更別村で5月に「コミュニティナース」という新たな地域医療の取り組みが始まりました。「ナース」といっても勤務するのは病院ではありません。どのような取り組みなのか、活動に密着しました。
(NHK帯広・前嶋紗月)
奮闘!コミュニティナース
2022年5月、更別村に3人の若者が移住しました。横浜市出身の猪村真由さん(23)、東京都出身の今村智之さん(22)、帯広市出身の西上耶弥さん(22)です。3人は村で5月から活動を始めた「コミュニティナース」です。

コミュニティナース 西上耶弥さん
「村でも徐々に顔が広まってきて、見かけたら声をかけてもらえることもあるのでうれしいです」

コミュニティナース 今村智之さん
「村の皆さんの生活や健康を支えていけたらなと思っています」

コミュニティナースって?
「コミュニティナース」は島根県の企業が提唱し、全国で取り組みを進めています。病院の看護師とは異なり、地域の中で住民の健康づくりに関わります。医療行為は行わないため看護師の資格が必ずしも必要というわけではありません。自治体がコミュニティナースの活動に取り組むのは道内では更別村が初めてで、お年寄りの病気の早期発見や健康な生活の手助けが期待されています。

お年寄りたちの健康を見守る「コミュニティナース」は企業側から村に派遣されます。更別村には企業の社員でもある猪村さんたち3人が派遣されました。派遣期間は来年3月までで、村のアパートに住み込みで活動に取り組みます。6月末までの事業費358万円は、地方の活性化につながる自治体の取り組みに企業が寄付を行う「企業版ふるさと納税制度」の仕組みを利用して村がまかないました。

“100歳までワクワク”の村づくり
人口3100人余りの更別村は高齢化率がおよそ31%と、年々、人口減少が進んでいます。そんな村が掲げるのが「100歳になってもワクワク働けてしまう奇跡の農村」という目標です。お年寄りの生活の質を高める村づくりを目指しています。
更別村 西山猛村長
「高齢者が幸せになるということはみんなが幸せになるということなので、みんなが笑顔で暮らせる村をつくっていきたいなと思っています。若者たちには移住し、生活の中に入って高齢者の皆さんとふれあって活動してもらっています。高齢者の生活の不安を取り除くことは行政の手がまだ届いていませんので、そういったところもしっかりカバーしていかないといけないと思っています」

「元気なうちから」見守る
コミュニティナースの大きな特徴は「元気なうちから」お年寄りを見守ることです。このため3人は、ゲートボール場や編み物教室などお年寄りたちが集まるさまざまな場所で活動に取り組んでいます。ゲートボールなどの休憩時間にもお年寄りに暮らしのようすを聞き取ります。取材したこの日もお年寄りの毎日の食事の状況について聞いていました。お年寄りたちと普段からふれ合うことで様子の変化などから病気のいち早い発見にもつなげようとしています。

村の住民
「若い人と接すること自体が少ないので彼らのような存在は大歓迎です」

「すごく素直でみんないい子です。エネルギーをもらっています」

大学を休学しコミュニティナースに…
コミュニティナースの皆さんはどのような思いで活動に取り組んでいるんでしょうか。猪村真由さん(23)はこの春、コミュニティナースの活動に取り組もうと看護を学ぶため通っていた大学を休学し、横浜市から更別村に移り住みました。
コミュニティナース 猪村真由さん
「地域に根づいた身近な人との関わりというのを強くやっていきたいと思っています。その実践の場として更別村で地域に根づきながら看護を生かした活動がしたいなと思ってこちらに来ました」

活動を始めたばかりの3人は多くの村の人たちにコミュニティナースの取り組みを知ってもらおうとPR活動にも力を入れています。お年寄りも多く訪れる村の美容室を訪れて、活動について記したチラシを手渡しました。

「先月来てたけど今月来なくなったなとか、ちょっとしたことから病気の発見にもつなげていければと思っています。この美容室でも一緒にコミュニティナーシングを広げていっていただけたらなと思っています」

美容室の店主
「こんな小さい村でも3人も来てくれてありがたいと思います。住民のためにもなってくれればと期待しています。活動を応援しますよ」

コミュニティナース 猪村真由さん
「予想以上に温かく受け入れてくださる村民の方が本当に多くいらっしゃるなという印象を受けています。本当に村の人たちに感謝の気持ちでいっぱいです。自分たちが少しでもお力になれたらなと思っています」
更別村 西山猛村長
「地域の住民に寄り添ってまちの保健室的な役割を果たしてもらえれば、私としては非常にありがたいなと思っています。コミュニティナースの皆さんには大いに期待しています」
コミュニティナースの3人の中には首都圏だけでなく地元、十勝出身の人もいます。皆さんの活動で村にどんな変化が生まれるのか、3人の今後に注目です。
私たちは介護・医療現場の課題やその解決策について道東の皆さんといっしょに考えていきたいと思っています。介護や医療についてあなたが感じている身近な悩みや困りごとなど、皆さんの声もぜひお寄せください。
2022年6月17日
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