NHK札幌放送局

陸に海に 拡大する風力発電

ほっとニュースweb

2022年6月1日(水)午後4時41分 更新

再生可能エネルギーの中でも伸びが期待されているのが風力です。環境省によると、潜在的な再エネの資源量は、風力では北海道が全国トップ。一方で、同じ再エネの太陽光に比べて、実際に導入された容量は半分程度にとどまっています。資源のいっそうの活用を目指し、いま、道内では陸に海に風力発電の開発が急速に活発化しています。

高さ155メートル!巨大風車に地元は期待

道北の苫前町を車で移動していると、目の前に5基の巨大な風車が姿を現しました。

高さは155メートル。「さっぽろテレビ塔」をしのぎます。

町内には23年前に大規模な風力発電所が建設されましたが、2020年に更新時期を迎え、大型風車に建て替えました。

完成した風車の設備容量は、5基あわせて2万キロワット。小型の水力発電所並みの規模です。

5月20日のしゅんこう式に出席した苫前町の福士敦朗町長は、さっそく地元としての期待を示しました。

苫前町 福士敦朗 町長
「北海道全体は再生可能エネルギーの基地。今後、国内の脱炭素社会の実現に向けて大きなはずみになると確信を持っています」

苫前町 福士敦朗 町長

道北では風車の建設が続々と

風力発電の適地とされる北海道。中でも道北に集中しています。

おととし3月時点で、道内全体に設置されている346基のうち、175基は宗谷・留萌地方が占めます。海から吹き寄せる強い風を利用して開発が進んできました。

宗谷・留萌地方では、さらに大型風車の建設が続いています。

稚内港では、中国から運ばれてきた大型風車の部品が次々に陸揚げされています。大手風力発電会社「ユーラスエナジーホールディングス」が6月から大型風車107基の組み立てを始めるためです。

ユーラスエナジーホールディングス 加藤潤 稚内支店長
「107基の風車で、北海道内の電力需要の3%程度をまかなえる計算になります。道北地域は非常に風が強いうえ、比較的なだらかな地面で工事をできるので、風車の建設には極めて良い条件がそろっています」

107基の風車は3年後の2025年までに整備を終える予定で、これにより道内の風力発電の設備容量は一気に2倍近くに増強され、100万キロワットを超える見込みです。

進む風車の大型化

建設にあたっては、風車の大型化が進んでいるのが特徴です。

工事現場を訪れると、組み立てを開始する前に必要な土台づくりが進められていました。

風車の支柱となる「タワー」の太さは実に直径、およそ20メートル。タワーを建てるために掘る穴の深さも4メートルに及びます。その上で鉄筋を組み、コンクリートを流し込んで土台を作り、土台を完成させたあと風車の組み立て作業に入るということです。

大型化しているのは、高い場所の強い風を利用できるようになり、より効率的な発電につなげるねらいがあるということです。

会社では、道北ではさらに風力発電所を増やせる可能性があると手応えを感じています。

ユーラスエナジーホールディングス 加藤潤 稚内支店長
「道北は一般的な風力発電施設に比べて、1.5倍前後の発電量が期待できる、極めて風力発電に適した地域だと言えます。社運をかけたプロジェクトと言っても過言ではありません。道北地域は、北海道だけでなく日本全国でも風力発電の集積地になると思います」

ユーラスエナジーホールディングス 加藤潤 稚内支店長

次なる注目は「洋上」

加えて拡大が期待されているのが、海に風車を設置する「洋上風力」の活用です。

道南のせたな町は、全国で初めて洋上風力発電を始めました。安定した発電で、年間、3700万円の収入を町にもたらすなど、地域の活性化に貢献しているということです。

せたな町まちづくり推進課 神田昌 課長
「日本で初めての洋上風力ということで、自治体の名前を全国に知ってもらうことができました」

洋上風力は、環境省の調査によると、再エネの中で最も導入量の潜在力が高く、これについても北海道が全国一の適地だということです。

洋上は陸上より風の状況が良いこと、大型風車の導入がしやすいことに加えて、景観・騒音への影響が陸上よりも比較的小さいことなどがメリットしてあげられています。

洋上風力については、適地と評価されているのが石狩市の沖合です。

沖の方まで水深の浅い海域が続くため、「着床式」と呼ばれる、タイプの風車を建設しやすいことが特徴です。この方法はタワーを直接、海底に据えるため、コストが比較的安く済みます。すでに少なくとも8社が洋上風力事業に名乗りを上げています。

そのうちの1社が、「日本風力開発」。これまで全国各地で風力発電事業を展開してきました。

この会社が石狩市の沖合で計画しているのは風車で最大250基、出力は最大300万キロワットの発電所です。出力だけみると、道内最大の北海道電力・泊原子力発電所をしのぐほどの規模です。

会社では、2030年からの営業運転開始を目指して、去年から石狩湾の沿岸で特別の「塔」を設け、風速や風向のデータを集めています。

その上、住民向けの説明会も随時開催。事業に関する地域の理解を得ていきたい考えです。

日本風力開発 内山貴博 開発本部副部長
「1年間の観測を通じて石狩湾は大変風況がいい場所だと実感しています。今後は海上での観測も検討していきたい。風力発電所というものはどのくらい発電できるのかというところが大切な要素になりますので、この風資源を生かしてより良い発電所を建設したい」

日本風力開発 内山貴博 開発本部副部長

風力にも根強い懸念の声が

風力発電には期待が高まっている一方、景観への影響や騒音、それに野鳥が衝突して死ぬといった懸念が根強くあります。また、洋上風力については、漁業と共存することも大きな課題です。

さらに北海道は人口が少ないため、大量に発電できたとしてもその電力を道内で消費しきれないという大きなハードルもあります。国は北海道と大消費地の首都圏を結ぶ新たな海底送電線の整備も検討しています。

風力発電が今後、順調に拡大できるのかどうかは、これらの課題をクリアできるかどうかにかかっています。

(稚内支局 山川信彰、函館放送局 奈須由樹、札幌放送局 岡﨑琢真)
2022年6月1日

再エネ王国・北海道 ~課題と可能性は~
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