NHK札幌放送局

2000人の町に移住相談100件超! その秘密は?

ローカルフレンズ制作班

2021年5月20日(木)午後5時25分 更新

札幌から車で1時間30分ほど。北海道の喜茂別町という人口2000ほどの町で、年間100件もの移住相談を受けている人がいます。カフェのオーナーでデザイナーの加藤朝彦さん(35)です。新時代の移住相談術を取材しました。

大隅: ずいぶんたくさん相談を受けてますね。
加藤さん: 最初は趣味のようなものだったんですよね。
大隅: 趣味?
加藤: 私自身が移住者で、相談できる人がいるといいなと思いまして。勝手にはじめた感じです。
大隅: でも、年間100件も受けてるなんて、趣味の域を超えてますよね。
加藤: いまは違いますよ! 役場や町内の事業者といっしょに喜茂別の暮らしを発信して、移住相談を受けています。

ディレクターの私は「ローカルフレンズ滞在記」というテレビ番組の制作のため、加藤朝彦さんのもとに1か月も滞在させてもらっています。地域にディープな人脈を持つ人をローカルフレンズと呼んで、いっしょにローカルに眠る宝を探す企画です。

その加藤さんの日常を観察していると、毎日毎日、オンラインで誰かと話をしていることに気づきました。

ディレクター: 今は誰とですか?
加藤さん: 飲食店に関心がある方ですね。まもなく喜茂別に移住してくれるんじゃないかと思います。

加藤さんが受けている「移住相談100件」は、オンラインで舞い込んだものなのです。

加藤朝彦さんプロフィール
1985年生まれ、札幌出身。東京でデザイナーをしていたが地域おこし協力隊として後志地方の喜茂別町に移住。インターネットサービスを活用し、年間100件以上の移住相談を受けている。


600自治体と2万人をつなぐウェブサイト

加藤さんが活用する移住支援サービスは「移住スカウトサービス SMOUT」というものです。

ホームページを見てみると「長野県信濃町で森林ビジネス」、「高知でデジタル農業」、「宮城県南三陸町でモノづくり」など、魅力的な提案が並んでいます。

なんと600以上の自治体で暮らす人たちがこのサイトに登録して、地域の魅力を移住者に伝えています。

そして、特徴的なのはユーザー(移住に関心がある人)が気軽にオンラインで地域の人とコミュニケーションがとれるようになっていること。

簡単にメッセージを送ることができ、そこから「今から話しますか?」とオンライン会議サービスを使った移住相談に発展することもよくあるそうです。

新型コロナウイルスの影響で「移住フェア」などが開催されない中でニーズが高まり、いまや2万人以上のユーザーが登録するプラットフォームになっています。


40代~50代からの地域入門

加藤さんが作成した、喜茂別町のページを見せてもらいました。そこには、2つの要素が書いてあります。

ひとつは清流や雄大な山に囲まれた、「美しい田舎暮らし」。もうひとつは、地域を支える「福祉の仕事へのチャレンジ」。

加藤さん:いわゆる求人サイトと違うのは、「仕事」から入るのではなく、「暮らし」から入ることです。こういう仕事がしたい、という選び方ではなく、こういう暮らしがしたい。そのために、こんな仕事がありますよ、という順番です。

「福祉」は、多くの地域同様、喜茂別でも担い手不足に悩んでいる業種です。 でも、暮らしとセットにして提案したところ、数十ものリアクションが寄せられたといいます。

加藤さん: 意外だったのは40代~50代の相談者が多かったことです。もともとは子育て世代をターゲットに考えていたんですが、セミリタイア層などに田舎暮らしが響いたようです。実際、このウェブサービスを経由して、2名の方が町の福祉施設に就職しました。

移住者のひとりは、元サラリーマンの50代。自分で果物や野菜などを育てる「田舎暮らし」をしたいと思っていたところに、このウェブサービスで「仕事もある」と知って、移住を決めました。

いまは介護施設で働きながら、仕事終わりに畑で野菜を摘んで、天ぷらにするのが最高に贅沢な時間だそう。


目の当たりにした相談のスピード感

実は、この取材を通じて、加藤さんや喜茂別の方々のスピード感に心底驚きました。

私が「オンラインの移住相談」をテーマに取材したいと思ったのは5月14日(金)の午後5時ごろのことでした。前日に新型コロナウイルスの感染が急拡大したことで、それまで考えていた取材テーマから変更しようと考えたのです。

午後5時46分、そのことを加藤さんにチャットで伝えたところ、午後6時18分に電話がありました。

加藤さん: 役場の担当課が今から会ってくれるそうです。

さっそく行くと行政の担当者がお二人も待っていてくださって、丁寧に移住についての情報を教えてくれました。

その後すぐに役場の方が福祉施設に連絡してくれ、福祉施設から最近働きはじめた移住者に取材の打診が伝わりました(ちょうど遅番だったそうです)。

結果、「移住者さん取材OKです」という返事を頂いたのは午後7時51分。金曜日の夜に、たった2時間5分で取材許可をくれる町、喜茂別。心から感謝しました。


編集後記

もしかしたら、これがオンライン時代のスピード感なのかもしれません。 これまで思っていたよりも速く、簡単に、アクションを起こせるようになった今。「移住」という言葉がすこしずつ軽やかなものに変化しているのだと感じました。

NHK北海道ディレクター 大隅亮 (写真右)

2021年5月20日

これまでの喜茂別での「滞在記」はこちらからお読みいただけます。
<喜茂別編>

第1週 パン・ソーセージ・チーズ・ジャガイモ・ハーブ 同じ道に暮らしています
第2週 田舎道にメニューのない料理店


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