NHK札幌放送局

函館でモルックが熱い!

道南web

2023年2月24日(金)午前10時50分 更新

モルックと呼ばれるスポーツはご存じでしょうか?
 来年函館ではアジアで初めて世界大会が開催されます。 モルックの世界大会を函館に誘致し、日本での普及に取り組んだのは小児科医の八ツ賀秀一さんです。
なぜ医師がモルックを普及しようとしているのか?
そもそもモルックとは何か?

 八ツ賀さんがモルックにかける特別な思いとともに、その魅力を取材しました。

(取材:NHK函館放送局 奈須由樹) 

モルックとは?

モルックはフィンランド発祥のスポーツです。木製の木の棒を交互に投げてピンを倒し、先に目標の50点にいかに早く到達するか競います。およそ3点5メートル先に並ぶ12本の“スキットル”と呼ばれるピンに木の棒を当てて、倒します。ピンを複数倒した場合は、完全に倒した本数が得点になります。

この場合は1本が完全に倒れていないので3点です。倒れたピンは倒れた場所に立て直します。

1本だけ倒した場合は、ピンに書かれている点数が得点になります。


19年前から世界大会開催

モルックの世界大会は19年前から開催されています。フィンランドやチェコ、フランスで開催されてきました。最近の世界大会にはおよそ20カ国から1000人ほどが参加しています。来年はこの世界大会が日本で、それも函館で行われます。


日本モルック界のパイオニア

世界大会の日本誘致に尽力したのが、日本モルック協会の代表理事を務める八ツ賀秀一さんです。

八ツ賀さんはふだんは小児科医として働いています。15年ほど前、「ミトコンドリア病」の研究のためフィンランドに留学中、モルックに出会いました。

そこで出場した世界大会に衝撃を受けました。子どもや大人、高齢者に加えて車いすの人など、みんなが一緒にプレーしていたからです。

年齢や性別、障害の有無を問わず楽しめる競技に、魅力を感じたといいます。

八ツ賀さん
「30歳を超えて男女一緒で、しかも年齢を問わず楽しめるものが日本にあるのか考えましたが、思いつきませんでした。年齢を問わず楽しめるモルックを日本で広めていければいいなと思いました」

日本に帰国する時にはモルックの用具を30セット持ち帰り、八ツ賀さんの普及活動が始まりました。

東京の代々木公園や函館の昭和公園を中心に月に1回ほど体験会を開きます。体験会では徐々に参加人数を増やし、多い時では50人ほどが集まりました。八ツ賀さんの取り組みで着々と競技人口を増やしていきます。

そして、大きな転機が訪れました。世界大会の開催場所を決める国際モルック会議が去年8月に行われました。

八ツ賀さんは函館に住んだ期間は短いものの、異国情緒あふれる函館は世界に自慢できる町だと信じています。また函館はフィンランドに気候が似ていることから、思い切って日本での開催に立候補。フランスと競合した結果、日本でのモルックの盛り上がりを評価され、日本での開催が決まったのです。ヨーロッパ以外では初めての開催です。


函館でブーム到来

八ツ賀さんがモルックを日本に持ち込んでから12年が経過。函館には、ひそかにモルックブームが到来しています。この日、函館市内で行われた体験会にはおよそ30人が訪れました。体験した人に話を聞きました。

モルックを初めて体験した85歳の男性
「初めてやりましたが、楽しかったです。
 ふだんの生活でなかなか集中して物事をやることは少ないし、頭でずっと計算しながら試合をしているので健康にもいいと思います」
モルックを初めて体験した50代の男性
「初めて会った人がほとんどですが、みんなと仲良くなれた気がします。
 頭も使うし汗もかくし、いい競技だと思います」
小学校4年生の男の子
「子どもでも大人に勝てることが楽しい。
 函館で開かれる世界大会で日本代表を目指します」

参加者は、あっという間にモルックのとりこになったようです。

広がりは道南各地でも。ことし1月には木古内町で認知症予防や健康作りに役立ててもらおうと、高齢者を対象にモルックの体験会が行われました。

八ツ賀さんは医師としてモルックは高齢者の健康づくりに効果があるといいます。

八ツ賀さん
「プレーしていると1時間ぐらいで頭が疲れてくる。常に自分のチームの足し算と相手のたし算をしていて、非常に頭を使うスポーツなので認知症予防などに個人的には効果があると思います」


八ツ賀さん、その先の目標へ

徐々に子どもや高齢者を中心に浸透し始めたモルック。八ツ賀さんはモルック協会の代表理事として、そして小児科医としてモルックを通して2つの目標を掲げています。

「日本モルック協会としては、パラリンピック種目を目指すという目標を立てているのですが、その先も考えています。オリンピックやパラリンピックは競技をする人が分かれてしまっているので、分かれている壁を取っ払い、オリもパラもないような、大会や活動にしていきたい」

また、小児科医としての思いもあります。

「モルックを通して虐待が1件でも減ればいいと考えています。診療所の診断だけでは限界があります。モルックはコミュニケーションのスポーツなのでモルックをすることでみんなコミュニケーションが生まれます。お子さんと親御さんとかで一緒に楽しんでもらって1件でも虐待が減って欲しいという思いが個人的にはあります」

モルックはルールを覚えたその日から、子どもも大人も高齢者も障害者も、一緒に楽しむことができるスポーツです。

函館での世界大会をきっかけに函館から日本に、そして世界にモルックの一大ブームが到来する予感がします。

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