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ほっとニュース北海道

2020年11月18日(水)午前11時08分 更新

新型コロナウイルスの影響で大きな影響を受けている旅行業界。その中にあって、密を回避できるとしていまキャンプやキャンピングカーが注目を集めています。しかし、これらには「大変」「好きな人の遊び」「ちょっと面倒」などというイメージを持つ人もいます。それらを新たなキャンピングカーの開発と環境の整備でひっくり返し、ホテルや旅館と並ぶ第3の選択肢として当たり前にキャンピングカーが入る時代をつくりたいと考えている人が北海道にいます。イメージを変えた先に見ていたのは、価値観やライフスタイルの変化でした。

事業を手掛ける「Moving inn」のプロデューサー・吉岡太郎さん(29)です。
去年から「移動するホテル」をコンセプトに、キャンピングカーのレンタル事業を行っています。

キャンピングカーのメイン車種は「ハイエース」。
室内環境を充実させることで快適、手軽に過ごせるよう演出しています。

今回は、十勝・大樹町の旭浜でお話を伺いました。

やってきたのはアースカラーの車です。

このタイプの車は、ワゴンの上にハンモックが設置できます。

2メートルほどの高さからの眺めは、利用者だけが味わえる至極の時間です。

そして、なんといっても最大の特徴はホテルライクな室内。
木目調の落ち着いた空間に横になると、あまりの寝心地のよさから車であることを忘れてしまいます。

さらにリアゲートを開けると周囲の景色とベッドとつながります。
私も体感させてもらいましたが、想像以上に空間は広く、居心地のいい贅沢なつくりになっていました。しかも、自分が見たい景色を、車の停めかた次第で自由につくりだすことができるのはまさに「移動するホテル」そのものだと感じました。

自然の雄大さだけであれば、既にキャンプとかだけでも体験できるんですが、どうしてもある程度アウトドアの経験がないとどうしても過酷だったり、苦手な方からすると苦手だったりするものじゃないですか。それに対して、キャンピングカーの中がホテルライクになっていると、アウトドアのハードさがなくなって、キャンプをやらない方でも快適にこの空間を楽しめる。そんな仕組みになっています。

課題解決で第3の選択肢へ

高まるキャンピングカー人気。
道内でもレンタル事業を始める事業者が増えています。
一方で、車を停めるRVパークやオートキャンプ場は過密状態になるところも。その結果、周囲の人との距離感が近すぎ、キャンピングカー本来のポテンシャルを生かしきれません。

そこで、吉岡さんは自然の中に自分たちの車だけが停車し、他のグループの存在を感じないプライベート空間を担保した、キャンピングカー用の独自のキャンプ場を新たにつくる計画です。

絶景の中に滞在するという価値を細かく紐解いていくと、景色がいいことは間違いないのですが、自分たち以外に誰もいないということが魅力的だと捉えると思うんです。それを国内で初めて実現する、プライベート空間と大自然を堪能できる環境をつくりたいと考えているんです。そうすれば、穏やかな時間が流れる空間が生まれると考えています。現在検討している土地については、今後、実際にお話が進んだ場合、整地などの作業が始まったとしても、あまり環境を変えすぎないようにしたいと考えています。その場所が持つ自然の姿を大切に、そこにキャンピングカーを停車させる空間=サイトを、複数つくって、それぞれがプライベート空間を保てるようにする計画です。こうした土地活用は、これまでは「何もない」とされてきた土地の価値を上げることにもなりますし、遊休地の活用方法としても可能性があると思っています。

文化、ライフスタイルへの挑戦

まず吉岡さんが目指すのは、キャンピングカーの旅を文化にすること。
その為に、快適さと手軽さを追求した新たなキャンピングカーを政策。さらに、そのポテンシャルを最大限に活用できる環境の整備を進めています。こうしたものが充実すれば体験する人も増え、いつかそれが当たり前になればと考えています。ひいてはそれがキャンピングカーでの旅が文化になるということでもあると言います。こうしたプロセスを経て、ホテルや旅館と キャンピングカーが当たり前に並ぶような時代をつくりたいと考えています。
その根底にあるのは、本来、旅行の価値は、行く土地ごとの食や風土、文化だと考えていることと、それを堪能するのであればキャンピングカーがベストだと信じているという思いです。

さらにその先、究極的な到達点は「旅をしながら暮らす」というライフスタイルの実現だと話します。

キャンプで得られる自然の中で過ごす豊かな時間を多くの人に快適に、手軽に味わってほしい。そんな思いで「旅」という切り口からスタートしているのですが、新型コロナウイルスで、目指すものと時流とぶつかったという印象があります。いま皆さんが働き方、暮らし方、生き方を見直している最中です。例えば、会社に出勤しなくても仕事ができるスタイルに変わってきていますし、必ずしも都会にいなければならないというわけでもなくなってきています。時代の変化も意識しながら、私としてはみなさんの思いを後押しできるサービスや、車の開発などをしてければと考えています。いずれ自動運転の時代も来るでしょうし、そうなると移動がコストではなくなります。そんな未来も見据えて、自由でもっと素晴らしい体験ができる世の中にしていきたいですね。


【取材を終えて】
吉岡さんの事業は、緊急事態宣言下でこそ売り上げの減少はありましたが、4月・5月をのぞくと前年比90%ほどの売り上げを記録するなど、密を避け、快適に過ごす選択肢として人気を集めています。本人が言うように「時流が味方した」こともあるでしょうが、北海道が誇る景観に泊まるというコンセプト、特別感があってこその結果だと感じました。そして何よりも、キャンプ好きな吉岡さんが「従来のキャンプは一部の好きな人の楽しみだった」と分析し、自然に抱かれるという喜びだけを切り出し、残りの大変さ苦労を、いずれも快適に楽しめるように仕立て直したアイデアにあったと思います。現在、さらなる車両の改良や環境の整備を進める29歳の若きプロデューサーが、30代の10年間を使ってどれだけ世の中にインパクトを与えられるのか。新時代を切り開く覚悟は見えたので、今度はその手腕に注目したいと思います。

(札幌局 アナウンサー 瀬田宙大)

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