2022年、北海道のオホーツク海側では年明けから大雪に見舞われました。私たちの暮らしに影響を与える暴風雪や大雪はどのようにして発生するのでしょうか。気象庁の天気相談所の所長を務めていた網走地方気象台の台長に伺いました。
※2022年1月公開の記事を再掲載しています。
災害は繰り返してはいけない
立原秀一さんは気象庁の天気相談所所長を経て、2021年春から網走地方気象台の台長として着任しました。冬が本格化した12月、立原台長は9年前の猛吹雪で、娘を抱えるようにして男性が亡くなっていた現場を訪れました。
網走地方気象台 立原 秀一 台長
「犠牲となった方のご冥福を心からお祈りしてきました。2013年3月の暴風雪は決して、繰り返してはいけない災害です。気象台として気象状況を監視して適切な情報の発信に努めていくという決心を新たにしました」

道東を襲った暴風雪
2013年3月2日に発生した暴風雪では男性を含めてオホーツク海側で3人が亡くなりました。ひな祭り前日の週末、晴天だった午前中から一転、午後から天気が急変しました。
立原台長は天気の急変や発生した時間帯などが影響を大きくしたといいます。
網走地方気象台 立原 秀一 台長
「1日の中で天気の変化が非常に大きかったのが要因の一つです。午前中に外出された人たちが夕方、帰宅する途中で、猛吹雪に巻き込まれたケースが非常に目立ちます」

危険な低気圧
この時、北海道の東側で急速に低気圧が発達しました。こうした低気圧は吹雪や猛吹雪、大雪をもたらすといいます。
反時計回りで渦をまく低気圧が東の方に進むと東もしくは北からの風がオホーツク海側に吹き付けてくるからです。
網走地方気象台 立原 秀一 台長
「オホーツク海側から見ると山や山地などの地形の影響を受けることなくダイレクトに海からオホーツク海側に吹き付けるという風向きになります。このため、雪あるいは風の影響を大きく受けることになります。気象台の予報官としてこういった気圧配置は非常に警戒するパターンの一つです」

18年前にも同じような気圧配置で災害が発生しています。
2004年1月、北見市を中心に数日間にわたって雪が降り続きました。積雪は1日半ほどで1メートルを超える豪雪になりました。
家は雪に埋もれ、ごみの回収が長期間混乱するなど市民生活に影響を与えたばかりか、農業用ハウスや牛舎が倒壊したり、除雪中の事故で亡くなった人もいました。
網走地方気象台 立原 秀一 台長
「このときは低気圧の速度が非常に遅く大雪の影響が長く続くというのが大きな特徴でした」

最悪を想定して備えを
こうした気圧配置は1年に数回発生します。見通しが全くきかないような猛吹雪をもたらす非常に発達した低気圧というのは数年に一回、北海道付近でみられるといいます。
このため、決して油断することなく冬場は猛吹雪や大雪が発生してもおかしくないという前提で備えておくことが重要だといいます。
暴風雪から身を守るために、最も大切な事は「不要不急の外出をしない」事です。もし、外に出ていた場合はすぐに「近くの建物に身を寄せる」こと。そしてそこから「無理に移動しない」という事も大切です。
また、車で外出したときに吹雪や猛吹雪に遭遇した場合に備え、防寒着やスコップなども用意してほしいといいます。
網走地方気象台 立原 秀一 台長
「暴風雪のような激しい現象を防ぐことは残念ながらできません。しかし、激しい現象を災害にしないことはできます。そのために、一人ひとりの備えが非常に大切です」

札幌管区気象台のホームページには「暴風雪の備え」として吹雪から身を守るリーフレットが掲載されていて、参考にしてほしいということです。
身近な人と過去の災害を話題に
多くの犠牲を出した暴風雪から9年、大雪災害からは18年がたちました。記憶の風化は油断を招くことになります。過去の災害を語り継いでほしいと立原台長は訴えています。
網走地方気象台 立原 秀一 台長
「時間の経過とともに災害を知らない子どもたち、若い人たちが増えていきます。ぜひ、オホーツク海側の地域でも命の危険が迫るような災害が実際に起こっていたということを身近なところで話題にしてほしい。若い世代、子どもたちが過去の災害を知るためにも非常に重要なことです」

2022年1月26日
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