NHK札幌放送局

「電柱鳥類学」のススメ! 放送記録

北海道まるごとラジオ

2022年5月2日(月)午後4時02分 更新

4月28日(木)の北海道まるごとラジオは、 「『電柱鳥類学』のススメ」をテーマにお届けしました。 

「電柱鳥類学」というのは、電柱や電線を利用する鳥を研究する学問として、北海道教育大学・函館校の三上修教授が提唱しているものです。なぜ電柱・電線を利用する鳥としない鳥がいるのか、利用する鳥はどのような利用の仕方をしているのか、昔と比べた変化はないのか…。調べていくと、その鳥が生まれもっている先天的な行動が見えてきたり、人間が鳥にどんな影響を与えるのか可視化されたり、人間と鳥と自然との関係を見つめ直すきっかけになったりするといいます。

番組では、まず、電線にどんな鳥が止まっているのか、三上さんが全国6つの大学の野鳥サークルに依頼して調べた調査結果をご紹介しました。春から夏にかけて見られた「よく電線に止まるベスト10」は、次の通りです。

①スズメ ②ムクドリ ③ツバメ ④ハシボソガラス ⑤キジバト
⑥ハシブトガラス ⑦ドバト ⑧ヒヨドリ ⑨ハクセキレイ ⑩カワラヒワ

なぜ、こうした鳥が電線に止まるのか、はっきりした理由は分からないそうですが、三上さんは、以下のような理由がありうるのではないかと考えています。

まず、前提として、人間のそばで暮らすことを選んだ鳥が多いこと。特に都市では、比較的天敵が少なく、人間が出す食べ残しなどを食物にすることも期待できます。

その上で、スズメやハクセキレイなどは、周囲が開けた電線の上で、安全を確認している可能性があると三上さんは考えています。こうした鳥は、巣にエサを運ぶ際に、巣から10mほど離れた電線に1回止まり、周囲を伺うような仕草を見せるといいます。自分が巣に戻るところを天敵に見られ、巣の場所を特定されるのを恐れているのではないかというのです。

また、ベスト10には入っていませんが、シジュウカラなどは、縄張り意識が強く、見通しの良い電線の上で、自分の姿を見せ、声を響かせ、存在をアピールしているのかもしれないとも三上さんは考えています。

一方で、ウグイスは、あまり電線に止まらないようです。もともとウグイスは、藪の中に巣を作る傾向にあります。ウグイスの鳴き声はすれども、姿がなかなか見えない、という経験をした人もいるのではないでしょうか。そうした周囲から見えにくい藪で動くのが得意なウグイスは、電線のような見通しの良い場所は好まないのではないかと、三上さんは想像しています。

こうしてみると、その鳥の先天的な行動が、電線を利用するかどうかに大きく影響しているのかもしれないと思えてきます。ただ、どれも仮説の域を出ておらず、これからさらに研究を深めていきたいと、三上さんはおっしゃっていました。

番組後半では、スズメの巣についてのお話を伺いました。

スズメは、狭い隙間や穴を好んで、巣を作る傾向にあります。大きな天敵に襲われにくくなるというメリットがあるようです。この「隙間が好き」というのは、スズメの先天的な行動だと、三上さんは考えています。

一方で、スズメは昔から人工物をうまく利用して巣を作ってきましたが、時代とともに変わる人工物の変化にも上手に対応してきたのだといいます。

例えば、スズメは、昔、茅葺や藁葺屋根に巣を作っていました。茅や藁を少し抜いて、隙間をあけて、その奥に巣を作る姿がよく見られました。

茅葺や藁葺の屋根が減り、瓦屋根が増えると、スズメは「別の穴」を探します。軒先と瓦の間にできるわずかな隙間です。

この隙間は、漆喰でふさいでいましたが、劣化すると穴が開きます。そこからスズメが入り、奥に巣を作っていたのです。この隙間のことを指す「雀口」という言葉も生まれました。
ただ、最近は、この雀口を板金やプラスチックでふさぐようになり、劣化が起こりにくくなりました。このため、雀口から中に入り、巣作りをすることも難しくなってきていると、三上さんは言います。
三上さんは、以前、岩手県で、住宅の作られた年代とスズメの巣の数の関係を調査したことがあります。
その結果、1999年~2008年に作られた住宅地では、1970年~1986年に作られた住宅に比べて、100平方メートルあたりの巣の数が、約1/4だったことが分ったのだそうです。三上さんは、高気密の住宅では、スズメが巣を作るための隙間が少なくなっているからではないかと考えています。

他に、隙間はないのか…。スズメが見つけたものの一つが、電柱に取り付けられている腕金です。

電柱から横に伸びるように、四角い細長い、パイプのようなものが伸びています。電線を取り付けたり、バケツのような形をした変圧器を乗せたり、通信設備を設置したりするものです。四角いパイプの中は空洞になっています。ここに、スズメが巣を作っているのです。

ただ、この腕金も、最近、空洞をふさぐ蓋が付けられるようになりました。スズメが腕金に巣を作ると、それを狙って、蛇などが電柱を登り、電線に触れてしまいショートする恐れがあるからだということです。

こうした隙間が減っていく中で、今後、スズメの数はどう変化していくのか。三上さんは、その行く末は、まだ分からないといいます。
今後、隙間がどんどん減って、減っていくのかもしれません。

一方で、たくましく隙間や穴を見つけて、数を維持するかもしれません。
例えば、札幌市内を少し歩いてみても、スズメは町の中の様々な隙間を見つけ巣を作っていることが分かります。

信号機の支柱のほんのわずかな隙間や・・・

商業ビルの排気口。

街灯の裏にあるちょっとした穴にも巣を作っていました。

こうした動きとは別の選択をするスズメが出てくるかもしれません。隙間にこだわらず開けた場所に巣を作り、その子孫が繁栄する・・・短い時間では起こりませんし、開けた場所に巣を作ると天敵に襲われやすくなるのでその可能性は今のところ高くないと三上さんは考えています。しかし、長い時間をかけて、スズメが今持っている「隙間に巣を作る」という先天的な行動が変わることも、理論的には否定できないともおっしゃっています。

鳥の姿をつぶさに見てみますと、人間にとっては些細かもしれない変化が、生態系を含めた自然環境に確実に影響を与えているということが、改めて明確に見えてきます。そして、それが、もしかしたら鳥の「先天的な行動」をも変化させていくかもしれないと思うと、色々考えさせられるものがあります。

そのほか、カラスと電柱とのかかわりについてもお話を伺いました。
すずめも含めて、より詳しい内容は、こちらのブログもご覧ください。
野村優夫アナウンサーのブログ

「適応能力の限界点はどこにある?」

「知床の森ではカラスに注目!?」

5月10日~16日は愛鳥週間です。野山に出かけて、野鳥を観察するのは、とても素敵なことです。
一方で、町の中で、電柱や電線を利用する鳥を見ながら、その鳥の森の中での姿や人間との関係に思いを馳せるのも、楽しいひとときになると思います。

4月28日午後8時ごろから1週間は、こちらから、聞き逃し配信もしています。是非お聞きください!

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