札幌からJRとバスを乗り継いで3時間。
やってきたのは豊かな森林と、とびきりの寒さで有名な道北の下川町。

1か月お邪魔するのは、 静岡出身、はじめて北海道で冬を迎えるNHK札幌局の小林ディレクター。なんでも寒さが大の苦手だそうで、カイロを体中に貼って下川での滞在を始めました。

笑顔で迎えてくださったのは、今回のローカルフレンズ、谷山嘉奈美さん。おととし道外から下川町へ移住してきました。
谷山さんが手にしていたのは、山で採れたトドマツ。


下川町のトドマツを使って作るのはリース。一体、何に使うのでしょうか?
谷山さんは一昨年に下川町に移住して以来、サウナを事業化したいという思いがあります。
詳しく話をしたいと思ったら、ディレクターを置いて、札幌へ行ってしまいました。
3日後。
札幌へ行った谷山さんからビデオレターが届きました。なにやらその背景にはサウナが見えます。

これが谷山さんの「サウナトラック」。軽トラックの上にサウナを載せたもので、移動もできてしまいます。サウナは下川町の木材でつくられていて、薪も下川産。
札幌に行く前、下川町で作っていたリースはこのサウナに飾るためのものだったのです。

札幌市内のホテルの中庭で、下川町の魅力が詰まったサウナをお披露目していたのです。

出張から帰ってきた谷山さん。その表情は安堵に包まれた笑顔。
サウナに入った人が、みんなにこにこしていて。すごくいいなと思いました。
谷山さんには、下川町を拠点に出張サウナを走らせたいという思いがあります。 そのために作ったのがさきほどのサウナトラック。実は町の人の応援なしでは実現できなかったのだとか。
谷山さんを応援した町の人を訪ねてみます。

カレー店を営む栗岩英彦(くりいわ・ひでひこ)さん。かつて自作のトラックで、全国を旅した経験の持ち主です。

その経験を聞き、谷山さんはサウナトラックの模型を抱えて栗岩さんの元を訪ねます。栗岩さんは自身の経験を踏まえ、サウナトラックの設計にアドバイスしたそうです。
さらに、地元の建設会社やガイドも協力。木材の調達から組み立てまで、町の人が一丸となって、サウナトラックの製作が進んでいきました。こうして素敵なサウナトラックが完成したのです。

(左)森林ガイドの藤原佑輔さんも協力者のひとり

一昨年、下川町に移住してきた谷山さん。どのようなきっかけや思いでこの町にやってきたのでしょうか。
移住する前は、名古屋で保健師をしていた谷山さん。仕事が忙しく、いつもなにかに追われる感覚があったそう。

忙しい仕事の合間を縫って、行き先の分からない「ミステリツアー」に参加。連れていかれたのが下川町だったのです。このとき、下川町に「一目ぼれした」のだそう。
そして、それまで趣味として取り組んでいたサウナやジビエ料理の活動を下川町で事業化したいと、移住を決めました。

しかし、移住してからわずか3ヶ月後。大きな手術が必要な病気が体に見つかりました。
死ぬのかもしれないって考えたら『まだ死にたくない!』と思って。サウナも、ジビエ料理も、やりたいことがいっぱいあったんです。

去年手術が終わり下川町へ戻ると、町の人たちは再び谷山さんの背を押してくれました。
この日、谷山さんが訪ねたのは薪店を営む富永紘光さん。サウナ用の薪を買いに行ったのです。

富永さんは谷山さんが町に戻ってきたときのことをこう振り返ります。

熱い気持ちは、さらけ出しちゃったほうがいいんだよって。その思いに、町の僕たちものっかっていけるから。
薪を買いに行ったはずの谷山さんは、帰り道なぜだが鹿肉も手にしています。
富永さんから譲ってもらったというのです。

富永さんからいただいた鹿肉で一品。ジビエ料理の腕もピカイチです。
町の方が谷山さんを応援する姿、そしてひたむきで真っすぐな谷山さんの姿、下川町の町のあたたかさが伝わってきます。
豊かな森林と町の風景に一目ぼれして飛び込んだ下川町。町の魅力を町民へ、そして町外の人へも届けていきたい。周りの人も思わず応援したくなる谷山さんの人柄で、谷山さんの取り組みは町の人たちの楽しみにもなっていました。

