NHK札幌放送局

WEBニュース特集 胆振東部地震から2年~基幹産業・林業復興への模索

北海道WEBニュース特集

2020年9月4日(金)午後3時41分 更新

胆振東部地震では大規模な土砂崩れが起きました。崩落した斜面の面積はおよそ4300ヘクタールで、土砂崩れの規模としては明治以降最大と言われています。 地震から2年、今も町内の至る所で斜面が崩れたままになっていて、地域の基幹産業の林業の復興が課題になっています。
こうした中、山とともに生きてきた人たちはこの状況を変えようと少しずつ動き出しています。山の復旧に携わる人たちの思いを取材しました。

“傷ついた山”での苦闘

厚真町に住む丹羽智大さんは、林業の会社の3代目として厚真町の山で生計を立てています。樹齢60年ほどの木の伐採作業が最盛期を迎えていた2年前、地震による土砂崩れで丹羽さんの現場でも多くの木が流されてしまいました。さらに、作業に必要な重機も3台失いました。
当時の状況について、丹羽さんは「一瞬でこんなに崩れてしまったことにすごくびっくりした」と話しました。

丹羽さんの会社では一時、売り上げがそれまでの2割ほどに落ち込みました。今も失った重機のローンの支払いが残り、経営に重くのしかかっていると言います。丹羽さんはこれまでの2年間を振り返ってこう話しています。

「被害を何とか取り返して、これから仕事を続けていくためにとにかく頑張って仕事するという思いでやってきた。毎日、目の前のことをひたすらやっているような感じだった」

丹羽さんは今、再び山に木を植えるために荒れた山の整備も行っていますが、土砂崩れの範囲はあまりに広く、見通しはついていません。

「木が成長するまでには本当に何十年という時間がかかる。自分にできることは限られているが、1本1本木を植えて森を戻していきたい」

森林再生への模索

こうした中、傷ついた山に再び木を植えようと研究が進められています。
土砂崩れが起きた斜面では栄養分を含んだ柔らかい土がはがれ、固くて木が育ちにくい土壌が多くなっています。こうした条件でも木は育つのか、道などは去年、カラマツなど5種類の木を試験的に植樹しました。

この日は担当者らが樹木の生育状況の確認に訪れました。研究では植える木の種類や肥料などを変えながら、厳しい環境下で森林を再生させる方法を模索しています。

北海道水産林務部 土屋禎治森林整備課長
「植生の基盤自体が非常に厳しい条件ということなので、どのように効率的に森林を再生していくか非常に難しい課題だと感じている」

被災木で記憶をつなぐ

厚真町では土砂崩れで出た大量の倒木の処理も課題になっています。地元では林業に携わる若い人たちのグループが、こうした「被災木」を有効活用しようと取り組み始めています。

メンバーの1人、厚真町で林業に携わる中川貴之さんは、土砂崩れで廃棄せざるを得なくなった被災木を集めて自宅で保管しています。今回の地震では一度に大量の倒木が出てしまったため、その多くが燃やされるなどして処理されてしまっていると言います。

厚真町 中川貴之さん
「もったいないと思ったのがきっかけだった。自分たちで物を作って、被災の記憶みたいなものを留めていこうと思ってプロジェクトを始めました」

被災木で製品を作り、震災の記憶を伝えたい。この日集まったメンバーたちはまな板作りに取り組みました。完成したまな板には、地震が起きた日付を示す9月6日のロゴマークがデザインされています。

中川さんたちは今後もこうした活動を続けて、地元の林業を復興させたいと考えています。

厚真町 中川貴之さん
「被災をきっかけに出てきた木だったり、立っている木でもそうだし、地域の資源をみんなが使えるところまで手がけていきたい。これも復興の1つの形なんじゃないかなと思っています」

(胆振東部地震取材班・浅井優奈<函館放送局> 2020年9月2日放送)

特設ページ「復興へ 胆振東部地震」はこちら

関連情報

WEBニュース特集 市街地へのヒグマ侵入を防げ #ヒグマ

北海道WEBニュース特集

2019年10月10日(木)午前11時01分 更新

WEBニュース特集 ブラックアウト 知られざる要因

北海道WEBニュース特集

2019年9月9日(月)午後3時04分 更新

WEBニュース特集 "令和"道内の動き

北海道WEBニュース特集

2019年4月2日(火)午後9時21分 更新

上に戻る