みなさんは寝台特急「北斗星」をご存じですか。東京・上野と札幌を27年間に渡って結び、移動中も旅の思い出を作りたいと家族旅行や新婚旅行で大人気に。多くの人の夢を乗せて走りましたが7年前、車両の老朽化などに伴い惜しまれつつ引退しました。
そんな北斗星の“再出発”に、多くの人が思いを寄せたというお話です。
初回放送:2022年6月25日(土)あさ7時55分〜

地元・北斗市ににぎわいを
仕掛け人は澤田導俊さん。本業は地元・北斗市で100年以上続く米屋の4代目です。人口が減り続け、にぎわいが少しずつ失われていく地元の状況にさみしさを感じていた矢先、学生時代より憧れをいだいていた北斗星の引退を知りました。
「とにかく食堂車のあの明かりの色と、大人が乗っているあの雰囲気がすごく見ていても伝わっていたので、本当憧れの列車のひとつですね」
北斗星で地元ににぎわいを取り戻したい!6年前、商工会の仲間たちと北斗星の保存活動開始。クラウドファンディングも活用し、およそ1700万円集めました。

北斗星を茂辺地駅近くに展示すると人気スポットに。車内に用意したノートには、たくさんの思い出が記されていました。
「修学旅行で乗りました。当時の懐かしい記憶がよみがえります」
「新婚旅行で函館から上野まで乗りました」
「今度これに泊まりたいもんです」
どのようにこの列車を活用していくかとずっと考えていた澤田さんたちにとって、このノートが一つのヒントになったといいます。

当時の面影そのままに
宿泊施設として再出発するにあたり、現役当時の雰囲気を残そうと、JR北海道などに問い合わせて、純正の色の専用塗料を取り寄せ塗装しました。2段ベッドやシャワールームもそのまま使用しています。

さらにオープン前には、鉄道愛好家を招待し宿泊体験会を行いました。
「この個室懐かしい」
「ベッドの上段が子供のころから好きだった」
「ここにはしごあるね」
中には北斗星の模型を持参した人も。

翌朝の検討会ではこんな意見も飛び出しました。
「今回泊まって改めて思ったのはこの施設は『旅情』です。ぜひ外に『駅名看板』付けてください!夜まっ暗になってちょっと照らされているとますます『旅感』が出る!!」
皆さんから集まった意見を、澤田さんは丁寧にメモしていきます。

オープン当日には、10年前家族旅行で乗車したという男性が。当時の思い出を感じに来たそうです。通路に設置してある椅子に座ると、
「この椅子がすごい好きで座ってずっと車窓を見るんです。すごい贅沢な時間でした」
そして、車内を見て回るうちにふとある思いが頭をよぎったそうです。
「車両がここで保存されて、それで終わりかなと思ったら宿泊施設に生まれ変わるなんて本当に幸せな人生、幸せな生き方をしているなと。実はそっちの面で人になぞらえてしまって、うるうるするところがあるんですよね」

「お客さんの喜んでいる顔を見るとやっぱりうれしくなります。やったかいがあったと心から思います」
と話す澤田さん。
再び多くの人の思いを乗せて動き出した「北斗星」。これからどんな夢を見せてくれるのでしょうか。
(取材 NHK札幌 堀若菜)
※この北斗星の車両を使った宿泊施設「北斗星スクエア」の予約は、大手インターネットサイトからのみ宿泊予約を受け付けています。(2022年7月21日現在)
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