NHK札幌放送局

板金の技で響け 希望の音色web

ほっとニュース北海道

2020年11月25日(水)午後7時16分 更新

岩見沢市にある小さな板金工場が、この冬、新たな挑戦に乗りだそうとしています。 新型コロナの感染が道内各地で続き、苦境に立たされる中の取り組みに注目しました。 総合テレビ11月19日(木)の「ほっとニュース北海道」で放送しました。

板金のスピーカー

バーに響く深い音色。
奏でるのは、カウンター上の天井に取り付けられたスピーカーです。
その素材は薄い金属板。
雑音の少ない澄んだ音を、空間いっぱいに響かせることができるといいます。


私も実際に聞いてみましたが、このスピーカーの音をひと言で表現するなら、“自然な音”。そこで音が流れているのが当たり前のような音色で、結構大きな音量で再生しているにもかかわらず、邪魔にならずに会話ができるのも驚きでした。
空間を包み込むような自然な音色、抜けるような高音に、柔らかく響く低音が心地よさも感じました。

岩見沢市のバーの店主
「まず、見た目がかっこいい。お客さんからも、『これは何?』みたいな感じの反応があって、あと音も高音の抜けがよくてお客さんの評判はすごくよいです」

スピーカーをつくりはじめた理由とは

つくったのは、岩見沢市にある、創業60年の板金加工会社です。
社長の赤間年幸さん(56)は、屋根や外壁の「板金」といった本業のかたわら、スピーカーづくりを4年前に始めました。

みずからバンドを組むほど音楽好きの赤間さん。
「身近にオーディオがあったことから、音を聴いた感じのよしあしが自分にもわかるのかな」と思ったのが、作ろうと思ったきっかけの1つなんだそうです。

ところが、本当の理由は、別のところにありました。
それは、「冬のあいだの仕事を確保」するためです。
岩見沢の冬は雪深く、本業の建設現場は、10分の1に減ります。

「冬でもできる仕事があれば、稼ぎを増やせるのではないか」

そんな思いが、スピーカーを生んだといいます。

赤間さん
「家族のことを思うと、もう少し稼ぎたい、働きたい、という思い。
そういうことで退職されていった人が過去に何人もいて、なんか冬にやることないかなって」

「冬限定」の仕事を「1年通して」の仕事に

赤間さんは、スピーカーづくりを本業の1つに加えようと考えました。
転機となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大です。

ことし2月以降、建設現場での仕事が減少。前年度に比べて、売り上げが25パーセント減りました。
「別の方法で収入を確保しないと、会社がもたない」、赤間さんは、冬の間注文があった時だけしか作っていなかったスピーカーを、量産できるようにしたいと考えるようになりました。

「従業員を守るために、仕事を作らないといけない。だったら、スピーカーしかないかな」


若手とともに、難局を乗り切りたい

いま社内でスピーカーを作れるのは、赤間さん1人だけ。そこで考えたのが、人材の育成です。手始めは、息子の勇軌さん(29)。

この日教えたのは、スピーカーの中心にある円筒の作り方です。厚さ0.2ミリの銅板を、きれいな円に丸める作業。そしてこの円筒を、寸分違わぬように設置していきます。
わずかなゆがみが、特に低音の響きに影響します。

美しい金属の輝きを放つスピーカーには、見た目にもこだわりが。
銅板や真ちゅう板は柔らかく傷がつきやすいので、まるで桃を扱うように作業を進めます。打痕ひとつ許されません。一つひとつが、繊細な作業なのです。
職人の技術が、美しい音の響きを生み出します。

これまでは限られた職人しか担ってこなかった、スピーカーづくり。
息子の勇軌さんはとまどいを隠せませんでしたが、技術は身につけたいといいます。

「今は興味というレベルではないと思うんですけど、うまいことバランスとって事業として成り立てばいいかなと思います。やるのは全然いいと思います」

若手とともに、新型コロナウイルスを乗り越えたい。赤間さんの挑戦は、始まったばかりです。

赤間さん
「ハングリー精神というか、転んでもただでは起き上がらないとか。困った時は、困っていない時以上に工夫をしたり。頭を使ったり、準備をしたりして。それを超えていくという姿勢ですね。そのファイティングポーズが伝われば」


【取材を終えて】
赤間さんもおっしゃっていたのですが、まず、このスピーカーの音を生で聴いてもらいたいです。事前に取材でお邪魔したとき、「好きなCDを持ってきてください」と言われ、お気に入りの曲を持参し、このスピーカーで流してもらいました。何十回も聴いた曲なのに、「こんな音も鳴ってたんだ!?」という感動を覚えています(ギターやベースなどさまざまな楽器の音が、より、しっかりと聴こえるのです・・・!)。同じような円筒の形をしたスピーカーと、この板金でできたものを比べると、ボディを板金で巻いてギュッとしめつけているので、むだな振動を抑えることができ、澄んだ音が出るそうです。
今後は作れる職人を増やして量産体制を整えたいとのことですが、そうすることで、「目先のスピーカーだけではなくて、従業員の生活・仕事を守る。それが、板金技術を守っていくことにもつながる」と、赤間さんは話していました。
コロナ禍では、さまざまな業種で、仕事のあり方に新たな変化が見られていると思います。そんななか、ピンチをチャンスに変える赤間さんの取り組みに、これからも注目していきたいです。

取材担当:佐藤千佳キャスター(札幌放送局)

2020年11月25日

チェンジ ~北海道に迫る変化~


関連情報

釧路沖のウシマンボウ 北限記録更新

ほっとニュース北海道

2021年1月12日(火)午後6時12分 更新

小樽市・小樽中央市場

ほっとニュース北海道

2020年3月18日(水)午後5時00分 更新

eスポーツでレバンガと留辺蘂高校連携

ほっとニュース北海道

2021年1月29日(金)午前11時40分 更新

上に戻る