NHK札幌放送局

カーリング“進化”へ 研究最前線

オホーツクチャンネル

2020年12月11日(金)午後1時53分 更新

2018年のオリンピックで「そだねー」という言葉とともに、一躍有名になったカーリング。一見シンプルそうな競技も、その裏には選手が競技人生で培った感覚や経験に基づく動作が多く存在します。しかし、その感覚や経験が、最新の研究で「見える化」してきています。「カーリングのまち 北見」で進む研究をご紹介します。 

北見市に10月末にオープンしたカーリングホール。オープン日の式典には、オリンピックにも出場した本橋麻里さんも参加し、ホールでの第1投を飾ったほか、ホールへの期待を話しました。

本橋麻里さん
「北見市内だけでなく市外の人もカーリングをやってみようと思えるスポットとしてまた一つ北見の名地になればいいなと思います」

○最新技術とともに目指す「カーリングの見える化」

この新しいカーリングホールには、選手やストーンの動きを研究するため、最新のシステムが導入されました。研究の中心を担うのは、北見工業大学の桝井文人教授。北見を拠点におよそ10年間、カーリングを科学的な視点から研究をしています。

北見工業大学 桝井文人教授
「新ホールを通してカーリングと科学的視点をうまく結びつけて、競技力向上の短縮化・効率化に貢献したい」

そのシステムは、現在データの蓄積に向けた研究段階。

画面中央上 青い箱に入っているのがストーントラッキングシステムのカメラ

この日研究したのは、「ストーントラッキングシステム」。
ストーンに設置した赤外線LEDライトを12台のカメラで撮影し、正確な動きを記録。ライトの跡のデータは、研究レーンの隣にある分析室のパソコンに送られ、1つの線として画面上のシートに表示されます。
これによって選手は自分のショットを客観的に見られるので、ストーンの曲がり方の癖や、正確にショットを投げられたか、「感覚」ではなくデータに基づいて調整や練習ができるようになります。
桝井教授と共同で研究をしている、オリンピックにも出場した北見市在住の平田洸介選手もシステムへの期待を話してくれました。

平田洸介選手
「今までは経験則とか感覚値でストーンの曲がる、曲がらないを大会期間中とかに見てたのですが、それがデータを通じて客観的に見られるようになればいいと思います」

しかし、トップアスリートが全力で投げたストーンで撮影してみると・・・。カメラがストーンを追い切れず、パソコンの画面から消えてしまいます。桝井教授は、設置するLEDライトの数を2個に増やすなど改良を重ねて、来年には、赤外線LEDライトを埋め込んだストーンを開発したいとしています。

これは、桝井教授が6年前に開発し、改良を重ねてきた「デジタルスコアブックシステムiCE」。
現在国内の20チームが導入しているシステムで、ストーンの配置や、次に投げるストーンの回転のかけ方などを入力すると自動でデータベース化してくれるので、試合の戦略を効率的に立てることや、試合後に1投ずつ振り返ることが可能になります。
いまは、人が感覚や経験で手入力しているスコアブックの情報も、研究レーンのシステムから得たデータを自動で記録し、試合中さらに効率的に戦略を立てることを目指します。
桝井教授は選手の感覚だけでなく、客観的で詳細なデータ分析を通して「カーリングの見える化」を目指しています。

北見工業大学 桝井文人教授
「勝負のあやを見える化するっていうのを目指したい。現場の選手やコーチにも認めてもらって、これがあったら役に立つといってもらいたい。自分の得意な分野でカーリングをサポートしたいのが純粋な気持ちです」

桝井教授は見える化によって、選手の育成が短縮化・効率化できるとしていて、選手を多く輩出する地域として、地域の活性化にもつなげようとしています。


○ストーンはなぜ曲がる?素朴な疑問も研究

続いては、「なぜストーンが氷の上で曲がるのか」という素朴な疑問に答える研究についてお伝えします。
カーリング研究の中では長年の疑問で、これまで「氷の表面の状態が原因」などとする論文が20以上出ていますが、定説はありませんでした。
そんな中、北見工業大学の亀田貴雄教授ら5人の研究チームは、ストーンが氷の上で曲がるのに、もっとも影響を与えているのは、氷の表面の状態ではなく、「ランニングバンド」と呼ばれる氷と接触している部分の表面の粗さと面積だとする研究結果を発表しました。

北見工業大学 亀田貴雄教授
「氷の部分と接触しているのは、ストーンの下側で円になっているランニングバンドという幅が8ミリぐらいのところです。この表面を布やすりで削って粗くして、カーリング場で投げてどんな風に動くのかを調べました」

実験は去年、北見市常呂町にあるカーリングホールで、北見工業大学のカーリング部の生徒と共同で行われました。実験をしてみるとやすりで傷をつけてランニングバンドが粗くなっている方がより曲がったということです。

北見市常呂町での実験の様子(撮影・提供:北見工業大学 亀田教授)

ストーンに着目した研究成果を発表した亀田教授。今回の研究を進めたのは、ストーンを研究のために購入したのがきっかけだと言います。
そのとき届いたストーンは、中古でランニングバンドに粗さがあるストーンと、「レプリカ」と呼ばれるランニングバンドに粗さがないストーンの2種類。
実際に投げたとき、「レプリカ」のストーンはまっすぐに行かず、変な動きをしたのを見たことで、ランニングバンドに着目した研究を進めようと思ったということです。
今回の研究成果を通じて亀田教授は、カーリング場によってストーンの曲がり方が違うことが解消されるので競技の普及が進むと期待していて、そのためにはストーンの管理が重要だとしています。

北見工業大学 亀田貴雄教授
「ストーンが曲がらないカーリング場は劣っているから練習に使わないというような問題が、今回のようにストーンの粗さを調整することで解消される。しかし、ストーンはカーリング場が管理をしているので、管理をする人が粗さをきっちりと管理してほしい」

亀田先生は、今回のはあくまで研究結果を出した段階だとして、今後は具体的なストーンが曲がるメカニズムを分析したり、ストーンの粗さを簡単にはかれるようなものを開発したいとしています。


カーリングの取材を進めていくと、新ホールのオープンも相まって、研究が加速していきそうだと感じました。今回紹介したどちらの研究も、カーリングを一般の人にも、もっと知ってもらいたい、裾野を広げたいと話していて、その一助として私も取材を続けたいと思います。
北見に来て半年の私も最近カーリングを始め、筋肉痛と闘っています。新しいホールでは、必要な物は一式借りられるので手軽に楽しむことも出来ますし、競技中は寒さを感じません。皆さんもカーリングを体験してはいかがでしょうか。
                     (北見放送局 記者 新島俊輝)

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https://www.nhk.or.jp/kitami/

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