NHK札幌放送局

将棋×サッカー!

北海道まるごとラジオ

2021年4月23日(金)午後5時38分 更新

4月15日(木)の北海道まるごとラジオは、将棋×サッカー!
MCは堀伸浩アナウンサー、キャスターの西野愛由(筆者)でお送りしました。

将棋界の新年度のスタートを飾る名人戦が4月7日、8日に開幕し、 将棋もいよいよシーズンが始まりました!

この記事では、 北海道まるごとラジオ流の感想戦(対局後にその一局を対戦者どうしで振り返るもの)を お届けします!

ですが、どうして今回は将棋にプラスして、サッカーの話題もお届けするんでしょう?
それは・・・。

ゲストは、札幌市ご出身の将棋棋士・野月浩貴八段!

プロ棋士として第一線での活躍はもちろん、対局について記した「観戦記」という新聞原稿の執筆や、 将棋を題材にした漫画の監修もされています。

そして、野月八段は、北海道コンサドーレ札幌の熱烈なサポーターでいらっしゃいます。

:どのぐらいサッカーの試合は観ているものなんですか?

野月八段
:若いころは結構夜遅くまで観てたので年間、テレビで観るのとスタジアムで観るのをあわせて5~600試合…。

:いまさらっといいましたね。

野月八段:いまはそこまでじゃなくて200試合ぐらい…。

:将棋のお仕事があったり、対局があったり、当然対局に備えた準備もある中で、どうやって200試合みるんですか?

野月八段:いやでも、200だったら1日1試合弱、2日に1試合って考えれば、まあ、観られる試合数ですかね(笑)

:なるほど、たしかに僕も将棋は、(年間で)200局以上、まいにちチェックはしますから、確かに好きだったらできる気はしますが(笑)


将棋界の変化として、野月さんは、将棋の研究方法を挙げました。
というのも、今までやってきた「自分の頭の中で戦い方を考える」ことに加えて、将棋ソフト・いわゆるAIを普段から取り入れるようになったというのです。

野月八段:コンピューターって自分で思い浮かばない手を教えてはくれるんですが、どうしてその手がいいのかというのは教えてくれないんです。自分で、どうしてこういう手がいいんだろうっていうのを論理付けっていうんですかね、理屈を考えないといけないので、研究量がかなり増えていきましたね。

:単にAIがいい手ですよというのを覚えるだけでは対局に生かせないんですね。

野月八段:自分の感覚と違って、実際にやってみたらそこからうまくできないので。それを自分のものにするっていう作業が、ここ数年課題となっていますね。そういうことが上手い棋士がやっぱり勝っていく、まあ、藤井さんもそうですしね。

:それこそ第一線で、いま現役最強との声も高い、まさに名人戦を闘っている渡辺明名人のような中堅ぐらいの棋士の方でも?

野月八段:ああ、使われていますね。研究で使って、自分がその戦うであろう相手とどういう戦法になるかというので、その研究に利用したり。あとはその一番いい手と二番目三番目にいい手っていうのがほぼ一緒の場合もあったりしたら、あえて三番目の手を選んで、相手が研究していないような方向に持ってくなんてこともあったりしますね。

:どんどん準備が複雑化しているんですね。

野月八段:コンピューターを使った研究がより深いほうが勝ちやすく、コンピューターの戦い方を理解している人のほうが勝ちやすい。しかし、もともとの力もないと勝てないので、このバランスが難しいところですね。



先日、名人戦が行われたホテルにて。野月八段は2日間に渡って、ファンの方にいろいろな対局の様子をリアルタイムで伝える「大盤解説」というイベントで、解説をされました。
なんと、初日に参加したお客さんの9割が女性!!(今までは男性が9割5分ぐらい)
2日目は、少し男性が増えたものの、それでも8割ぐらいは女性だったそう。 これには、野月八段も驚いたようです。

