NHK札幌放送局

コメ余り克服へ ある農協の模索

ほっとニュースweb

2021年12月22日(水)午後5時27分 更新

「12%、来年作る主食用のコメを減らしましょう」

こんなことが今月開かれた、道や農協などがつくる協議会で決まりました。

「12%減らす」というのは、コメ農家にとっては衝撃的な数字。厳しい事態に直面し、「水田をわざわざ減らすよりも維持したい」と新たな道を探る産地も出てきています。

コメ、まだまだ作る余力があるのに…

「うちの村、まだ50%しか水田を使っていない、いまは。まだまだ余力があります」

そう語るのは、石狩の新篠津村の農協を率いる早川仁史組合長。

新篠津村は人口およそ3000人、札幌市から北東に車で1時間足らずの地域ですが、道内でも指折りの米どころです。

新篠津村農協 早川仁史組合長

早川組合長の言葉の裏には、作りたくても作れないという歯がゆさがあります。

12%減の衝撃

今月、道や農協などがつくる協議会は、コメの生産の目安を公表しました。

毎年、生産者に対して示している、この目安、来年はことしより6万4000トンあまり減らし、46万3196トンとすることが決まりました。削減の割合は12.2%。2018年の生産から目安を示すようになって以来、最大の削減幅です。

北海道農政部 新井健一生産振興局長
「ニーズに合わせた生産を進めることによって需給バランスを改善していきたい」

コメの生産量を削減する背景には、新型コロナウイルスの影響などに伴う消費低迷があります。感染拡大で外食が控えられたこの2年、業務用を中心に消費が落ち込み、ことしも主食用米の作付けを前の年より7.2%減らしていました

さらに思わぬ影響が加わりました。例年にない豊作です。

ことしの夏は気温が高く、日照にも恵まれました。道内の作柄は、平年並みを100とした作況指数で108。平成17年以来の高い水準になりました。

この結果、道によりますと、道内産米の在庫の量は、ことし10月末の時点で去年と比べて10%増えて、およそ37万トンに。新米の取引価格も10月末時点で、主力品種の「ななつぼし」が去年より12%、「ゆめぴりか」も4%値下がりしました。

農業関係者の間では、引き続き来年の生産も大幅に抑えなければ、コメ価格の下落は避けられないという見方が強まっていたのです。

輸出でコメ生産維持を目指す

大幅削減に直面し、輸出に活路を見いだそうとしているのが新篠津村農協です。

輸出を始めたのは、7年前の2014年。取引先のおにぎり店を展開する企業がアメリカに進出するのに合わせ、ななつぼしの玄米を輸出したのが始まりでした。

それからコメの輸出量は年々増え、アメリカに加えて、フランスとシンガポールのあわせて3か国に主食用米を輸出するまでに成長しました。

海外でのコメの人気に早川組合長は手応えを感じています。

新篠津村農協 早川仁史組合長
「日本人の方々は、たいてい、おむすび1つと惣菜1つとお茶1本、だいたい1コインという昼食の取り方をするんですけども、アメリカの方って大きなおむすびを2個は食べるんですよ。そういうことは消費の量が圧倒的に違うんですよね。そういうところに持って行くと、われわれのコメを作りたい、食べていただきたいという思いと消費の量が合致するわけですよね。なので、アメリカやフランスについてもかなり力を入れているんです」

コメ生産ににじむ「使命感」

早川組合長が輸出にこだわるのは理由があります。

新篠津村は、泥炭地でかつてはコメ栽培が困難な地域でした。戦後になって、村に排水施設を整備し、昭和30年代になってようやく安定してコメ作りができるようになりました。

長年の苦労の末、整えた水田。だからこそ、思う存分コメ作りがしたいという願いがあります。

新篠津村農協 早川仁史組合長
「うちの村はすごく水田に向いている村なんですよ。これをわざわざ減らすよりも、維持したいと。で、みんなも田んぼを作りたいっていう思いがあったんで、そうすると輸出という枠を持つとその分だけが田んぼを作れるという発想です」

年々伸びている輸出、ことし生産されたコメはおよそ120トンと去年産のおよそ3倍に上る見通しです。来年2月には新たに台湾への輸出にも乗り出す予定です。早川組合長がチャレンジを続ける原動力、それは「使命」だと力を込めました。

新篠津村農協 早川仁史組合長
「おいしいお米をちゃんとお客さんの食卓まで届けるというのが最大の使命だと思っています。 食文化も含めてお米という文化を継承するための努力を最大限していかなければならない

「使命」、そして「食べていただいて、おいしいって言われるのがどこの国の方でも喜ばしいこと」。組合長のインタビューの中で印象に残った言葉です。

消費者、生産者や産地を守るだけでなく、日本の大事な食文化のために力を尽くしたいという組合長の情熱が今後、どう展開していくのか、注目です。

札幌放送局 山口里奈

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