NHK札幌放送局

犬のがん『血管肉腫』を治したい!

ほっとニュースweb

2023年1月13日(金)午後1時22分 更新

犬がかかる悪性のがん、「血管肉腫」。がんが血管を通じて全身に転移するがんで、年間およそ1万3000頭の犬が死ぬといわれています。その治療法を探そうと、北海道大学の研究者がことし、新たな研究に取り組んでいます。支えになっているのは、飼い主たちの願いでした。

犬のがん『血管肉腫』

研究を進めているのは、北海道大学大学院・青島圭佑助教のチームです。

研究チームでは、がん細胞を1つ1つ解析し、がんができる仕組みなどを明らかにすることで、治療法を探しだそうとしています。

青島圭佑助教
「血管肉腫は今のところ全く有効な治療法がなく、診断されてから1年以上生きることが難しい、悪性のがんです。そのため、愛犬が診断された時に、医者から『いい治療法はありません、覚悟してください』といわれることが多いんです。治療に希望が持てないということは本当に悲しいことですし、私たちも獣医師としてそれはなんとかしてあげたいという気持ちが日頃からあったので、この研究を始めました」


この研究を、必要とする人も

研究には、飼い主たちから大きな期待が寄せられています。

札幌市内に住む50代の女性は、おととし3月、愛犬が血管肉腫だと診断されました。手術や抗がん剤の治療も受けましたが、診断から4か月で命を落としたといいます。

「無事に何事もなく寿命をまっとうしてくれればいいなと、飼い主の皆さんは漠然と思っていますよね。でも、犬を飼っている友だちにも愛犬ががんになったという話も聞いていたことがあるので、診断された時には『ああ、うちのもか…』とは思いました。
『これがダメならこっちを試してみよう』という治療に選択肢が少しでも見つかれば、飼い主にとっては本当に希望になるんです。研究にはお金も時間もかかるということは理解していますので、すぐに治るとか寿命が延びるとかまでたどりつかなかったとしても、効果のある薬や方法が見つかって、一緒にいられる時間が少しでも長くなってくれれば良いなと思っています」


研究を進めるには壁も…

しかし、研究に必要な資金の確保は、簡単ではありません。
青島さんによりますと、国や企業からの研究のための補助金は、“人の健康”や“社会の役に立つ”研究が対象だということで、犬のがんの研究費は集めにくいといいます。

青島助教
「国や民間の研究助成財団では、動物の治療に研究資金を助成しますとうたっている団体は、正直僕としては見たことがありません。さらに、動物の中でも特にペットの研究というのはなかなか研究資金を得ることは難しいんです」

そこで青島さんたちは、「クラウドファンディング」で資金を集めることにしました。すると、2か月間で目標額の200万円を大幅に超える、あわせて520万円の寄付がありました。さらに、研究を応援する、多くのメッセージも寄せられたのです。


資金集め以外の効果も

青島さんのもとで研究にあたっている病理医の鈴木玲海さんは、寄せられたメッセージから、この研究の意義を、あらためて実感したといいます。

鈴木玲海さん
「私は病理医なので、病気になった犬に直に接することはなく、細胞やマウスを使って実験することが主ですが、クラウドファンディングを通じて、応援してくださる方がたくさんいるんだなということが分かり、よりこの研究をする意義というものを確かめることができて、本当によかったです。いただいたメッセージ1つ1つを大切にして、血管肉腫を根治できるような研究ができるよう、頑張りたいと思います!」


研究費を集める“第3の選択肢”に

研究の機会を、自分たちで作り出した青島さんたち。クラウドファンディングは、ヒトを対象としていない研究や、基礎的な研究を可能にする、新たな手法だと感じています。

青島助教
「これまでの研究スタイルは大きく2つに分かれていて、1つは研究者が『この研究を進めたいから資金をください』という方法と、もう1つは国や企業が『この研究を誰かやりませんか』と研究者を集める方法でした。しかしそれでは一般の人たちの意思は反映されていないのではないかなと思ったんです。そこで、研究を社会全体で一緒に盛り上げていこうというクラウドファンディングのやり方は、第3の選択肢になり得る、新しい研究のスタイルだと僕は思っています。
今回のクラウドファンディングではたくさんのご寄付をいただいて、スタートラインに立つことができました。今後10年20年かけて血管肉腫の研究をぐっと大きく発展させていきたいなと思っています」

青島助教の研究チームでは、今回集まった資金で、すでにある抗がん剤の中で血管肉腫に効果があるものはないか見極めたうえで、資金が続く限り、治療法の発見を目指して研究を続けたいと話していました。

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