ナットク!とかちchは「新型コロナウイルス」をテーマに十勝の皆さんの疑問や困りごとにこたえるコンテンツを目指しています。以前、化学物質過敏症の症状により、アルコール消毒で体調を崩してしまうという女性の声をお伝えしました(9月18日に掲載)。十勝の飲食店の中には、こうした人も利用しやすいように店づくりを進めるところも出ています。
入り口横に洗面台が…
帯広市内で定食などを提供する人気の飲食店。その入り口を入ると目に飛び込むのは洗面台です。ことし9月に設置されたばかりで、取材した日も、訪れた人たちが次々と利用していました。

男性客
「汚れた手でごはんは食べられないので、入り口に洗面台があるのは助かります」
女性客
「アルコールだと手が荒れたりもするのでいいと思います」
“withコロナ”見据えた改装
収束が見えない新型コロナウイルス。店では“withコロナ”時代を見据えて、ことし8月下旬に店を6日間閉め大規模な改装工事を行いました。改装で新たに設置されたのが、入り口の洗面台です。洗面台の横にはアルコール消毒液も引き続き置いていて、利用客が手洗いか消毒かを選べるようになっています。

店によりますと洗面台を利用する人の数は予想以上だということで、全体の2割程度の人が洗面台で手を洗っているということです。当初は化学物質過敏症の人を意識して設置したわけではなかったということですが、結果的に過敏症の人にとっても優しい店舗になりました。
銀シャリ亭くまだ 関口智範部長
「化学物質過敏症の人が世の中にはたくさんいるのはいろいろと聞いていましたので、やっぱり設置してよかったなと思いますね」

徹底したコロナ対策
この店の対策は、洗面台だけではありません。まず席の数をこれまでより1割少ない54席に減らし、通路の幅も最低1メートルはとるように配置を変更しました。また、席と席の間にある仕切りをこれまでより40センチ高くしたことで、個室のように利用できます。

さらに1時間に店の空気を3回から4回入れ換えることができる、換気用の大型機械も設置したほか、店員と客の接触を減らすためにセルフレジを導入しました。店内の密を回避するため受付には発券機を導入し、客は車で待機できるようにしています。

こうした大規模な改装にかかった費用は800万円にも上ったということです。それでもさまざまな対策により、8月までかけていた入店者数の制限を改装後の9月からは解除することができました。客数は回復し、売り上げもコロナ前の水準まで戻っているということです。
銀シャリ亭くまだ 関口智範部長
「お客様や従業員の安全を考えると、ここまでやらないとダメだと思い、今回、大きな改装をしました。“安心して食べられるね”“これからも来やすいよ”というお声をいただいていますので、そう考えるとよかったなと思います」

取材した辻脇匡郎記者は
新型コロナウイルス対策について厚生労働省は、まずは手洗いが大切だとしています。手洗いができない状況ではアルコール消毒も有効だとしていますが、いま、お店などでまず求められるのはアルコール消毒。「アルコールは大丈夫ですか?」と尋ねられたことも一度だけありましたが、中には「手を出してください」と言われて、強制的にアルコール液を吹きつけられたこともあり、化学物質過敏症の人にとっては心穏やかな状況ではないと感じています。今回紹介した店舗は、コロナ対策としてはかなり複合的な対策をとっていて、客や従業員の安全・安心を意識していることが伝わってきました。一方、改装にはかなりの費用もかかっていますので、すべての飲食店で同じような対策がとれるわけではありません。それでもアルコール消毒に耐えられない人がいる、ということを理解することはできます。改装は難しいとしても、アルコールが苦手という申し出があった場合は手洗いができる場所に案内するなど、この記事がそうした人たちへの「理解」を深めていく一助になればと思います。
2020年10月27日放送
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