NHK札幌放送局

なぜ「間引き運転」するの? #シラベルカ

シラベルカ

2022年3月15日(火)午後0時21分 更新

皆さんの疑問に答えるNHK北海道の取材チーム「シラベルカ」。今回は、2月に相次いで起きたJRの大規模な運休に関する質問をいただきました。

「大雪で運休したJR。除雪が終わって運行を再開したならば、すぐに平常どおりのダイヤで運行すればいいのに、どうして大幅に間引いて運転するのでしょうか?」

さっそく、調査開始です。まずは、NHKが撮影した映像から、運転再開のあとのようすを探ってみることにしました。

運転再開! 時刻表に並んだバツ印の謎

2月6日から8日にかけてと、20日から22日にかけての大雪で、JR北海道は2度にわたって札幌駅を発着するすべての列車を運休しました。この影響で、新千歳空港では4000人あまりの人が足止めされました。

こちらは2月24日午前10時ごろの札幌駅のようすです。このとき、除雪の済んだ札幌と新千歳空港の間は朝から運転を再開していました。ところが・・・。

駅構内に張り出された時刻表を見ると、運休を示すバツ印だらけ。大幅に本数を減らして運転されていたことがわかります。快速エアポートが通常ダイヤに戻ったのはそれから2日後の2月26日。運転が再開されてから2日がたっていました。このような、運転再開後の大幅な運休はなぜ必要なんでしょうか。JR北海道に聞くと、意外な回答が。

JR北海道の担当者
「大きな理由の1つが『車両が足りない』ことでした」

これはどういうことでしょうか。それを知るために、まずは、ふだん列車がどのように運転しているのかを理解する必要があります。簡単な例を使って説明します。

札幌から新千歳空港に向かう快速エアポートを例に考えてみます。

たとえば、平日の午後6時台に設定されている快速エアポートは通常、5本あります。
最初に札幌駅を出発する午後6時ちょうどに札幌駅を出る最初の列車(A)は、午後6時37分に新千歳空港に着きます。午後7時までに札幌駅に戻ってくることはできないので、それ以降の列車の運転のためには別の編成(※いくつかの車両をひとつなぎにして、運転できる状態にしたもの)が必要になります。午後6時台の場合には、5本の編成が必要です。ところが例えば、何らかの理由で車両が足りなくなり、5本のうち2本しか確保できなかった場合、どうなるでしょうか。

このように、3本の運休が起きてしまいます。
これが、車両が足りなくなると運休が起きてしまう理由です。

では今回のケースでは何が起きていたのでしょうか。

車両不足が起きた理由

こちらの札幌と新千歳空港を結ぶJR千歳線と函館線の路線をイメージした図で説明します。


利用客の多い札幌駅と新千歳空港駅の間は、重点的に除雪作業をしたので、ほかの区間に比べて早く除雪が終わりました。この時点では、新千歳空港の隣駅、南千歳駅で線路が分かれる苫小牧方面は、除雪が終わっていない状況です。
札幌と新千歳空港の間で運転を再開します。
実は、この区間を走るための車両は始発駅となる苫小牧駅にも置いてあります。

しかし、苫小牧駅と南千歳駅の区間では除雪が追いつかなかったため、苫小牧駅にある車両を運転可能になった新千歳空港より北、札幌駅までの区間まで持ってくることができませんでした。

しかし、運転するすべての車両を苫小牧駅から持ってくるわけではありません。ほかの駅や車両基地から持ってくるものもあります。こうした車両にも、すぐに使えない理由がありました。それが、検査の問題です。

JR北海道の札幌圏を走る通勤列車では、3日ごとか6日ごとに法律で定められた定期検査を受けることが義務づけられています。検査は、札幌市手稲区にある車両基地でしか行うことができません。今回の大雪では、駅と駅の間に車両が取り残されたり、線路の除雪が追いつかない区間があったりして、定期検査が必要になった車両を車両基地まで運ぶことが難しくなったケースがありました。

こうした理由で、いつもより車両が減ってしまったので、大幅運休につながったということです。

大幅運休 減らすには・・・

では、このような運転再開後の大幅な運休を減らすことはできないのでしょうか。

鉄道ジャーナリストの梅原淳さんに話を聞きました。

鉄道ジャーナリスト・梅原淳さん
「車両の運用の都合だけではなく、安全上の理由からも、運転再開後に本数を少なくすることは避けられません。線路が使えるようになっても、列車が動くことで別の場所から新たな雪を持ち込むことがあります。特に、不具合が起きやすい線路のポイント部分にその雪が詰まって凍結することがあるので、人を待機させて列車が通るごとに除雪作業を行う必要があるのです。安全に作業をするためには、ある程度運転本数を減らして、列車の走る間隔を空ける必要があります。つまり、根本的には、雪による運休そのものを減らしていくしかありません」

JR北海道も対策を検討しています。JRは今後、凍結して運転の障害になりやすい線路のポイント部分へのヒーターの設置や、除雪態勢の強化に取り組んでいくとしています。
また、JRは今回の大雪について、北海道運輸局から運休のあり方や利用者への情報提供の方法などについて検証するよう求められており、報告をまとめることになっています。

専門家”混乱防ぐ仕組みづくりを”

鉄道ジャーナリストの梅原淳さんは、万が一同じような大規模な運休が生じた場合に備えて、再発防止のためにも交通事業者どうしの連携も必要だと指摘しています。

鉄道ジャーナリスト・梅原淳さん
「今回は、新千歳空港には航空便がたくさん到着しているのに、そこから札幌市内へのアクセスができなかったことで混乱が起きました。もし、飛行機の出発前にそうした情報を乗客に効果的に伝えることができれば、混乱の拡大を防げる可能性があります。そのために考えられるのが、JRが航空会社や空港運営会社、代わりの交通手段になるバス会社などに対して、運転状況をリアルタイムで共有できるような仕組みです」

今回の投稿者の方は、新千歳空港に受験生が足止めされた様子を見て、気の毒に思って質問を寄せてくれました。たとえ運休が起きたとしても、大規模な混乱が起きないような対策を講じてほしいと思います。

札幌局
小松大祐ディレクター
渡邉健記者
2022年3月8日放送

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