私が滞在しているゲストハウスから徒歩2分の場所にある「喫茶カナリア」。1979年創業の老舗だ。コーヒーやナポリタンなどの喫茶メニューもさることながら、どうやら「ビール」と「そば」がおいしいと地元で評判だそう。中には、今まで飲んだビールで一番おいしいという人も。ご多分に漏れず、私もさっそく伺った。

「いらっしゃ~い」。自分が顔なじみの客だったかと思うほどのはじけんばかりの笑顔で迎え入れてくれたのは、須藤尚子さん。ローカルフレンズ滞在記の取材でこれから1か月お邪魔することを伝えると、「あら、うれしい。よろしくね」と言ってくれた。人口4000人の小さな町で、テレビカメラが1か月も入ることが受け入れられるのか不安だった私はほっとした。
カウンターに座り、さっそくウワサのビールを注文。きめ細かな泡が特徴的で、渇いた体にすーっと染みこむ。たしかにうまい。そんな絶品ビールを片手に話を聞いた。私が浦幌町に来る前に事前情報としてひとつだけ知っていたことがある。それは、ここ3年連続で20代の人口が増え続けているということ。浦幌町で行われている次世代につなぐ教育の理念に共感した若者が集まり、今、活気づいているらしい。
四季折々で移り変わる浦幌町ののどかな風景が好きなの。だから一度も町を離れてないわ。最近は町に戻ってきてくれる若者がいたり、外から来てくれる若者がいたりしてうれしい。若い人たちはそれぞれの得意分野でがんばって、町の良いところを次につないでいってほしいよね。私も一緒に頑張りたい。
御年69歳にして「一緒に頑張ろう」とはなんともすてきだ。同じ場所から町の姿を40年以上見つめてきた須藤さんは、昔の浦幌町の姿を「封建的だった」とも話した。新しい試みをしながら、良いものを受け継いでいく。喫茶カナリアの味と重なった。

担当:NHK札幌放送局カメラマン 住田達
2022年9月8日
