こんにちは。舛川弥生です。
収穫の秋を迎えたオホーツク地方を車で走ると、たまねぎのコンテナや高く積まれたビートなどを見ることができます。数ある特産品の中でも今回注目するのは「わさび」です。わさびと言っても、緑色の本わさびではなく、白い色をした西洋わさびや山わさびです。意外と知られていないオホーツクわさびの世界をご紹介します。

訪ねたのは山わさびの収穫が最盛期を迎えている斜里町の畑です。北海道とわさびのイメージが結び付かない人もいるかと思いますが、国産の山わさびは90%以上が道内で生産されています。とりわけ網走市から斜里町にかけての一帯は原産地のフィンランドと気候が似ていて、栽培を始めてから50年以上の歴史があるんです。

山わさびの収穫期は毎年10月下旬から11月にかけてで、畑では土から掘り出した大きなわさびを次々とトラクターで収穫していきます。ことしは大きな天候の崩れもなく、作柄は「やや豊作」だそうです。現場でオホーツクの山わさびの魅力を聞いてみると、「辛さの中にほのかな甘みがあって、よりおいしく食べられる」と話してくれました。
この山わさび、“あまりなじみがないんだよね”と感じる人も少なくないですよね。実は私たち、よく食べているんです!!!
スーパーで見かけるチューブに入ったすりおろしわさびの多くは、本わさびと山わさびをブレンドして作っています。山わさびは辛みが強いので、入れることで風味が良くなるんだそうです。
意外と身近なオホーツクのわさびをもっと知りたい!ということで、網走市にある研究所にお邪魔しました。この研究所は道内で収穫した山わさびを加工している「金印わさび」のオホーツク工場に併設されていて、わさびにこだわった研究を行っています。

この研究所ではより辛みや甘みが強い品種を開発しているほか、道内外の産地に供給する年間20万株の苗の栽培を行っています。さらにはわさびの収穫機械の開発まで独自に行って、収穫期には社員総出で畑に出向いて作業するそうです。まさにわさびのプロフェッショナル集団です。

オホーツクのわさびについて伺ったのは研究員のお二人です。わさび一筋で30年以上研究していて、1か月で3,000本のわさびを試食することもあるそうです。

金印わさびアグリビジネス研究所 西田哲郎さん
「わさびは栽培自体は難しくありませんが、手間と時間をかけないとおいしいわさびにはならない。オホーツクエリアで山わさびを育ててくださっている農家さんのためにも、おいしくて収量の安定したわさびの苗の開発をしていきたい」
研究を重ねるお二人の取材では、“おいしいわさびの食べ方”についても話に花が咲きました。この話を参考に私もさっそく自宅で味わってみました。

津別和牛のステーキに山わさびと本わさびを添えて食べ比べてみました。(添えているガーリックは常呂町のピンクにんにく、オホーツク満喫です)
霜降りの肉には辛みが強い山わさびがよく合います。スッキリした後味で、脂っこさを抑えてくれます。本わさびは香りがよく、こちらもステーキをリッチな味わいにしてくれます。ローストビーフに山わさびが添えられていることが多いですが、やはり肉に合うんですね。
ちなみに研究員のお二人がオススメする山わさびの食べ方は、熱々のごはんにすりおろした山わさびをたっぷりのせて、しょうゆをかけるだけ。シンプルにわさびのおいしさをしっかりと味わうことができるそうです。
オホーツクの知られざる特産品とも言えるわさび。歴史を重ねてきた自慢の味をぜひ堪能してみてください。