広尾編のローカルフレンズ・昆布漁師の保志弘一さんは基幹産業の漁業が衰退する広尾町で、「町にはまだまだ沢山の宝がある」と活動している。
町の宝、町の魅力とは一体なにか。広尾編の最終週は、熱き昆布漁師・保志さんに再びカメラを向けた。

滞在23日目。
「船どりの昆布漁」に同行させてもらった。
雨が降らず海が凪いでいる時に限られる、特別な漁だ。
その数、年にわずか10回ほど。
漁が始まる1時間前。
はやくも戦いは始まっていた。

昆布漁は父・保弘さんと親子二人三脚
「まだまだ深い」
潮の動きを考えながら、良質な昆布が獲れる場所を探っていく。
「まだ時間ある?」
「あと15分くらい」
次第に、船上の空気が張り詰めてきた。
「ピー」
笛を合図に漁が始まる。


その日の気候条件にあわせて、
漁の時間が定められている。
この日は4時間半。1本勝負だ。
船の上はまるで早回しの世界。
いかに多くの昆布をものにできるか、漁師の腕の見せどころだ。


開始30分後。船から溢れ出さんばかりの昆布。
古くから北海道沿岸で行われてきた昆布漁は、今もほとんど姿を変えずに続いている。


しかし、今年は例年より質の高い昆布が少ないという。
名人の福田さんも「全然話にならない」と嘆く。

赤潮の影響かと聞くと「オレ、科学者でねえから分からない」と笑った。
気候変動、赤潮、原油価格の高騰。 漁師町を取り巻く状況は、年々厳しさを増している。
「それでも広尾から漁業の活気を失わせたくない」
保志さんは、地元の高校生を招いて昆布の体験授業を行った。

伝えたいのは、広尾町にはまだまだ宝が眠っているということ。
「こういうもったいないものも価値にできたら…」
保志さんは、製品化する際に出る、切れ端や屑を使い、昆布100%のうま味調味料を開発した。

その名も「星屑昆布」

保志さんが目指すものとは。
「自分の仕事は、単純に漁業っていうよりも、食文化そのものって考えられないか。それがもし世界に広がったらこの地域で昆布やってる人たち、全員あなたたちの仕事っていうのは、世界に誇れる仕事なんですよって言ってあげる、そういうものになる。 今はそこを目指している。」
広尾町には、まだまだ宝がある。

町の若者が開催したバドミントン大会。半数以上は町外からやってきた人だという。

「酪農で新規就農がしたくて。来た時に驚いたのは、草地がすごい平らな所が多いこと」そう語るのは札幌から移住してきた竹田全さん。
愛媛から移住した澤村拓也さんは、自分の住みたいところ、働きたい場所を探すために日本一周。その道中、広尾町に惚れたという。
「気候と景色と、あと食。食に関しては農から海まで一次産業が全部揃っているので最高だなって」


「地域も家族も関係する人たちも仕事も、引き継いできた昔から変わってないっていう文化そのものも含めて、ここで生きていること、ここにいる人たちと今一緒にいることを全力で誇りたい。」

広尾編のローカルフレンズ・昆布漁師の保志弘一さん。
熱い思いと取り組みを支えるのは「この町が好き」という純粋な想いだった。
以上



