色づく林を、マウンテンバイクで駆け抜けていく人。全身で風を受け、なんだかとっても楽しそうです。


舛森拓郎さん。
道内の魅力的な森やその暮らしをよく知る「森のローカルフレンズ」の案内人です。
今回案内してくれたのは厚真町の森。
ここでいま、国内有数の大きな森を余すことなく堪能できる「トレイルコース」の整備が進んでいるとのこと。森を全身で感じられるスポットへ舛森さんと向かいました。

市街地から車で5分。トレイルコースの入口で舛森さんと待ち合わせです。
今回は自転車でコースをめぐります。一時間程度と比較的短い時間で、変化にとんだ自然を満喫することができます。
「震災受けたダメージもあるんですけど、それ以外のダメージ受けてないすごく豊かな森。その森の魅力を今回お伝えできればなと思っています。」

この森を案内してくれるのは、トレイルコースの整備をしている渡辺さん。
めざすゴールは、厚真の森を一望できる大絶景の展望台。
途中まではしっかり整備されたコースとなりますが、その先、展望台までは未整備。走れるようになるは来年の予定とのこと。
今回は特別にこの未整備のルートを一足先に堪能して、展望台まで案内してもらえることになりました。

歩く・走る・自転車で駆け抜ける。それぞれの楽しみ方ができるこのトレイルコース。

まず迎えてくれたのは広葉樹の天然林です。
色づき始めた木々の間を走り抜けていると、ほのかに甘い香りがただよってきました。どうやら桂の香りのよう。まさに五感で森を感じます。


さらに進むと、きれいな沢を発見。
気になったものがあれば降りて楽しむのが“舛森さん流”です。

すると、舛森さん、森の中で何かを発見。
「あそこって道ってわけじゃないですよね?」


見つけたのは、かつて馬が材木を運ぶときに使っていた道。渡辺さんによれば、かつてこの林にはこのような道がたくさんあったのだとか。森と人との深いかかわりを感じさせる発見に桝森さんも興奮気味。
こういうのがね、楽しいのよ。自転車乗ることが目的ってよりもやっぱり移動手段としてマウンテンバイク使って、山全体を楽しむというか。これが僕の好きな遊び方ですよね。
さらに進むと、きつい登り坂が待っていました。

なんとか坂を上り切ると…

爽快な下りが続きます。木々の間をすり抜け、風を切って進む二人は…この笑顔!

走ること2㎞。森を抜け、開けた場所に出てきました。町営牧場です。
整備されているトレイルコースはここまで。ここから先は今回特別に案内してもらう未整備のエリア。コースが完成するのは来年の予定です。
しばらく走ると…見えてきました!今回のゴール=展望台です。


展望台では、森に携わる仲間たちが待っていました。
徒歩や自転車など、様々な遊び方を提案しています

展望台からは、美しくどこまでも広がる厚真の森が一望できます。

西埜将世(にしのまさとし)さん
家から馬と歩いて、現場に行ける。その距離に現場がある。
そう話すのは、「馬搬林業」と呼ばれる伝統的な林業を営む西埜将世(にしのまさとし)さん。地元の小学生への乗馬体験なども行い、厚真の森ならではの楽しみ方を提案しています。


宮久史さん
厚真町役場で森林に携わっている宮久史さんは、「この森でみんなで遊びたい」と話します。
乗り物が変わると感じ方が変わるので。歩いていると気付けるもの、馬の高さだから気付けるもの、楽しいものってあると思うんのですよ。共存できるものでみんなで遊べたらなと思います。

シェアトレイルだよね。僕らが一番理想とするスタイル。今までシェアトレイルって概念が日本にはなかったので、それをここから発信していってほしい。
宮さんの言葉を聞いて、舛森さんは「シェアトレイル」というスタイルを提案しました。主に北米で定着しているスタイルで、徒歩、トレイルランニング、自転車、馬とそれぞれの好みのスタイルでトレイルコースを楽しもうという概念です。

林業を営む丹波智大さんによると、厚真町には「同業者だけど、同業者じゃないみたいな人が多くいる」と語り、その広がりがあるからこそ様々な楽しさが提案できるといいます。

「やっぱり厚真いいなって思った。」
舛森さんは今回の訪問を通して厚真の森の魅力を再確認したといいます。
4年前の胆振東部地震で深い傷を負った厚真町の森。
舛森さんにとって大好きな森だったからこそ、そのショックはとても大きいものでした。
震災後、さまざまな活動が止まりかけたにもかかわらず、みんなの力で止まらずに進んでいること。その様子にすごく勇気づけられたそうです。

森の魅力を発信して厚真町を元気づけたいと、トレイルコースに集う仲間たち。
展望台で未来を語り合った後、トレイルコースとは別のエリアにある地震で傷ついた森を訪れました。するとそこでは、まるでみんなの取り組みを応援してくれるかのように、カラマツやコナラの幼木が自らの力でしっかりと根付き始めていました。

