NHK札幌放送局

『北限のブナ林』に異変 気候変動の影響!?

道南web

2022年6月3日(金)午後1時17分 更新

長万部町から黒松内町などにかけて広がる「北限のブナ林」。このブナ林にある異変が起きていると聞いて丸山気象予報士が現地を訪ねました。道南の気候変動を気象予報士の視点で読み解きます。 

「北限のブナ林」で起きている変化

長万部町から黒松内町、寿都町などにかけて広がる「北限のブナ林」と呼ばれる森林地帯。
中でも、黒松内町の「歌才(うたさい)ブナ林」と呼ばれる場所は国の天然記念物に指定されています。

「黒松内町ブナセンター」で学芸員を務める齋藤均さんによると、大正時代、札幌農学校(現在の北海道大学)の教授がこの林を訪れた際、明治時代にほとんど開墾された道南の地において「かくのごとき原始林を残留せるは奇跡というべし」として、歌才ブナ林の保護に向けて国に報告書を提出したということです。そして、1928(昭和3)年に国の天然記念物に指定されました。齋藤さんは「奇跡的に残った森」と話しています。

黒松内町ブナセンター学芸員 齋藤均さん

豊かなブナ林を20年にわたって見続けてきた齋藤さんは、繁殖に大きくかかわる実や種のでき方に変化が起きていると言います。
ブナには雄花と雌花があり、雄花が花粉を飛ばして受粉した雌花が膨らみ、実ができます。その実が熟すと種ができ、仲間を増やしていきます。しかし、20年ほど前から実が減少しているというのです。

齋藤さん
「2000年初めごろまではブナの種の豊作年が5年から7年くらいに1回ありました。それが2002年以降、豊作年がなくなってきて、花は咲くけど実がちゃんとできないという年が20年くらい続いています」

ブナは300年に及ぶ樹齢の個体も数多くあるため、20年程度の変化では今後の影響を予測するのは難しいということです。一方、今後も同様の状況が続いた場合にはさまざまな懸念があるようです。

ブナは北へ進もうとしている

ブナは地球が温暖期を迎えた1万年ほど前から徐々に植生帯を北へ広げ、およそ6000年前に渡島半島に上陸、1000年ほど前に「北限のブナ林」が広がる地域に到達したと考えられています。そして、ブナは現在も北進を続けようとしていますが、種の減少などにより困難になっている可能性があるというのです。

齋藤さん
「ブナの植生帯は北へ北へ、標高の高いところへ移動したがっている時代です。しかし、種の量が少なくなると、ブナが北に向かって進んでいくスピードが抑えられるという影響はあるのではないかと考えられます」

種ができなくなった原因 気候変動との関連は?

齋藤さんはブナの種が減っている理由について「原因は今のところわからない。今後モニタリングを続ける必要がある」としています。

ただ、種が減少し始めた2000年代初頭は地球温暖化の急速な進展などが指摘され始めた時期と重なります。そこで、長万部町と黒松内町の平均気温の変化を調べてみると、地球全体の平均気温の上昇を上回る急速な温暖化の進展がみられました。

1980年代から2010年代の10年ごとの平均気温は、両町ともに0点9度上昇していました。地球全体の平均気温は20世紀の100年間でおよそ0点6度の上昇ですから、それを圧倒的に上回る早さで温暖化が進展しているのです。
気温の上昇そのものは北へ進もうとするブナの植生帯拡大に追い風になりますが、あまりにも急速な気候の変動はブナの生態に負の変化をもたらしている可能性があります。

ブナ林周辺にみられる気象状況の変化も

また、齋藤さんはブナ林周辺の気象状況についても気になっていることがあるといいます。
一つは雪の量です。齋藤さんは「ここ数年は雪の量が多い年と少ない年の降り幅が大きくなっている気がする」と話します。
たしかに、黒松内町の最大積雪深は、2018年に観測史上4番目に多い201センチだった一方、2年後の2020年には観測史上3番目に少ない68センチでした。
さらに、黒松内町をはじめとする噴火湾周辺の夏に特徴的な気象現象である霧についても変化を感じると言います。この地域では夏に発生する海霧を「じり」と呼んでいますが、この「じり」が減っているというのです。

長万部町の『じり』

齋藤さん
「霧が出ると、地元の人と『じりが出たね』とか『今日は“黒松内天気”だね』なんて話すのですが、最近は『きょうは珍しく黒松内天気だね』『最近はずっと良い天気になっちゃってるね』という話すことが多くなっています」

黒松内町と同じ噴火湾(内浦湾)沿いの町で、夏の時期には霧の日が多くなる室蘭市のデータを調べたところ、霧日数の減少傾向が見られました。
2000年代の10年間の平均日数が約37日だったのに対し、2010年代の10年間は約35日でした。さらに、2020年は29日で、2021年は31日でした。
これらがブナ林に影響を与える可能性については今のところ分かっていませんが、水の供給や土地のうるおいにかかわってくる可能性はあります。


取材:丸山 将(まるやま しょう)気象予報士
神奈川県横浜市出身。大学卒業後は俳優や司会業、全国紙記者などを経て2021年、気象予報士の資格取得。2022年4月からNHK函館放送局で気象キャスターを務める。

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