「ルールは知らないけど、この棋士が好き」「名人戦の舞台、雰囲気を楽しみたい」

こうしたファン層が女性に増えているんですって。


実は、北海道は数多くの将棋棋士を輩出しています。▼故・二上達也九段(函館市)※羽生善治九段の師匠▼勝浦修九段(紋別市)▼屋敷伸之九段(札幌市)▼広瀬章人八段(札幌市)▼中座真七段(稚内市)▼中井広恵女流六段(稚内市) …など多数!
その一つの要因が北海道は雪国であるということ。これが非常に大きいようです。

野月八段:冬の間、室内で楽しむものとして、ボードゲーム。その中でも将棋がずっと指されてきたっていう文化もあります。あと熱心な指導者が北海道各地に多いです。堀さんも指導員の資格を持たれていますが、子どもだったり、指導する方が非常に熱心で、あちこちで教えてるんで、強い子が生まれやすいという環境もありますね。


野月八段は、去年の暮、藤井聡太二冠との初めての対局。その同じ12月には羽生善治九段との対局もありました。そこで野月八段は、羽生九段と藤井二冠を相手に、いずれも後手番になり、同じ雁木という戦法をぶつけました。

結果…羽生九段には勝ち、藤井二冠には惜しくも敗れました。 どうして、あえて同じ戦法を選んだのでしょう?

野月八段:いや、とくに理由はないんですけど、最近課題としている戦形で、後手の時に結構用いていて、将棋用語でいう、狙い撃ちされやすいんです。同じ形なので、相手がその研究をしやすいですけれど、「狙い撃たれてみてどんな感じになるんだろう」っていうのを試してみたい。強い、トップの方がその戦形で闘った時にどうなっているんだろうっていうのがちょっと興味があったので、あえて選んでみたんです。

:実際に藤井二冠の強さ、すごさをどう感じましたか?

野月八段:精度が高いです。

:精度、つまり間違わないということ?

野月八段:そうですね、読みの深さだったり、初めて見るような局面で判断が難しいところでも外さないんですね。そういうところがすごいなって思いました。本当に微妙なミスはあるんですけれども、大きなミスというのが全くないので…。


ここで、将棋の気になるあれこれを野月八段に伺いました!

Q1:相手が長考している間、野月八段はどう過ごしている?
A1:これは難しいところ。自分の考える番ではないけれど、自分も盤の前に座って考えていることもあれば、ちょっと席を外して一休みすることも。携帯はいじれません。
あとは、対局中に出るおやつを控室などに持って行って食べることも。

Q2:「おやつは絶対にコレ!!」というものがある?
A2:あります。自分の好きなものを食べるという棋士もいれば、勝負に必要なものを食べる人も。たとえば、考えるのに脳はブドウ糖とかが必要なので、ブドウ糖が多めに入っているものを食べるとか。摂り方もひとそれぞれです。一回でまとめて食べることもありますが、何回かに小分けして食べるほうが脳の働きにいいっていいますね。ブドウ糖で脳の栄養を与えて、ちょっと考える力が増すんです。一気に食べると、一気に上がるんですけど一気に落ちるんですよ。だから小分けに少しずつ上がるように食べて、マックスまで持っていくとか。

:将棋棋士って食べ方まで考えてるんですね


ここで、サッカー実況を担当する西阪太志アナウンサーの登場です。

西阪:サッカーを将棋と重ね合わせる、似ていると考えるようになったのはいつから考え始めたんですか?

野月八段:プロになってことしでちょうど25年なんですが、プロになる少し前、修行の段階ぐらいからサッカーを好きで見ていて、共通点は多いなと思ってみていました。

実は野月さん。ある選手のプレーを参考に、将棋界に一大革命を起こします。その選手とは、2002年のワールドカップでは札幌ドームでもプレーをした、イングランド代表のベッカム選手!

