NHK札幌放送局

“電気を送れない”解決へ あの手この手

ほっとニュースweb

2022年5月26日(木)午後6時22分 更新

再生可能エネルギーの「不安定」という課題には、蓄電池が対策として期待されています。もう1つの「電気が送れない」という問題も、今、解決に向けた動きが現れています。

思い切って新たに送電線を整備するという会社が出てきている一方で、既存の設備を最大限活用できるよう制度の見直しも行われています。 

始動 1000億円の巨大プロジェクト

稚内市から道北の中川町までを結ぶ大規模送電網。2018年から建設工事が進められています。

総延長およそ80キロ、つなぐ鉄塔の数は269基。来年4月の供用開始を目指しています。事業費の総額はおよそ1000億円に上るビッグ・プロジェクトです。

建設しているのは、稚内市に本社がある「北海道北部風力送電」。風力発電の事業者や地元の稚内信用金庫などの出資を受けて、2013年に設立されました。

送電線は以前は大手電力会社が整備してきました。その費用は「託送料金」と呼ばれ、事実上、電気料金の一部として企業や家庭から徴収されてきました。

しかし、この送電線は、国から435億円の補助金は出ているものの、残る500億円以上は会社みずからが費用を負担しています。

そこまでする理由は、道北で大規模な風力発電所が相次いで計画されているものの、送電線が足りず、そのままでは電気が送れないからです。

北海道北部風力送電 吉村知己 社長
「これ以上、道北エリアの風力発電の電気を受け入れることができない課題があった。どういうことができるのかを考え、混んでいる『幹線道路(幹線の送電線)』の脇にバイパスを作って、風力発電の電気を専門に流していく。そういうルートを作っていこうというチャレンジです」

北海道北部風力送電 吉村知己 社長

さらに変電所への投資も

会社では、大型の蓄電池を備えた変電所も豊富町に建設しています。

平原を車で進むと、5ヘクタールを超える広大な敷地にある変電所が姿を現しました。

来年4月に運用を開始する予定で、宗谷地方で3年後までに建設される風車、127基で発電される、あわせて最大54万キロワットの電力を札幌市などの消費地に送電する計画です。

吉村社長は、新しい送電線の整備さえ進めば、今後、風力発電を中心とする再エネの導入はさらに拡大すると期待を示しながらも、その際にはどのように費用を負担するかも考える必要があると指摘しています。

北海道北部風力送電 吉村知己 社長
「さらに今後もっと大きな風力発電所を建設していく場合には、どのように送電線を増強していくのかを考えていかないといけない。誰がどんなふうに費用を負担していくのか、どこに設置するのが有効なのか日本全体で知恵を出していきながら考えていく。それが将来にわたった再生可能エネルギー拡大につながっていくと思います」

知恵で既存の送電線を活用

しかし、至るところで巨額の投資をして、送電線を整備するというわけにもいきません。このため、既存の送電線をもっと有効に活用して、再エネの利用を増やそうという模索も始まっています。

電気を送りたいという事業者は、原則、送電線で送る電気の量を先着順に確保します。事業者は最大の量を確保するため、多くの場合、余裕があります。それでもこれまでは契約で埋まっていれば、送電を希望する新たな事業者は、送電線を持っている会社から「空き容量はない」と説明を受けていました。

国はこれを見直し、余裕がある場合には送電を認めることにしました。

列車に例えると、これまでは指定席だったのが自由席に変わるイメージです。指定席だと見た目、席が空いていても、予約がなければ乗れません。しかし、自由席であれば、席があれば乗ることが可能になります。この仕組みは、「ノンファーム型接続」と呼ばれます。

「ノンファーム型接続」は、2019年に東京電力管内の一部で試験的に運用が始められ、去年の1月から全国の主要な送電線で受け付けが始まりました。北海道電力ネットワークによりますと、道内では、ことし2月末の時点で200件以上の契約の申し込みがあったということです。

需要があるところで発電を

新たな仕組みについて、東京大学生産技術研究所の岩船由美子特任教授は、一定の効果があるとみています。

東京大学生産技術研究所 岩船由美子 特任教授
「これまで送電線を増強するまで接続できない、何年もかかりますと言われていたのが、すぐにつなげるようになれば、かなり事業性も高まり有効だとは思います。再エネ導入拡大の後押しになることは確かです」

東京大学生産技術研究所 岩船由美子 特任教授

加えて岩船特任教授は、異なる観点からも提言しています。

東京大学生産技術研究所 岩船由美子 特任教授
「データセンターを北海道に建てるというように、送電のネットワークに頼らず、なるべく需要のあるところに再エネを置くというのが重要で、それを促すような制度にしていくべきだと思います」

蓄電池や送電線といった供給の問題もさることながら、需要とセットで考えれば、ためたり、送ったりすることを考えなくて済むという指摘です。道内の再エネをいっそう活用するうえでは、この点もヒントになるのではないでしょうか。

(稚内支局 山川信彰、札幌放送局 岡﨑琢真)
2022年5月27日

再エネ王国・北海道 ~課題と可能性は~
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