NHK札幌放送局

若者たちの間で広がる SNSトラップ

北海道クローズアップ

2020年2月21日(金)午後6時14分 更新

ここ数年、若者たちの間で、SNSを利用した金融トラブルが全国で相次いでいます。その多くが暗号資産、いわゆる仮想通貨に関するトラブル。道内に住む20代の女性も、アプリで知り合った男性から『暗号資産』を扱う海外企業の投資を持ち掛けられ、およそ160万円の被害を受けたといいます。被害に遭わないためにはどうすればいいのか。巧妙化する「SNSトラップ」の実態に迫ります。

SNSで広がる「仮想通貨詐欺」の実態

今、SNSを巧みに使った金融トラブルが相次いでいます。その多くが、インターネット上のSNSで暗号資産、いわゆる仮想通貨への投資を勧誘されてお金を振り込み、トラブルになったというものです。全国の消費生活センターに寄せられている相談件数は年々増え、2018年は過去最高の3,600件を超えました。

本来、日本に住む人に対して投資を勧誘し、預かったお金を運用するのは『金融庁などに登録された業者』だけです。もしトラブルになった場合、登録された業者を相手に交渉します。しかし、SNSを使った暗号資産の勧誘についてのトラブルは、この方法で解決することが非常に難しく、お金も返ってきにくいという実態が明らかになってきました。

道南地方に住む20代の女性は、海外企業への投資でトラブルに巻き込まれたといいます。きっかけは、交際相手を探す『マッチングアプリ』。2019年の秋にアプリで知り合った男性とSNSで連絡を取りはじめ、さまざまな相談に乗ってくれる男性に少しずつ信頼を寄せていきました。そしてある日、男性から『稼げる投資』があると誘われます。

そのころ女性は母親の病気を気にかけ、治療費を工面するためにお金を必要としていました。勧誘されるまま、投資家を名乗る別の人物を数人紹介され、メモを渡され詳しい説明を受けたといいます。

投資を勧められたのは『暗号資産』を扱う海外の企業。10%を超える配当が毎月暗号資産で支払われ、その額は1年で140万円あまりになると説明されます。

「公的な機関でやっているから大丈夫と言われたんです。人生変わったって言っていたので、何か信用できたんですよね。」(被害者の女性)

入院中の母親のためになればと、女性は指定された口座に初期投資として160万円あまりを振り込みました。

入金の知らせはSNS上で受け取りましたが、契約の書面などはありません。

そして、数ヶ月後…手に入れたはずの暗号資産は突然『価値がなくなった』と伝えられます。

女性は海外企業に直接問い合わせようとしましたが、日本での登録が無く、契約書面も交付されていなかったため、確認するすべがありません。不審に思いマッチングアプリを調べてみると、投資話をしていた男性がほかにも複数人いたことが分かりました。

「この方、投資のお話しをしていた方です。勧誘目的でアプリを使っているんだと思います。本当にやめてほしい。なかなか気持ちの整理がつきません。」(被害者の女性)

キラキラ投稿に潜むワナ

SNSを使って投資の勧誘をしているのは、どのような人物なのでしょうか。

かつて、勧誘グループに所属していた女性に会うことができました。女性は20代で、道内の大学に通っています。

「人を呼べば呼ぶほど、自分の利益になるんだよと。とにかく数だという風に言われていた」(元勧誘グループの女性)

グループで共有していた組織図では、本人の名前の下に紹介者の名前を付け、そのつながりを図式化していました。このグループは、連鎖的に勧誘を行うマルチ商法の手法で投資を呼びかけていたのです。

女性は北海道のグループに所属。

上位には『リーダー』、さらに『地域統括』、『全国統括』がいたといいます。勧誘を成功させると、自分だけではなくその上位にも報酬が入る仕組みで、上の人物ほど利益は増えていったというのです。グループでは多くの人をセミナーに呼び込み、勧誘。そして女性は、SNSでさらに人を集めるよう強く求められました。

「LINEで、友だち・知り合い全員に勧誘をしろと指示がありました。毎日たくさんの人にアプローチできる方法として、SNSが有効であると」(元勧誘グループの女性)

さらに、本名と顔も出して勧誘するようにとも指示されていました。SNS上で“ 充実感 ”や“ 幸福感 ”を強調すれば、投資への信頼感がより高まるというのです。

「楽しそうな投稿をしましょうと。『キラキラ投稿』をするという。充実した感じが出るような。旅行に行ったとか、ご飯を食べに行ったとか、高い買い物したとか、そういったことが勧誘相手の興味をひくというのはありました」(元勧誘グループの女性)

SNSの『数字』が信頼度を上げている

ユーチューバー』に誘導されて被害にあったという声もあります。

「登録者数は1万人くらいいて、すごい人だしお金も持っている人だし、この人についていけば間違いないと思っちゃったんです。友達からはやめたほうがいいと言われていたんですけど、やめられなかった。自分の頭で全然考えられていなかった」(被害者の男性)