野月八段:ベッカムはよく右サイドにいて、右サイド高い位置でも低い位置でもどこからでもゴール前に、ピンポイントな、正確なクロスボールを入れて、フォワードの選手がゴールを決めるっていうプレーが印象に残ります。将棋でも横歩取り8五飛戦法。最初に指したのは北海道出身の先輩である中座さんという棋士なんですが、その戦法の中で、ベッカムのクロスのイメージが結構合うなという風に考えて、その戦法に落とし込んだことはありますね。

野月八段によると、ベッカムの鋭いパスがの動きに似ているということです。

攻撃スタイルが似ているというところからヒントを得て、さらに細かいところまで将棋とサッカーのイメージをすり合わせて戦法を開発。
これまでは、先手が主導権を握りやすく、どうしても後手だと勝ちにくいというのが将棋界での常識でした。しかし!横歩取り8五飛戦法の登場により、一時、後手の年間勝率が先手を上回るという、将棋界では初めての出来事が起こったのです!!
まさかベッカムが?!堀アナも驚きです。


西阪:野月さんは、サッカーをご覧になっているときに「将棋にいかそう」と思ってご覧になっているわけではないですよね?

野月八段:見てる瞬間は、楽しみます。コンサドーレを観るときとほかのチームを観るときは別物です。コンサドーレは結構ゴール裏とかで、いまコロナなので無理ですが、一緒に叫んだりしながら観ます。ほかのチームを見るときは、メインスタンドの一番高い位置。俯瞰できる位置から見て、全体をみることが多いですね。そのあと、見終わって家に帰ったり、帰る途中とかに頭の中でもう一回再現しながら考えたり。そのときに、将棋のことを一緒に考えてたりすることが多いですね。

ところで、棋士の皆さんは、対局後に感想戦を行いますが…、野月八段はサッカーも?

野月八段:いまは印象に残るプレーいくつかですね。若いころ20代くらいのころは、90分、キックオフからずーっと試合終了まで、頭で浮かべることもできたんですけど、記憶が追い付かないので無理です(笑)

西阪:ものすごいことだと思いますよ。

:サッカー実況者も当然できるんでしょう?

西阪:いや~(笑)実況アナウンサー的に言うと、実況していない試合のほうが、1から振り返れますね、案外。実況しているとその時はぐっと試合に入るんですけど、終わってみると、ハイライトシーンだけしか残っていなかったりとか・・・私はしますね。

:棋士の方は、サッカー観戦も将棋脳というんですかね。そういうので観ていらっしゃるんですね。

野月八段:スタジアムだと全体を観られるのがいいなと。テレビだと部分的にしか観られない。映っていないところの選手がどう影響するのかとかが面白いですね。

西阪:ボールのないところでどう動いているかっていう。

野月八段:そういうのが将棋と似ているんですよね。戦いが起こる場所のちょっと離れた場所の駒の動きなんかが、のちのち生きてきたりするんで。


将棋の戦術の変化とサッカーの戦術の変遷。 野月八段から見て通ずるものはあるのでしょうか?

野月八段:サッカーも最近、年々トレンドが変わってきますよね。海外だとチェスを参考にしていることが多いですね。名監督のグアルディオラもですし、ちょっと前にバルセロナの監督をやっていたセティエン監督とかもそう。チェスをたしなんで、チェスの戦術を取り入れてるってことが多いですね。

西阪
:話に出たお2人ともスペインの監督さんですけど。日本で将棋を取り入れる監督さんも?

野月八段
:いるかもしれないですね。それはわからないです。サッカーでポジショナルプレーという言葉がよく出て来るんですが、チェスからきている言葉なんで。ポジションの優位性を利用してっていう。チェスは駒のいるポジションが大事で、優位性を築くにはどうしたらいいかっていうのを。サッカーでも選手のいる位置がどこにいるからその局地的に優位性を保てるかというのを。

西阪
:どこに選手がポジションをとって、位置で優位をとる、あるいは数で優位をとる。あるいは立っている選手のクオリティ・質で優位をとるというような考え方があって。それを総称して、おっしゃったようにポジショナルプレーと、解釈する方がかなり多くなってきていますよね。

野月八段
:コンサドーレもそうですよね。


『サッカーを観戦するときは中央のなるべく上段から全体を俯瞰してみる位置に陣取り、ボールを持った選手やパスをもらう選手よりも、その次を見越して全く関係のない選手の動きをみるのが醍醐味だと思っています。そしてその選手に3タッチ後にボールが渡った時は思わず王手!と叫んでいます』


西阪:野月さんは今年で創立25周年を迎える北海道コンサドーレ札幌を創立から熱烈応援されているということですが、将棋的視点から言うと、今のコンサドーレはどうでしょう?

