NHK札幌放送局

牛のふん尿からLNGに代わる新エネルギー

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2022年6月22日(水)午後2時52分 更新

酪農家の悩みの種でもある牛のふん尿。近年では、ふん尿からバイオガスを生産し発電などへの利用も進んでいます。ただ、こうして活用されているのは一部に限られているのが現状です。新たな地産地消のエネルギーとしてバイオガスのさらなる活用を目指す取り組みを取材しました。

(帯広放送局記者 前嶋紗月)


国内初 動きだした液化バイオメタン事業

酪農が盛んな十勝の大樹町。牧場の敷地内にこの春、牛のふん尿を発酵させてできたバイオガスを圧縮して運搬するための新たな設備が完成しました。

バイオガスはメタンおよそ60%、二酸化炭素およそ40%で構成されています。圧縮されたガスは、帯広市の工場にタンクローリーで運ばれ、燃えやすい気体であるメタンが抽出されます。それを冷却することでできるのが新しいエネルギー「液化バイオメタン」です。さらに余った二酸化炭素は、ドライアイスに加工して活用することも検討されています。環境省と大手産業ガス会社などが1年前から国内初の実証事業として準備を進めてきました。


LNGの代替燃料として期待

現在、石油、石炭に次いで国内の主要なエネルギー源として使われているのがLNG=液化天然ガスです。LNGの成分のおよそ90%はメタンです。一方、液化バイオメタンは100%メタンで構成されています。このため、これまでLNGを使っていたボイラーなどで使用できるといいます。
さらに、LNGはほとんどを海外からの輸入に頼っていて、価格高騰の問題に直面しています。
このため、液化バイオメタンはLNGの代替燃料として幅広い活用が期待されています。

牧場を経営 水下英治さん
「“ふん尿を制するもの酪農を制す”というぐらいふん尿の問題ってすごく大切だと思っています。いろいろなものが高いときに、環境に優しい天然のものがより活用されることを期待したいです」


注目したのは“未利用”のバイオガス

なぜこうした取り組みを始めたのか。道内では、バイオガスを燃料に発電する「バイオガス発電」が増えていますが、送電線の容量の問題から発電に活用できるバイオガスには限りがあります。一方で、政府が2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標に掲げるなか、再生可能エネルギーに対する企業などからの需要は高まっています。そこで、双方のニーズをかなえるべく、白羽の矢が立ったのがバイオガスに含まれているメタンだったのです。

産業ガス会社 藤井沙紀さん
「未利用のバイオガスを加工して地域のエネルギーとして使うことができるほか、輸入に頼らず国内の資源を活用できることが、この取り組みの醍醐味だと思います」


道内の工場で消費されるLNGの半分を賄う潜在能力

実証事業では、ことしの秋から音更町のよつ葉乳業の工場でLNGの代わりにボイラーの燃料として試験的に使用します。ボイラーの機械に不具合が起きないかや、運用面での比較を検証することにしています。会社の試算では、現在のLNGから液化バイオメタンに変えることで、製造・輸送・利用でのサプライチェーン全体で温室効果ガスの排出量を60%以上削減できるとしています。

産業ガス会社 藤井沙紀さん
「北海道内でおよそ80万頭の乳牛がいると言われていますので、液化バイオメタンを年間およそ30万トン作ることができる潜在能力が北海道にはあります。これは道内の工場で消費されるLNGのおよそ半分に匹敵します。地産地消のエネルギー、かつカーボンニュートラルなエネルギーを皆さんに提供したいと考えています」

ロケット燃料に活用も

さらに、会社では純度の高いメタンを製造することで大樹町で開発が進むロケットの燃料への使用も目指しているということです。環境に配慮した国産エネルギーがどこまで私たちの生活に浸透するのか今後も注目していきたいと思います。

2022年6月22日

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