SNSを入り口にした勧誘に、人はなぜ引き寄せられるのか。ITジャーナリストの高橋 暁子さんは、SNSの『数字』が信頼度を上げていると分析します。

「自分以外の多くの人たちの支持を集めていて、みんながいいと言っているのだからいいに違いない、この人は信頼できるに違いないと自分で自分を説得していく。それによって一層深みにはまっていくと思います」(高橋さん)

SNSで多く見られる勧誘パターンがあります。

1.オープンなSNSで誘惑
まずは、『誰もが見られるオープンなSNS』で華やかな投稿、いわゆる『キラキラ投稿』をして相手の興味をひきつけます。さらに『いいね』の数や『チャンネル登録者数』などで信頼させて勧誘します。
2.閉鎖的なSNSへ誘導
相手が勧誘に応じると、今度は外からは見られない『閉鎖的なSNS』に誘導します。

これは、ある勧誘グループが使っていたコミュニティチャット。特定のメンバーのみが参加を認められます。勧誘された一人が投資への不安を訴えると、すぐにリーダーらしき人物が不安を打ち消すような発言を繰り返していました。閉鎖的なコミュニティーでは肯定的な意見ばかりが交わされ、いつしかもうけ話に疑いを持たなくなり、否定的な意見が耳に入らなくなっていくのです。

こうした現象について名古屋大学大学院の笹原 和俊講師は、閉鎖的なコミュニティーにありがちな落とし穴で、注意が必要だと警鐘を鳴らします。

「閉じ込められてるわけですから、新しい情報が入ってこない。間違いだよと訂正してくれる情報がやってこない世界になってしまうのです。あえて違うモノを見ようという心がけを常にしておくのが重要だと思います」(笹原講師)

こうした、閉鎖的なSNSのコミュニティーで繰り返される勧誘被害を少しでも減らそうと、警告をする人たちがいます。いわばSNS自警団です。

実は、彼らは皆、過去にトラブルに巻き込まれたことがある経験者たち。自分たちの経験から、同じような被害を減らしたいと活動を始めました。

毎月同じ率の配当が出るというやつ、それは間違いなく危ない」(SNS自警団)

危険と思われる勧誘については『誰もが見られるオープンなSNS』で発信し、注意を促します。

常に勉強、知識をつけていくことが大事だと思ってる。もしかしたら自分も間違った発信をするかもしれないから、情報交換しながら間違った方向性に行かないよう注意している」(SNS自警団)

トラブルに巻き込まれないために

SNSを通じた投資では、契約書がないというケースがあります。すると実態が分からず、刑事事件にするのは困難です。実際に裁判をしても被害金額の全額どころか、一部を取り返すことすらできません。

なぜ、契約書も交わさず大金を振り込んでしまうのでしょうか。

金融トラブルに精通している経済アナリストの森永 康平さんは、そこには若者特有の文化があるといいます。いまの若者はネット上で株や競馬などの情報を買うことが普通になっていて、そこには『契約書を書く』という段取りがありません。

しかもネット上では現金を使わないので、自分でどれだけ使ったかというのがリアルに実感できていないのではないかというのと、投資として持ち掛けられている話も、そもそも投資だと思っていない可能性が高いと森永さんはいいます。

さらに森永さんは、『いいね』や『フォロワーの数』が多いだけで信頼してしまうのは危険だと警告します。

「最近、匿名で顔も名前も明かしていないアカウントが有益でまともな情報を発信しているケースが多い。こういう人にはもちろん『いいね』や『チャンネル登録数』が集まる。そこに実名で顔出しの人の『いいね』などが多いとなると、信頼していいんじゃないかと思うわけなんです。しかしだます側は海外の業者に依頼し、1フォロワーを0.5円でオーダーして詐欺用のアカウントのフォロワーを1万人にしてもらうということをしているので、単純にフォロワーが多いから大丈夫だとか、実名だから信頼できるとかという判断の仕方は危ないと思います」(森永さん)

さらに、トラブルを事前に防ぐには『リスク』についての理解を深めることだと森永さんはアドバイスします。

「僕がよく教えているのは、『リスクとリターン』という概念を持てと。だいたいの詐欺は、リスクが低いのにリターンが高いという、本来ではありえない話を持ってきます。リターンだけを見て『すごくいいな』と思うのではなくて、『リスクが低すぎるな』、『怪しい』、と感じられる感覚を身につけて欲しい」(森永さん)

投資で注意することは…

ほかにも、森永さんは以下の点にも注意が必要だといいます。

◆投資するものに対して『ちゃんと説明ができる』かどうか
例えば『暗号資産って何?』と聞かれて、自分で説明できないのであれば投資はおすすめしません。
◆会社が本当に登録されているかどうか
運用している会社が、本当に金融庁に登録されているのかどうか、ネットで確認することができます。また、本当にこういった商品を扱っているかという問い合わせも検討してください。

第三者に確認してもらうことも重要です。窓口として消費者ホットライン『188(いやや!)』があり、また大学によっては相談窓口を設置しています。

SNS上で繰り返される、危険な勧誘。おいしい話はありません。デジタル時代の落とし穴にはまらないためにも、正しい情報かどうか判断できる知識を身につけることが大切です。

2020年1月31日(金)放送
北海道クローズアップ
「#SNSマネートラップ~検証・グレー勧誘~」より

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