NHK札幌放送局

山菜採りで遭難 函館の経験者が怖さ語る

道南web

2022年4月27日(水)午後0時32分 更新

山の雪解けが進み、本格的な春を迎えました。
山菜採りで山へ出かける人も多くなる時期です。
一方で、山菜採りをしていて遭難する人が毎年後を絶ちません。
まさか自分はー。
そう思っていた男性は本当に遭難してしまいました。
(函館放送局 小柳玲華)

6年前のあの日

函館市に住む工藤敏夫さん。
毎年春になるとギョウジャニンニクやタケノコを採りに山に入っていたといいます。
6年前の5月も友人2人と市内の山林にタケノコを採りに出かけました。

工藤さんは山菜採りを始めて5年ほどが経っていました。このときも毎年タケノコを採る場所に向かったといいます。
目的地に到着したあと、集合時間を決めて3人それぞれ単独でタケノコを探すことになりました。

工藤さんは、自分の背丈よりも高い竹やぶをかき分け、下を見ながらタケノコを採っているうちにどんどん山奥へ入っていました。

タケノコを採り終え、友人と待ち合わせをした場所に戻ろうと方位磁針を見て歩き始めました。

しかし、いくら歩き続けてもなかなか到着しません。
工藤さんは次第に自分がどこにいるのかもわからなくなってしまいました。

工藤さんは毎年、タケノコ採りでは山の奥まで進まず、来た道をすぐ戻れる範囲で動いていたといいます。
しかしこのときは、いつもは行かない奥まった場所まで足を進めました。山で遭難しないために買った方位磁針を初めて使っていて、方角がわかるという安心感があったからです。
使い慣れない方位磁針を持って歩いた結果、集合場所に戻る際、来た道とは違う方向に進み続け、ついに迷ってしまったのです。

「自分が遭難するとは思っていませんでした。タケノコを採っている途中で誰もまだ足を踏み入れていないような場所を見つけました。そこにはたくさんタケノコが生えていて、夢中で採っていました。方位磁針を見ると必ず来た道を戻れるという安心感があったのです。それが間違いでした」

突然鳴った携帯電話

なんとかして友人たちのもとへ戻ろうとした工藤さん。
歩き続けていたところ、突然、持っていた携帯電話が鳴りました。

電話を取ると警察からでした。
工藤さんは自分が捜索されていることを知りました。
なかなか戻ってこない工藤さんを心配して、友人や家族が心配して警察に通報していたのです。

警察と電話でやりとりをして自分の居場所を伝えていましたが、やがて携帯電話の電池がなくなり連絡を取れなくなってしまいました。

そのまま夜を迎えました。
その晩は雨が降っていたといいます。
工藤さんは雨をしのぎながら救助を待ち続けました。

工藤敏夫さん
「いつも山菜採りに行くときには朝に出て昼には自宅に戻るので、飲み物以外何も持っていませんでした。食べ物を持っていなかったので飲み物だけで過ごしました」

工藤さんは命をつなぐため生えていたフキを口にしましたが、そのままのフキは固くて食べることができませんでした。

救助を待つ間のこと。
体力が消耗するなか、工藤さんは、誰もいないのに人の声が聞こえたり、現実にはないはずの湖が見えたりしたといいます。

工藤さんは「食べ物がない中で幻覚や幻聴を経験しました。めがねをかけていましたが、助けを待つ間に足を滑らせ、めがねが飛ばされてしまいました。周りが見えない中でそういう幻覚がはっきり見える恐ろしさ。それがやはりいちばん怖かったなと思いますね」と当時を振り返ります。

2日後にようやく見つかる

警察や消防、自衛隊など60人の態勢で捜索が行われました。
そして2日目の夜、工藤さんは山の中腹の川の近くで、捜索していた自衛隊員に救助されました。
工藤さんはすぐに病院に搬送され、幸い、命に別状はありませんでした。

工藤敏夫さん
もう助からないということも考えましたが、『でも、大丈夫』という気持ちを持ち続けました。だから、捜索していただいている人に見つけてもらいやすいように川に向かって歩いたのだと思います」

当時を振り返って

工藤さんは毎年この時期になると遭難したことを思い出すといいます。

「山を甘く見ていました。そして、周りに迷惑をかけました。特に警察や消防、自衛隊、それから家庭に迷惑をかけました。今でも申し訳なく思っています。それに遭難してしまったことを恥ずかしく思っています。自信というか、『自分は大丈夫』と思い込んでいることが恐ろしいです。私と同年代の方は経験もあり山に対して『慣れ』があると思いますが、『慣れ』はいちばん怖いです」

遭難を防ぐためには

こうした山菜採りでの遭難。
防ぐためにはどんな対策が必要なのでしょうか。
長年の登山経験を持つ函館地区山岳連盟の会長、野口邦夫さんに話を聞きました。

まず、持ち物です。
野口さんは、山菜採りなどで山に入る場合は次のものを準備するよう呼びかけています。

▼携帯電話
▼GPS機能がついた電子地図
▼紙の地図
▼方位磁針
▼飲み物・軽食
▼雨具(ウインドブレーカー)・防寒具(薄手のセーター、レスキューシートなど)
▼色がついた布や紙テープ(通る道につけて目印にする)
▼簡易テント
▼常備薬
▼懐中電灯
▼ホイッスル
▼熊よけスプレーなど

例えば、携帯電話は連絡を取ったり、専用のアプリで居場所を確認したりするために必要で、モバイルバッテリーを持って行くことも重要です。
GPS機能のついた電子地図は、携帯電話の電波が届かないところでも現在位置を確認することができる端末です。
このほか、紙の地図や水、軽食、それに雨や風をしのぐための上着なども準備します。
また遭難防止のためには、色のついた紙テープや布を通る道順につけていくと来た道を戻る際に目印になると話します。

野口さんは、山に入る前には地図を見て道を確認しながら、山の中での動きを想像することが大切だとしたうえで、次のように話しています。

「『前はここまで行ったからもうちょっといけるだろう』とそういう冒険心が出てくるわけです。そういうときはルートを間違えたりコースを間違えたりする可能性があります。季節にあわせたその山のことを常々研究しておくことが大切だと思います」

ヒグマにも注意!

山菜採りで山に入る際にはヒグマに遭遇する危険性もあります。警察やクマの生態に詳しい専門家は次のように注意を呼びかけています。

・1人で山に入らない
・山に複数で入った場合でも単独行動しない
・家族に行き先を知らせる
・ホイッスルを持参し音を鳴らすことで山中で自分の居場所を知らせる
・沢の近くなど周囲の音が聞こえにくい場所ではより注意して行動する

道は入林届の提出求める

また北海道によりますと、道が所有する山では整備されていない危険な道もあるということで、事前に通行止めの場所を確認するほか、遭難した際などに手がかりとなる入林届を道に提出するよう求めています。

<取材した記者>
小柳玲華(函館放送局・放送部)
2020年入局。函館局が初任地。警察・司法や災害を中心に取材。

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2022年4月27日

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