
市川さんは役職がデスクとありますが、一般企業ではどのポジションになりますか?
市川:難しいですね……。あえていうなら係長といったところでしょうか。
ではご自身も現場にも出ながら、スタッフの管理・指導、職場の環境整備もされるということですか?
市川:そうですね。本音を言えば現場で自ら担当したい気持ちもありますが、後輩たちをまとめながらメンバーの成長を見守るというやりがいもあります。
NHKに入局して何年ですか?札幌は長いのですか?
市川:入局24年目です。恵庭出身で、初任地は旭川局で音声を担当していました。その後、札幌、東京に異動しました。東京ではVEシステムを担当し、連続テレビ小説「あまちゃん」、「NHK紅白歌合戦」などを担当しました。またロンドンオリンピックで8K放送のシステムを組んでの実験放送の実施や、カンヌで上映した世界初の8K映画制作の担当もしました。その後、旭川局を経て再び札幌局での勤務となりました。
色々な経験をされてこられたのですね。連続テレビ小説や紅白など、NHKを代表するコンテンツですよね。そうした仕事に携わりたいという憧れは皆さんあるのではないですか?
市川:個人的には、特別そういう気持ちはなく、「ある山を登るだけ」というか「やることを一生懸命にやるだけ」という感覚でした。オリンピックの8K実験放送のように、当時の放送技術の最先端に携わる仕事を担当できたことは大きな財産です。
東京から帰ってきて札幌局はどうでしたか?
市川:職場のメンバーがお互いの意見を尊重するなど、風通しの良い環境だと思っていますが、自分ではなんとも言えないです。後輩から見て、自分がどう見えているか分からないですからね。こちらから話しかけていかないと、後輩も私の忙しい姿を見たら話しかけられないでしょうから、話しかけ易いように自ら話しかけたりするようにしています。それが風通しの良さにつながっているのかは、私にはわかりません(笑)
職場のみんなが気軽に意見をできる環境づくりはとても大切ですよね。市川さんは、今回の「北海道道」も含めて、現場ではどのようなお仕事をされているのですか?
市川:担当ディレクターから番組演出の構想を聞きながら、カメラや音声、照明などにどれだけのマンパワーが必要か、どれだけの準備期間等が必要かを検討します。そしてその番組演出が技術的に実現できるのか、難しければどう解決できるのか、コストとのバランスも考えながら最善の策を検討しています。
番組演出を技術的な面から支えているのですね。「北海道道」では、どのようなところに苦労されましたか?
市川:実は、想定外のことがいくつか発生しました。1番は、新型コロナウイルスの影響で出演者が全員リモート出演になったことです。特に音声面でハードルがありました。技術的な工夫を何もしないと、リモート出演の音声が衛星放送みたいにかなり遅れて届くのです。トーク重視の番組なので、なるべく音の遅れが発生しないようにシステムを設計するのに苦労しました。次に、WEBを通してリモート出演するシステムを構築したのですが、可能な限り画面の乱れがなく、レスポンスの早いシステムを構築していくというのが大変でした。
リモート出演が気付けば定番になりましたもんね。何気なく見ていましたが、スムーズなトークを実現するためには工夫が必要なのですね。
市川:新型コロナウイルス感染拡大防止対策では、これまでは考えられなかった課題も露呈し、これをきっかけにある意味、技術革新は進んだと思います。私自身も今まで無かった知識が身に付きました。似たようなシステムで放送しているところもあると思いますが、音声が遅れることでトークが重なってしまう場面を見かけます。今回、この現象を極力少なくできたことは、誇れるところかと。出演者の方々に気持ちよく、違和感なくトークしてもらえないと、視聴者の皆さんも番組に集中できないと感じています。
これから番組を見るとき、技術的なことが気になってしまいそうです(笑)ご苦労も多そうですが、休日はどのようにリフレッシュしていますか?
市川:映画鑑賞とサウナですかね。映画は年間100本近く見ます。話題作も見ますが、単館でしかやらないようなドキュメンタリーものをかつて東京や福岡まで見に行ったこともあります。
映画が本当にお好きなんですね。インドア派ですか?学生時代は何かスポーツなどされていましたか?
市川:一時やっていなかった時期もありますが、スピードスケートはライフワークになっているかもしれません。中学の時にスケート部だったのですが、北海道でベスト8までいきました。その時はオリンピックに行きたいと夢みていました。今でも1人で帯広まで行って続けています。高専の時はアーチェリー部で、北海道で3位になりました。
改めて思い返すと、学生時代の部活はすべて個人競技でしたし、入局後数年は自分の技量・スキルを高めることばかり考えて、チームワークという視点が自分には欠けていたかと。今こうしてデスクという「まとめる席」を担当させてもらえるのは、会社に育ててもらったと思っています。
【市川 一宏 プロフィール】
■局歴:1996年入局
札幌拠点放送局 技術部
■出身:北海道恵庭市
■趣味:サウナ、映画鑑賞(年間100本ほど見ます)
■学生時代の部活:スケート部(スピードスケート)、アーチェリー部
