描いた象徴的なシーンとなっています。

ようやくヒナが生まれたあと、またしても悲しい出来事が訪れます。オスの「ラメト」がタカに連れ去られてしまうのです。1羽きりになったメスの「ピリカ」は「ラメト」の分まで一生懸命ヒナを育てようと頑張りますが、エサの量が足りずヒナはすべて死んでしまいました。

それでも次の年の春。「ピリカ」は別のオスとつがいになり諦めずに子育てを始めます。毛並みはボロボロで、一般的なイメージの白くてフワフワなかわいらしい姿とはほど遠いですが、やさしさとたくましさをたたえたピリカの姿で絵本は締めくくられています。

絵本に込めた思い届く

完成した絵本は、さっそく登藤さんが勤める北海道教育大学附属釧路義務教育学校で4年生を対象に読み聞かせが行われました。スクリーンに映し出された絵をまっすぐ見つめながら、真剣に耳を傾ける子どもたち。その様子を見守る山本さんの目には思わず涙が浮かびます。読み聞かせが終わり、山本さんが感想を尋ねると子どもたちからは様々な感想が寄せられました。

男子児童
「大きいアカゲラと闘っているところが一番心に残っています」
女子児童
「巣を壊されても諦めないでまた新しい巣を作り直しているところが、とてもいい話だなと思いました」

山本さんは、絵本に込めたメッセージが子どもたちの心に確実に届いたと手応えを感じています。

山本光一さん
「シマエナガを好きになった子、春採公園を好きになってくれた子、そういった子たちがまた、命を守りたいとかっていうように成長してくれるように、少しでも提供できるものがあれば伝えていきないな。命を大切にしてくれるために活動してくれるような大人になってほしいなって思います」

取材後記

シマエナガはもともと大好きな鳥でしたが、取材を通して、もっとシマエナガのことを好きになりました。小さな小鳥が懸命に命を繋ぐ姿に勇気をもらいましたし、鳥たちが住みやすい自然を維持できるよう、できることをやらなければならないとも思いました。まずはカメラを片手に、春採湖に行ってみることから始めようと思います。(生田真尋)

(2022年7月29日)

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