野月八段:成長の途中のチームなんですけど、非常にいい成長を遂げているなと思いますね。最近将棋でも、「バランス型」というのが非常にテーマになっていまして。昔は王将をがちがちに固めて相手に攻められないようにしてから、自分が攻めていくことが多かったんです。最近は将棋盤全体でバランスをとって総合的に、玉もその戦いに参加したり、戦場に近い位置に陣取ることがあって、非常に薄い陣形なんだけどもバランスをとって全部の駒を使って戦うっていうところが、今のコンサドーレ、ミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の愛称)のサッカーと似ているなと思っています。

ここで、野月八段に「将棋で言うと、この駒のイメージだな」というコンサドーレの選手を伺いました。

▼金子拓郎選手→「銀」。素早く切り込んでいく様子が銀に近い。
▼菅大輝選手→「飛車」。左サイドを主戦場に、攻撃で前にも出るかつ、守備のフォローで後ろに下がることもあるため。

西阪:私もイメージしているのが、ディフェンダーの福森晃斗選手。左サイドにいてすごくキックが上手い選手なんですね。福森選手が左から対角線に大きくボールを蹴って、右からドリブルが得意な選手が攻めていく、ひとつコンサドーレの得意な形で。イメージは福森選手が角で、ボールがビューンと飛んでいって、右サイド・ドリブルが得意なブラジル人のルーカス・フェルナンデス選手が香車だなと。実況でも時々「札幌の槍」ってルーカス選手のことを呼ぶんですけど。

野月八段:いいイメージですね。

:お墨付きをいただきました。

西阪:駒の能力って将棋は変わらないですけど、サッカーは人がやるので成長していく、動ける範囲が増えていく。「歩が、と金になる」じゃないですけど、斜めにも行けるようになったんだ~とか、右じゃなくて左でもできるようになったんだ~とか、ずっと見ているとそういう変化はやっぱりあるんですよ。

野月八段:見るたびに成長する選手がね。実際にどこがうまくなったのか、こういうところが改善されたとか、そういうふうにみるのも楽しみですね。

:サッカーの初心者だと、どうしてもボールがあるところに目が行っちゃうんですけど、そうじゃない。もちろんそこも大事ですけど、そこじゃないところに楽しみ方がね。



最後に。
様々なきっかけで将棋やサッカーに興味を持ったという方に向けて、 その入り口を進んだ先にはどんな楽しみ方があるのか、野月八段に伺いました。

野月八段:将棋は、自分で指して楽しむこともできますし、また、テレビなどでプロ棋士たちの対局姿を見る機会も多いと思います。それで、棋士そのものを好きになる、最初は静かな感じで闘っていたのが、勝負が白熱していくごとに、一心不乱に戦う姿がかっこいいとか。あとは対局中にどんなおやつを食べているのか?とか、いろんな楽しみ方があるので、まずはそういったところからはいってもいいですね。

サッカーは、「チーム全体を楽しむ」という部分と「一人の選手に注目してプレースタイルなどを細かく見る」。ドリブルしているときにどっちの足から切り込んでいくのか、はたまた予備動作が必ずある選手もいるので、どういうプレーをしたら次に何するか、という動きに詳しくなると、次のプレーの予測がしやすいんです。そうすると、チーム全体のプレーの予測がしやすくなってくるので、どんどん奥深く広げていくというのも楽しみ方ですね。

今回の感想戦は、これで終わりです。 また、放送に入りきらなかった内容は、アフタートークとして収録しています。 ぜひ、お聴きください。

また、4月25日(日)に放送予定の
NHK杯テレビ将棋トーナメントで、
 野月八段の対局の様子が観られます!
こちらもチェックしてみてくださいね!

終局

☆おまけ☆
放送の数日前、写真撮影オフショットです。 堀アナが再現した盤面は、「わかる人にはわかる!」そうですが…。


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