NHK札幌放送局

防災まち歩きのススメ いつもの風景が違って見える

ほっとニュースぐるっと道東!

2022年12月1日(木)午後1時49分 更新

皆さん、ふだん“まち”を歩く時、何を考えていますか? 「夕ご飯は何をつくろうかな」「仕事のあの案件どうなったかな」「青い空がきれいだな」。いろんなまちの歩き方があると思います。 ただ、地震が起きた時その風景は一変します。防災の意識を持ってまちを見てみると、どう見えるのか。そんな想像力を働かせるイベントが釧路市で開かれました。 (釧路局記者 島中俊輔) 

“避難”を体験してみよう

10月、釧路市で行われたのは、その名も「親子de防災探検隊」。親子連れに防災の視点を持ってまちを歩いてもらおうという企画です。釧路に住む親子3組が参加しました。
主催した「チームくしろ防災女子」は、千島海溝沿いの巨大地震で甚大な被害が想定される中、女性の視点を防災に生かそうと去年発足した団体です。実際に避難を体験してもらうことで、命を守ることにつながると考えました。

チームくしろ防災女子 金子ゆかり代表
「小さいお子さんの手を引いて逃げるって結構大変なことだと思うんです。けど、それがどれくらい大変は一度やってみないとわからない。体験すれば、実際に災害が起きた時に自分の命を守ることにつながると考えました」

いつもの風景にある危険な場所は

イベントではまず地理学が専門の北海道教育大学釧路校の酒井多加志教授が登壇しました。酒井教授はまちを歩きながら防災上の危険な場所を探す取り組みを行っているその道のプロ。日常の風景を写した写真から危険な場所を探してもらいます。
こちらの写真。どこが危険かわかりますか?

写真提供:北海道教育大学釧路校 酒井多加志教授

自動販売機はブロックの上に乗っていて地面に直接固定されていません。地震の揺れで倒れるおそれがあります。
窓際に飾られている観葉植物の鉢植えが、上から落ちてくるかもしれません。

このほかにも歩道が狭くベビーカーや車いすで避難するには難しい場所。港に放置された漁網は津波で流された時に体に巻き付いて命の危険があります。
ふだん何気なく歩く風景の中に、災害が起きた時には危険な場所になりかねないものがあることがわかります。

さあ“防災探検”

学んだあとは実践です。イベントでは実際に避難所まで避難してみる体験が行われました。この日は市の中心部で地震が起きたことを想定。子どもを連れて避難してもらいます。
石原紀世さん(35)は晴基くん(6)とさくらちゃん(1)と参加しました。

石原紀世さん
「災害が起きる前にいろいろ準備しようという思いはあったんですけど、後回し後回しになってしまっていました。もし災害が起きた時にどうするか、子どもと会話できたらいいなと思って参加しました」

石原さんはおよそ300m離れた避難場所を目指しました。300mの短い道のりの中でも、街路樹や電柱、歩道沿いにある看板など、危ないと思うものが何か所もありました。晴基くんはお母さんと手をつなぎながら歩き、「倒れてきたら危ない」などと看板を指さしていました。

目的地のビルに到着しても、避難場所があるのは津波が来ないと考えられる5階。1歳の娘をだっこして、長男の手を引きながら階段を上ります。避難場所に到着したときには息が上がっていました。

石原紀世さん
「災害について子どもと話したことがなかったので、とてもいい機会になりました。今回、避難所まで歩くのは短い距離だったけど、歩いてみたことで危ないところも結構あるなと思いました。家に帰ったら、自宅から一番近い避難所まで子どもと一緒に歩いてみて、危ない場所や道路が本当に通れるかなど、確認しながら過ごしたいと思いました」

いつもの風景が変わる、防災まち歩きのススメ

このあと参加した親子3組は歩いてみてわかった危険な場所を発表し合いました。

▼大きな看板が倒れてくる。
▼ビルの窓ガラスが割れて落ちてくる。
▼電柱や街灯が折れて道をふさぐ。
▼道路のマンホールが外れていれば落ちてしまう。

ふだん見ていた風景が地震が起きたときには一変することを改めて学びました。

参加した小学2年生の女の子
「いろんなところに注意しながら避難しなくちゃいけない。いざとなった時に避難する時にはどうしたらいいのかよくわかった」
北海道教育大学釧路校 酒井多加志教授
「ふだん歩いていると気がつかないような危険なものに気づくことができる。実際、現場に行かないとわからないことはたくさんあるので、多くの人にまち歩きをやっていただきたい。そして親子で歩くことで大人の視点と子どもの視点ではそれぞれ見えるものが違うので、それぞれがどういう発見したかを親子で話し合うことでより防災の意識は深まる」
「危険な場所は外だけじゃなく家の中にもいっぱいあります。寝ているときに枕元にタンスやテレビなど倒れて危ないものがないか、そういうことをチェックすることも必要です」

ちょっと視点を変えて歩いてみよう

私(記者)も通勤路を防災を意識しながら歩いてみました。
「あれ、意外と電柱が多いな」「この石垣、崩れてこないかな」
ちょっと意識を変えるだけで見えてくるものが違ってきます。防災は想像から始まります。皆さんも「防災まち歩き」やってみませんか?

(2022年11月29日)

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