NHK札幌放送局

外国人闇就労 巨大な違法ビジネスの実態

北海道クローズアップ

2019年10月31日(木)午後0時09分 更新

深刻な人手不足を背景に、北海道の農業や水産業などは外国人労働者の手によって支えられています。一方で、不法就労する外国人労働者の数が年々増え、去年は全国で1万人を超えました。
半年以上にわたる追跡取材から見えてきたのは、不法就労の外国人を日本に送り込む巧妙なカラクリ。「在留カード」の偽造による、巨大な違法ビジネスの実態に迫ります。

不法就労をあっせんする仲介業者の存在

道南の知内町に建設されたメガソーラー。
地元の町も期待を寄せる最新の発電施設です。

2018年の暮れ、この建設現場で働いていた中国人11人が不法残留の疑いで逮捕されました。さらに、同じ現場で働く46人も行方不明になったのです。

なぜ、彼らは不法就労することになったのでしょうか。

私たちは強制送還された中国人たちの行方を追い、そのうちの一人の居場所を特定しました。木古内町で逮捕された30代の中国人男性。裁判で有罪判決を受けた後、中国へ強制送還されました。

男性は妻と幼い娘2人との4人暮らし。勤めていた中国の工場が操業停止となり、新たな仕事を探していました。そんなとき、仲介業者に日本での仕事を紹介されたと言います。

「仲介業者に払ったのは、3万元(約50万円)だった。ほとんどは友人に借りたお金だ。持ち金があまりなかったので、借りるしかなかった」(元不法就労の中国人男性)

多額の借金を背負って日本に働きにきた男性。しかし、仲介業者から渡されたのは短期滞在しかできない「観光ビザ」でした。
男性は就労資格がないことに気がつきましたが、大きな借金を抱えたままでは帰れません。さらに、仲介業者からは「嫌なら国に帰ってもいいが、手数料は返金しないぞ」と言われます。
仕事では賃金の支払いが滞ったり、外出を厳しく制限されたりするなどつらい生活を強いられました。

日本にやってきて1か月半後。
仲間と一緒に逃げ出し、東京へ向かう途中に不法残留の疑いで逮捕されました。

「帰国するつもりだった。(日本の生活は)非常に悲惨な日々だった。つらかった」(元不法就労の中国人男性)

見分けがつかない偽造在留カードのカラクリ

逮捕された中国人たちは、日本で仲介業者の関係者から偽造在留カードを渡されたと証言していました。

外国人が働くには「就労資格」の記された在留カードが必要です。私たちが入手した偽造在留カードのコピーを調べてみると、そこには「定住者」、そして「永住者」という文字。

さらに「就労制限なし」と記載されています。

ところが、この偽造在留カードの番号を法務省の照会サイトで調べてみると…。

画面には「失効していません」と表示。偽造のカードにも関わらず、カード番号と期限は「有効」とされたのです。

なぜ、偽造カードの情報が「有効」とされるのか。

中国のSNSで偽造カードが取引されているという情報をつかみ、ブローカーが集まる非公開グループの中に入ると、中国のSNSには偽造カードの動画や画像であふれていました。

うたい文句は「99%本物」、「高度な模倣」、「有効な番号」。なかにはホログラムがついた精巧な作りのカードもあり、これらのカードは1枚1万円前後で取引されていました。

SNS上で見つけたカードの番号を見ると、北海道で働いていた中国人のものと完全に一致。この他にも北海道の中国人の在留カードと一致する番号がSNS上で複数確認され、中国人たちが持っていたカードはSNS上で購入したのではないかという可能性が出てきたのです。

偽造カードを販売する人物は、仕事で知り得た有効な在留カードの番号を使って、別人のカードを作っていることを明かします。

「私たちはビザを扱う仕事もしているので、個人情報を多く握っている。ビジネスや知人訪問用のビザ、結婚手続きなど、入手ルートは山ほどある」(偽造カード販売人)

法務省の検索システムは個人情報保護のため、番号を入力しても氏名は表示されません。その盲点を突いたのです。

「私は4,000個以上の番号を持っている。日本では今、(偽造カードが)常態化している。不法就労も数えきれない。誰もコントロールできない。たとえ日本政府でも」(偽造カード販売人)

悪用される「一人親方」の仕組み

違法な形で外国人労働者を送り込む巧妙なカラクリが明らかになりました。では、どうやって不法就労の外国人が入り込めるのでしょうか。

倶知安町の建築現場で工事を行っている業者の言葉にヒントがあります。

「会社に所属している方は“まれ”ですね。外国人の方はほぼ『一人親方』です」(工事現場の業者)

現場では多くの外国人が「一人親方」という立場で働いています。一人親方とは自ら仕事を請け負う個人事業主で、交渉や契約を一人で行う能力が求められます。しかし、倶知安町の現場には、日本語もままならない外国人が一人親方として働いているというのです。

こうした外国人が一人親方として働いている背景には、企業側の都合もあります。

一人親方は雇用や賃金を保証された労働者ではないため、企業にとっては必要なときだけ使えるのが利点です。仕事が多い時期と少ない時期がはっきりと分かれた建設業界では、こうした一人親方が使い勝手の良い「労働力」になっています。

こんな証言をする建設業者もいました。

「やはり使いやすさですね。仕事あるときに頼んで、仕事ないときは休ませる。年中に仕事を通す業種じゃないので、空きが長いんですよ。全部正社員を使うなら赤字が発生しちゃうので、一人親方を使う」(建設業者)

人件費を抑えつつ納期を守りたい業者としては、不法就労者であっても一人親方として働かせたいのが本音です。

そんな業者に付け入るブローカーの存在も見えてきました。

一人親方を証明するカードも偽造され、SNS上で販売されていたのです。一人親方の仕組みが悪用されて、就労資格のない外国人が現場に送り込まれているのです。

「雇用主もお互い必要としている。不法就労者を使いたい業者もいるから。使う人がいるからビジネスが成り立つ。すべては金のため」(闇カード業者)

国の現状認識と取るべき対策とは?

一人親方という仕組みが、外国人労働者を不法に働かせる隠れみのになっている現実。厚生労働省の見解を伺いました。

「脱法的なことで(一人親方が)多く使われているのであれば、よく確認をして適切に対応していただかないとと思っています」(厚生労働省 労働基準局 石垣 健彦 監督課長)

外国人労働者の問題に詳しい山脇 康嗣 弁護士は、外国人を働かせる際に義務づけられている国への「届け出」が適切になされていないことが問題だと指摘します。

「外国人雇用状況の届け出があります。きちんとその法律に基づいて外国人雇用状況の届け出を雇い主がすれば、政府のほうで違法就労、不法就労を見つけたり摘発したりできるわけです。しかし、それが守られていない現状がある。政府がもっと積極的に、外国人労働者を雇った場合行うべき手続きについて広報をする必要があると思いますね」(山脇弁護士)

さらに、このままでは国全体に弊害を及ぼすことになると警告します。

「合理的なルールをしっかり作って、ルールを作った以上はそれをしっかり守ってもらう。外国人本人にも、企業にも関係する事業者にも、きちっとルールを守ってもらう。守らなかった場合には必要な制裁、摘発を行うといったことをやらないと、回り回って日本社会全体が害悪を被ることになると思いますね」(山脇弁護士)

SNS上には今もあふれ続ける偽造カード。なかには北海道の不法就労をあっせんする投稿もありました。
社会のなかで不法就労が広がるなか、私たちはこの問題とどのように向き合っていくのか。突きつけられた大きな課題です。

2019年8月30日(金)放送
北海道クローズアップ
「外国人闇就労 ~人材不足ニッポンの実像~」より

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