札幌市西区の三角山で男性2人がヒグマに襲われた事故から2週間たちました。札幌市内では去年(2021年)、市街地で人が相次いで襲われる被害もありました。クマの活動が活発化するシーズンを迎えた今、思わぬ被害を防ぐためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか。
三角山はいま
3月31日、札幌市西区の三角山でヒグマの生態調査を行っていた男性2人がクマに襲われ、それぞれ頭と腕にケガをしました。
これを受けて札幌市では巣穴の近くにカメラを設置して警戒を続けていますが、現在のところクマの姿は発見されていないということです。
このため市では、三角山をめぐる歩道を通行禁止にしたうえで、看板を設置して注意を呼びかけています。
近くに住む50代の男性
「22年住んでいて、三角山でクマが出たことはなく、このあたりに住む人たちは『三角山は大丈夫だよね』と思っていた。クマが暮らす地域が広がって、こちらに近づいてきている感じがする」
札幌市は、当面はカメラで巣穴の監視を行い、三角山の歩道の閉鎖も続けることにしています。
2021年度 札幌市内のヒグマ情報2倍近くに
札幌市の調べによりますと、2021年度、札幌市内で確認されたヒグマに関する情報は185件と前の年度の2倍近くに上っています。
2021年6月には東区の住宅地にクマが現れて歩行者を襲い、4人が重軽傷を負いました。

札幌市内でクマに襲われて人がケガをしたのは、2001年以来のことでした。
札幌市によりますと、2021年度にクマの情報が確認された地域は南区で113件ともっとも多く、ついで西区で30件と山あいの地域では多くの情報が寄せられました。
一方で、住宅地が多い北区で4件、東区でも2件情報が寄せられ、出没する地域の拡大がうかがえます。

いまヒグマとどう向き合う?
北海道大学獣医学研究院の坪田敏男教授は、早急な対策が必要だと警鐘を鳴らしています。
坪田教授は、2021年度、札幌市内の住宅街でもクマが確認されたことについて
「クマのもともとの生息地は『奥山』と呼ばれるところで、札幌近隣でいえば定山渓や余市岳が本来のすみかだ。そこから山が続いている南区や西区はクマが出やすい場所だった。北区や東区に出ているということは、今度は別のルートからクマが入り出しているということだ」

「クマの数が増えたため、分布が拡大してきたという端的なあらわれで、クマが移動する時に市街地に出てきてしまう可能性が高くなっている」
個人ができる対策は
坪田教授は、日常的な対策としては、まずはヒグマが好む生ゴミの処理を正しく行い、クマが近寄らないようにすることが重要だとしています。
万が一、遭遇してしまった場合には「少しずつクマとの距離を取る。クマは人を襲いたいと思っているわけではないので、危険な距離さえ回避できればクマの方が逃げていってくれる。慌てない、逃げないことが大事」と話しています。
山菜採りなどの目的で山に入る人たちの対策としては「冬眠から覚めたクマにとっても山菜は重要な食べ物なので、山菜があるところにはクマがいると思うべきだ。山菜採りに夢中になりすぎず、声を出したり、手をたたいたりして、人の存在をクマに知らせてほしい」としています。
一方、三角山で人を襲ったクマについては、身の危険を感じて巣穴に戻ってくる可能性は低く、どこにいるか分からない状況だとして、歩道の通行が禁止されている間は決して山に入らないでほしいと話しています。